第496話【マサル異世界を創る10】

<<アルト視点>>

皆んなのおかげでスターツ星に改めて人類のカプセルを投入出来ました。


スイムやヤルタ、そして先輩達が支えになってくれなければ、立ち上がることすら出来なかったかもしれない。


「おかしいなぁ。そろそろ大気の酸素濃度が高くなって、氷河期が来てもいい頃なんだけどね。」


「どういうことですか?」


「そうねぇ、わたしもよく分からないんだけどね、食物連鎖が一段落して、今は肉食の巨大動物達が増えているわよね。


このままの数を維持してくれれば良いんだけど、増え過ぎるのよね。


そしたら彼らの食料である草食動物達が極端に減って絶滅の危機が訪れ、草食動物が食べるはずだった植物が大量に増えるわけ。


草食動物が減ったら、巨大肉食動物同士が共食いを始めるわ。


植物は光合成をして二酸化炭素を酸素に変えるのは知っているわね。


植物の増加でどんどん二酸化炭素は減って行くんだけど、その二酸化炭素を吐き出す動物も減って来るでしょ。


大気中から二酸化炭素濃度が極端に下がると、気温を下げちゃうのよね。


そして氷河期になるって聞いたわ。


まぁ本当かどうかは分からないんだけど、いつもはこの時期に大体氷河期が来るから、合ってるんじゃないかしらね。」


「「「へえーーー」」」


知らなかった。


そう言えば、氷河期が終わる頃には巨大動物達は絶滅していて、再び食物連鎖が始まるんだったっけ。


そしてその時期に人類を投入するのが良いって習った気がする。


あの時は焦りでそんなことすっかり忘れてしまっていたな。


「それでシール先輩、どうして氷河期にならないのでしょうか?」


「そうねぇ、もしかしたら、巨大なのは肉食動物だけじゃ無くって、草食動物も巨大になってしまっているのが多いからかもしれないわね。


ほら、この星って気温が高くて巨大に成長した草木も多いじゃない。


だから、全てが巨大な状態なままで食物連鎖が成立している可能性があるわ。」


「え~~!そうなったら、いつ人類を投入すればいいのか分かりませんよーー」


「そうよねーー。マサルさんに相談しましょ。


うん、それがいいわ。」




「なるほどな、太陽から離れても地表温度を維持させるために、中心温度を上げたけど、こんな弊害が出るんだな。


やはり星創りは難しいもんだ。」


相変わらず爽やかに微笑みながら首を傾げる室長。


何でも完璧にこなしてしまう室長が困ってしまったり、シール先輩程の知識を持ってしても、こんなにも人類をリリースするのが難しいのに、今更ながら自分の浅はかさが情け無くなってしまいます。


「人間も大きくしちゃえば〜」


いつの間にかマリス先輩とポーラ先輩が来ていました。


「全部が大きさかったら人間も大きくしちゃえばいいじゃないの~」


「うーん、まぁそれもありなんだけどね。


でも、問題もあるよね。

たとえば人口を増やせないとか、他の星との交易とかに支障が出るんじゃないかな。」


「そうかもしれないけど……


そうだ!この星の人類のカプセルを回収して、別の星に持っていけば良いんじゃない?


今太陽を挟んで、右側に4つ、左側に5つの星があるじゃないの。


右側にもう1つ創ってね、そこの気温はラスク星とかと同じ位にするのよ。


そしてそこに人間を入れるの。もちろんバランスが良いくらいで動植物も必要よ。


人間って文明が進化すると人口が爆発的に増えるじゃない。


マサルさんってば、人類は元々2つの星にだけ入れて、後は移住先にしようとしてたんでしょ。


なら、人が居ない星は食料庫代わりにしちゃえばいいじゃないの~。


たとえばダンジョンみたいにね。」


「マリスさん、それだ!!

ナイスアイデアかも。」


室長が興奮気味にマリス先輩の話しに食い付いてきました。


「実は食料問題を考えてダンジョンの設置は考えて居たんだけど、1つの星の中に物理的に作ってしまうとスタンピードみたいに俺達が制御できない事態が発生するから、どうしようか悩んでいたんだ。


ダンジョンの入り口をこちらでしか制御出来ない転移魔方陣にして、巨大生物が住む他の星に繋げておけば、その星自体がダンジョンになるから、人間が住む星にスタンピードは起きなくなるよね。


将来的な食料不足もそれで補えるかもしれないし、安定して巨大動植物を獲れるなら、国際連合加盟後も有用な交易品となるかもね。」


「「それ、良いじゃない。」」


シール先輩とポーラ先輩が室長の話しに食い付きます。


「マサルさん、ナイスアイデアだわ。上手くいけば、異世界全体の食糧庫として貧困の解消にもなるかも。」


「????????」


「マリス、あなた頭が『?』になっているわよ。あなたが言い出しっぺじゃない。


ほら、これまでみたいにダンジョンの設置場所を考えたり、スタンピードの発生前にお告げを出したりって面倒な作業が大幅に減るわよ。


それに、狩りの対象数は今までのやり方の比じゃないから、他星の冒険者達や商人も呼び込めて、この星は凄く発展するかも。」


ポーラ先輩の興奮は、そのままジェイドさんへと伝わります。


ジェイドさんもこれまでの会話からようやく理解が追いついたようで、酷く興奮し出しました。


「マリスさん、マサルさん、あなた達は神かーーー」


「「異世界人から見たら神なんですけど...」」





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