第514話【横流しを阻止せよ3】

<<紅い薔薇リーダー フレア視点>>

ギルマスの密命を受けた俺達『紅い薔薇』は横流しの犯人を探るべく、今日もダンジョンの中、入口近くで活動していた。


表向きの理由は若手冒険者の監視と教育であるが、実際にはここを出入りする冒険者のチェックだ。


横流し方法として俺がまず目を付けたのは、ダンジョンから出てきた冒険者から、直接買い付けようとする密買者がいないかどうかを見つけることだった。


ダンジョンの外で3週間目を皿にして探したが、残念ながら見つけることは出来なかった。


次に考えたのが、収穫物を持った冒険者がギルドへと向かわず、直接密買者に売りに行くことだ。


これもメンバー3人に冒険者を尾行させたが、結局空振りに終わった。


ダンジョンから冒険者ギルドは目の先で、3人の目を潜ることなど出来ようも無かったのだ。


手詰まりかと思ったところへ、ギルマスから連絡が入った。


『マジックバッグ』の魔道具を持っている奴がいるかもしれないと。


確かにそんな便利なもんがあれば、俺達の監視を潜り抜けて密売できるはずだ。

しかし、本当にそんなものがあるのか?



そんな感じで、今ダンジョンの中、入口近くにいるわけだ。


狩りが終わる夕刻、収穫物を持った冒険者達が続々と目の前を過ぎていく。


「フレア、冒険者達の技術もだいぶ上がってきたわね。皆結構な収穫量よ」


「そうだな、あのくらいの収穫があれば、2、3日休んだところで食い繋ぐことくらいは出来るだろう。

コンスタントにあれだけ狩れていれば安定した生活も出来ているはずだな」


狩りの技術も年々向上しており、ギルドでの教育水準も高くなってきた。


ダンジョンギルドが出来て、魔物の間引きをしたり、日々危険な地域の掲示を更新してくれるなど、冒険者が上達するための環境も揃ってきているのだ。


「フレア、ちょっと奴らを見てよ。今日も手ぶらだわ。3日ほど見ているけどほとんど収穫物を持っているのを見たことないわ」


「ああ、あんな奴らもいるよな。あいつ等1年ほど前に流れてきた冒険者じゃ無いか。

ギルドの研修にも参加していないようだし、獲れなくても仕方ないかもな」


「それにしては顔に悲壮感が無いわね。装備もそこそこいいものを着けているわ。

ねえ、なんだかおかしくない?」


「それってあいつらが例の密売人ってことか?」


「わからないけど、ちょっと怪しいかなって」


「追いかけてみるか」


そんな感じで怪しい冒険者を追いかけることになったのだ。


そいつらはまっすぐ冒険者ギルドに向かい、酒場で酒を呑んで帰ったようだ。


翌日、彼らは早朝に冒険者ギルドに来ていた。


依頼書の掲示板をじっと見つめており、やがて1枚の依頼書を手にカウンターに向かう。


どうやら、護衛依頼のようだ。狩りでは上手くいかないから護衛を選んだのか。


俺達は受付に向かい、事情を知っているカウンター嬢にさっきの依頼内容を聞いた。


王都を越えた街までの依頼のようだ。


俺達も隠れて後をつけて、彼等の行動を確認することにした。


護衛自体は冒険者としての実力さえあれば極めて単調な仕事だ。


他の星では魔物がダンジョン以外にもいるらしいが、この星ではありえない。


そのため護衛するのは野盗や大型動物から依頼主を守るためである。


そこそこ実力があり名の知れた冒険者には野盗は近づかないし、高価な動物除けの魔道具を持っているものも少なくない。


奴らの実力の程は未知数だが、王都まではなんの問題も無く辿り着いたようだ。


依頼主の商人が王都で商談があるとかで、2日ほど王都に滞在するようだ。


そしてその間、護衛の冒険者は自由行動になることが多い。


奴らもそのようだ。


ついて早々、依頼主と別れた奴らはそのまま酒場へと入っていった。


俺達も後を追う。


小一時間ほど酒を楽しんだ後、彼らは店を後にして路地裏へと入っていった。


急いで追いかける。建物の外壁に挟まれた狭い路地をのぞき込むと、そこに奴らの姿は無かった。


未だ昼だというのに薄暗い路地は人がすれ違うには少し狭い広さでまっすぐ長く伸びている。


人影の無い路地を慎重に進んでいく。途中、裏口のような木の扉がいくつも並んでいるので、一つ一つ探るように耳を押し当てて、中の様子を窺っていると、3つ目の扉の中から声が聞こえた。


聞き覚えのある声、そう俺達が追いかけてきたあの冒険者の内のひとりの声だ。


何を話しているのかはわからないが、どうやら話しは終わったようで、扉に近付いてくる気配がした。


俺達は慌ててその場を退き、大通りへと出る。


やがて少し遅れてにやけた顔の冒険者達が出てきたので、俺達は引き続きつけることにしたのだった。



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