第515話【横流しを阻止せよ4】
<<王都冒険者ギルド職員 アリス視点>>
カヤクラムのギルマスであるアトムさんから、密売の話しを聞いたわたしは、すぐに子飼いの情報屋に、怪しい商人の情報を集めるように指示を出しました。
この王都には異世界からの商人が大勢来ています。
この星では豊富に取れる食材でも異世界では貴重なものであることが多く、非常に高値で取引されるらしいのです。
特にこの国のダンジョン産物は非常に良質らしく、かなりの高値が付くものもあると聞きました。
そのため、安易にダンジョン産物が異世界に流れないように、輸出時には高い関税をかけると共に、異世界の者が王都以外に行くことを禁じているのが現状なのです。
そして昨日、情報屋から新しい情報を得ることが出来ました。
ラスゴスという異世界の商人に、カヤクラムの冒険者が接触したというのです。
それとその冒険者の後をつけている冒険者が4人ほどいたといいます。
アトムさんの依頼した『紅い薔薇』だと思ったわたしは、『紅い薔薇』が王都で定宿にしている宿屋を訪ねることにしました。
元々2年前までカヤクラムにいたわたしは『紅い薔薇』と懇意にしていたため、会うのに時間は必要ありませんでした。
「皆んな、元気だったあー」
「アリスさんも元気そうで何よりです。王都で出世されているそうじゃないですか」
「やだーー、出世なんてしてないわよーー、カヤクラムの頃と同じ感じかなあ」
「じゃあ、ギルド本部の実質ナンバーツーじゃないですか!」
「うーーーん、まあそんなことはどうでもいいのよ。あなた達、ギルマスの依頼でここまで密売者を追いかけてきたんでしょ。」
「...えー、何でそんなことまで知ってるんですか!着いたの昨日ですよ。」
「壁に耳ありってやつね。それでね、あなた達が追いかけていた冒険者、昨日誰かと接触しているわね。」
「ええ、誰かはわからないんですけど、路地裏の1部屋に入って何やら話しをしていました。」
「その場所覚えてる?」
「覚えていますけど...」
「じゃあ今からそこへ突入するわよ。」
「「「ええええーーー」」」
情報屋から聞いていた情報と合致します。
これから案内される場所はラスゴスから来た商人で間違い無さそうです。
生きのいい冒険者をたくさん連れて行っても良かったんですが、相手は異世界の人間、どんな武器や魔導具を持っているか測りしれません。
やはりここは経験充分な『紅い薔薇』を頼ることにしましょう。
「アリスさん、ここです。
本当に突入するんですか?」
「当然じゃない。ひとりは正面に回って。
昼間だからあちらも無理をしないと思うわ。
でも、こちらの状況によっては、噛み付いてくることも充分考えられるわね。
気を抜かないでね」
タンク職の大柄な男の子、えーとミルスとかって言ったわね。
ミルス君に正面玄関を頼んで、逃げられないように抑えておきます。
「さぁ、行くわよ。」
「あー、本当に入るんですね。
しゃあねーな、よし行くぜ。
ミルスがいないから、俺が先頭だ。
アリスさんは一番後で入って下さいね。
怪我をさせちゃギルマスにどんな目にあわされるか」
「じゃあ、気合い入れてね。せ~の!ゴー!」
細い路地に面した木製扉をリーダーのフレア君が勢い良く押し開けて、素早く中に潜り込みました。
最後尾から中の様子を覗き込んだわたしは、その光景に啞然とするしかありませんでした。
<<ランス視点>>
「お父様、これはちょっとヤバくないですか。」
「そうだな…って、お前そんな言葉何処で覚えたんだ?」
「そりゃ、これだけいろんな異世界と交流してれば、アースの若者言葉を使う人にも会いますよね。」
「若者言葉ってことはないけどな。」
「えーー、そうなんですか。ちょっとショックだな。ってそんなことはどうでもいいです。
あれは助けに行った方が良いですよね。」
「あぁ、そうだな。あの武器はセカンズには早すぎるしな。」
「じゃあ、ちょっと行ってきます。」
「…ただいま、戻って来ました。」
「お帰り。おっ、今突入したな。
やっぱり驚いてるよな。
気合い入れて飛び込んだら、敵は縄に縛られてるんだから。」
「ええ、武器を取り上げるだけにしようかと思ったんですけど、あの護衛が強そうだったんで、安牌踏んじゃいました。
どうですか、これは?」
「安牌を踏むか…
まあ、若者言葉って訳でも無いな。」
「う~~ん、アースの言葉は、難しい!」
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