第525話【対決3】

<<ランス視点>>

指令室に緊急連絡が入った。


セカンズに海賊が現れたらしい。それも巨大船が10隻も。


いったいこれほどの艦隊をどうやって用意したのか。


まさか、ホンジュラ星の奴らか!


あの星ならやりかねんな。あいつ等なら恐らく俺達を警戒して最新鋭の武器を搭載しているに違いない。


迂闊に応援を出したら、下手をしたらこちらが壊滅させられる恐れがある。


準備をしていたら間に合わないかも。


僕が行く?


それも有りだな。だが協定上、僕が動くのは不味い。


それなりの理由が無いと国際連合の交渉介入になってしまう。


どうすればいいんだ!





<<オマル視点>>

約束の刻限の前日、俺は王都に戻ってきた。


やれることは全てやったと思う。後は来るべき事態に備えて実践あるのみ。


久しぶりの王都はパニックになっていた。


逃げ惑う人、道に跪き、ひたすら神に祈る信者達。


交易ギルドへの道は怒号の中に封鎖されており、近寄よることも出来ないため、俺は異世界防衛連合軍の駐屯地へと向かった。


「ヤタム!これは、王都はどうなっているんだ!」


「オマル殿!どこにいらしたのですか!


先日の海賊が巨大船10数隻で現れ、王都を燃やされたくなければ、金貨100億枚だせと脅してきたんです。」


「そいつらは今どこに?」


「恐らく空高くにいるんだと思います。


あの山を見て下さい!

武器の1撃、一筋の光の線で、あんなに!あんなになってしまったんですよ!」


「そうか、一撃でか....」


「オマル殿、どうしてそんなに落ち着いているんですか!まさか襲撃を知っていたようですね!」


「ああ、知っていた。神のお告げがあってな。

それで修行をしに行ってたんだ。今から撃退に行ってくるよ。」


「今からって、あんなに見えないくらい高いところにいるのに...」


「じゃあ行ってくる。」


俺はヤタムの指さす方向に向かってジャンプし、そのまま風に巻かれて上空へと向かった。




どの位上ったのだろう。眼下には雲しか見えず、それも遠く下に流れていく。


やがて、日の光に反射する金属製の巨大船団を発見した。


「まずいな。1隻づつ狙うことは簡単だが、その間に地上を攻撃されたら目も当てられねえ。


まずは障壁を張るか。」


風と水、そして雷をイメージする。ヤタムの奴、光線だって言ってたな。まずは風と水、雷を層にして、船団の下に敷く。


「水と雷は光線を跳ね返すイメージだな。

水が光を抑えて、雷がそれを弾き飛ばす。

 これを何層にも重ねてっと。


次に上にも雷の層を幾重にも作り、風を纏わせて雷の乱気流を作り出そう。」


船団の上下に水、雷、風を集めた厚い層を作り船団を挟み込む。


そして先制攻撃だ。


魔力を練る、ひたすら練る。風と水を集めてきて巨大な水球を作っていく。


多少時間は掛かるが構いやしない。あいつらは俺の戦力を知らないから油断しているだろう。


一気にかたずけてやろう。


奴らから見えない位置で練り上げた巨大な水球。


周りにはオリハルコンをイメージする。この世界には無い、宇宙で一番固いと言われている金属だ。


オリハルコンで覆われた巨大な質量を持つ水球は、どんどん大きくなっていく。


やがてその個体が奴らに見えるほどになった時、俺は船団の先頭に向かってそれを思いっきり投げつけた。






<<ホンジュラ星海賊団デビー艦長視点>>

俺達は海賊だ。だが、今回この星に来たのは、国から依頼を受けたからだ。


我が星は軍需産業によってなりたっている。


軍需産業と言えば戦争。


戦争が起きている僅かな間が、最大の儲け時だ。


当然、両陣営に売り込む。


2重スパイさながら、相手の戦力を過剰に教えて、高価な武器を法外な値で売り付けるわけだな。


もちろん、それは、両陣営に対して行うのだが、勝敗を見極めたら、勝つ方に武器を安く売り渡し、それで相手の息の根を止めさせるのだ。


そうすることで、お得意様を増やして行くのが、武器商人のやり方なのさ。


武器商人は決して舐められちゃならねぇ。


これ程の武器が国にはゴマンとあるんだよって、脅かすぐらいでなきゃ、平和時に武器なんてものは売れねえんだ。


それなのに、この星は俺達の戦艦を完膚なきまでに叩きやがった。


仕返しするだけじゃ足りねえよな。


骨の髄まで搾り取ってやる。


「ボス!前方に巨大な球体が出現しました。


どうしやしょ?」


「球体だと?なんだそれは!」


「うわあー!こっちへ猛スピードで近付いてきやす!」


「避けるんだ!」


「無理で…わ~~~」


ブツッ……………


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