第471話【和解2】

<<ヤンガ視点>>


イリヤ様から連絡を受けて今スピーダ星に来ております。


少し前までは、新しい星との行き来はランス様のお力をお借りしないといけなかったので恐縮していたのですが、今は女神マリス様が位置情報を教えて下さいますので、転移魔方陣を使えばあっという間に訪問出来るのです。


本当に便利になったものです。


国際連合への参加交渉もずいぶんと楽になりました。


これまでは駆け引きして来る星も多く、加盟が決まるまでに時間を要する場合も多かったのですが、今ではマサル神様が主導頂いて向こうの神とは交渉済なのでスムーズに加盟が決まることが多くなりました。


最近の傾向としてはこれまで神様が存在しなかった星が増えたことでしょうか。


どうやらマリス様がそれらの星に神として降臨されて、その星の民達を国際連合に導いて頂いているようなのです。


ですから、加盟手続きもそこそこに早急に様々な活動を希望されることも多くなりました。


そういうことで最近ではカトウ運輸の担当者の方に同行を願うケースがほとんどです。


マサル神様が礎を築かれたカトウ運輸は、今では一つの星を丸ごと文明改革させるほどの豊富な経験と実行力を持っています。


国際連合が目指す『最低限の福祉環境まで発展させる』だけであればカトウ運輸に任せるだけで成し遂げてくれるのです。


今もマサル神様が会頭をされていますし、事務総長のランス様が実際の運営を管理されていますから、その点でも安心できますね。


国際連合が目指す最低限の福祉環境まで発展させたその後は、カトウ商会が齎した様々な恩恵をその星がどう生かしていくかによりますね。


それ以上介入することは国際連盟としてはお断りしています。


やっぱり、自分達の努力で発展させないと長続きしませんものね。


ラスク星の星営商会であるカトウ運輸のみならず、新しい星に商機を見出して進出される個人商会の方々も増えてきました。


国際連合としてはこれらの商会を登録制にして、監督させて頂いています。


開発が始まったばかりの未熟な星を食い物にするような悪徳商会を入れさせるわけにはいきませんから、そこは慎重に吟味させて頂いていますよ。


どういった商会をどの程度参入させるか、関税や輸出入に関するセーフガードの設定なども国際連合の重要な交渉事項になります。


その他には、異世界防衛連合軍への参加や法整備に関する助言など、他の星との交易に必要な指導や提言も行います。


まああちらの事情もありますから、押し付けるようなことはしませんが、国際連合に加盟して他の加盟国と交易を始めるわけですから、最低限のルールとマナーは守って頂く必要がありますし、他の星から不平等な交易を仕掛けられないようにするだけの知恵も必要ですから、その辺りはきちんと教育させて頂いておりますよ。


最近は部下に任せることも多くなってきたのですが、このスピーダはかなり文明が遅れているということだったのでわたしが直接やってまいりました。


とは言え、そんなに難しいことはありません。


言葉は通じますし、顔形もわたし達と似通っています。


どうやらテンプレート?っていうらしいのですが、ラスク星に似通った星を創っているみたいで、その辺りは助かっています。


ランス様もあまり深くは教えて下さらないので、そういうモノだと理解することにしています。


神様の成されることですからね。意のままに。





この星で一番大きな役所にやって来ました。


このスピーダには国という形が無いようなのです。

少し近代化された小さな村が点在しているんですね。


役所でひとりの女性と面会することになりました。


その方の名前はミリーさん。この役所内で魔法を用いて病気や怪我の治療をしたり、子供達に勉強を教えたりされているそうです。


「お初にお目にかかります。国際連合から参りましたヤンガと申します。」


「こちらこそ、ミリーと申します。女神マリス様がお遣わしになられた方ですね。

遠いところからお越し頂き有り難うございます。」


「いえいえ、魔方陣を使えば一瞬ですから、その辺りはお気になさらず。」


「そうですか。魔方陣....ですか。我が星にもかつて存在したと聞いております。」


「そうなのですか。」


「ええ、わたしの曽祖父の残した文献にたしかそのような記述がありました。

わたしの曽祖父は、創造神様によってこの世界に召喚されたと聞いております。


残念ながら、曽祖父は早世してしまいましたが、その子孫のわたし達が曽祖父の残してくれた様々な情報を元に各地に散らばって活動しているのです。」


「そうだったのですね。ちなみにご先祖様の残された文献をお見せ頂くことは可能でしょうか?


もしかしたら私どもでお役に立てることがあるやもしれません。」


「ええ、写本があちらにございますので、ご案内いたします。」


ミリーさんに案内され付いていった先には、ラスク星でよくみられる形の家があったのです。


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