第463話【国際連合支援室3】
<<ヤルタ視点>>
今ラスク星にいます。配置転換されたばかりの国際連合支援室のマサル室長に連れられて、国際連合の視察です。
ここはラスク星は国際連合発祥の地であり、国際連合という組織を運営するための要である事務局が設置されています。
転移の魔道具も使わないで、いきなり転移した時は驚きましたが、昨日の呑み会でさんざんマリス先輩達から室長のお話しを聞かされていましたので、まあ...納得です。
転移した先は、質素な事務室でした。
ひとりの青年が少し大きめの机に向かって書類と格闘していました。
「お父様、お越しになられるなら事前に連絡を頂ければ助かるんですが!」
「ランス、すまんな。
上からこちらの様子を見てたら暇そうに見えたんだ。
忙しければすぐに帰るよ。」
お父様?この青年は室長に気安く声を掛けてお父様と呼んでいます。
このランスと言う青年はマサル室長のご子息だということです。
そして、まだ若く見えるのですが僕達が支援する国際連合の事務総長というではありませんか。
つまり国際連合のトップということですね。
しかも会話の内容を聞いているとマリス先輩達とも非常に懇意にされているようです。
なるほど、室長は元々国際連合の創設に尽力されたと聞いていましたから、ご子息が跡を継いでおられるのですね。
挨拶をさせて頂き、室長とランス様が会話を交わされた後、また転移です。
次に着いた場所は、異世界防衛連合軍の総司令部と言うところです。
そこには5名程の女性が丸テーブルを囲んでお茶を楽しんでおられました。
「まあ、お父様。お久しぶりですね。最近は屋敷にも帰って来られていなかったのでお母様が寂しそうでしたよ。」
「おお、お茶の時間だったか。申し訳ないな。
イリヤ、今日はお前達に紹介したい人達がいたんで連れてきたよ。」
「国際連合支援室の方達ですね。お兄様から念話で聞きました。
皆さま、初めまして。異世界防衛連合軍総司令部の代表をしていますイリヤです。
お父様がいつもお世話になっております。」
先程のランス様と同じくらいの若そうな年齢に見える淑女イリヤ様もまたマサル室長のご令嬢だということだった。
そして総司令部のトップということは、異世界防衛連合軍の中心人物ということになるのかな。
後で聞いた話だが、ランス様もイリヤ様もこちらの時間軸で既に300歳を超えておられるようで、国際連合に加盟している星々の異世界人からも神のような存在として崇められている存在らしい。
そして今イリヤ様と一緒にお茶を楽しんでおられた面々が異世界防衛連合軍の中枢であるとのことだ。
食堂のおばちゃんみたいな人や議員夫人のような優雅な人も混じっていて、中枢って言われてもそうは見えないんだけど、実際そうなんだって室長が話して下さった。
挨拶させて頂いて少し会話をした後、訓練施設を見学に行くことになった。
イリヤ様が案内して下さることになり、一緒に転移。もう慣れたもので驚かないぞ。
しかし、イリヤ様。楚々として麗しい。
お話しを聞いてみるとまだ未婚ということ。
その話しを聞いたアルトやスイムの顔つきが変わったように見えた。
この瞬間から僕達3人は同僚であり恋敵となったんだ。
<<スイム視点>>
麗しのイリヤ様に案内頂き、僕達は異世界防衛連合軍の訓練施設に来ています。
まずはマイク隊長率いる第1師団。この部隊は主に武器を使って戦う前衛部隊ですね。
最前線で戦う集団ということで、実戦形式の模擬戦闘を見学しました。
紅白の2チームに分かれての戦闘訓練は、武器の刃を落としてあるとはいえ、物凄い迫力です。
基本的に僕達の世界には戦争が無いというよりも戦争する相手がいないため、秩序を守る程度の軍隊はありますが、これほど激しい戦闘訓練は見たことがありません。
しばらくしてマイク隊長が先陣を切っていた白チームが勝利したようです。
次の相手は、ムラマサ隊長率いる第2師団。魔法による攻撃を得意とする後方部隊だそうです。
魔法っていうのは、魔道具を使わなくても攻撃魔道具並みの威力を持つ攻撃が出来る異世界人特有のスキルだそう。
そう言えば運営課の同期に聞いたけど、魔法を授ける魔道具があるって話しだったな。
この魔法、僕達の世界には魔道具が豊富にあって、魔法なんて能力は必要ないんだけど、運営課が管理する異世界には魔道具をあえて普及させていないから、代わりに信頼できる者達に魔法を授けているって言ってたっけ。
この第2師団の魔法攻撃っていうのがまた凄いんだ。何列にも並んだ兵達が次々に様々な魔法を放って連続攻撃を仕掛けていく。
それこそ雨が降るかのような攻撃だ。
こんな軍隊に攻められたら、俺達の世界なんて一瞬で消えちゃうんじゃないか?
でもその第2師団よりも脅威があった。マイク隊長だ。
雨のような魔法攻撃を手に持った刀で切り裂きながら、何も無いように第2師団に突き進む。
切り崩された第2師団の中から現れたのはムラマサ第2師団隊長。
マイク隊長と、ムラマサ隊長の一騎打ちはいつ終わるともしれないほど白熱した激突で誰も中に入ることが出来ない程だ。
しばらく様子を見ていた室長が一瞬消えたと思ったら、激突中のふたりの間に割り込んで、両方の攻撃を片手づつで易々と止めていた。
その場にいた全員が凍り付いたように固まる。
「お前達、真剣になり過ぎだ。
皆んな引いているじゃないか。」
あの猛攻を一瞬で止めてしまうマサル室長っていったい?
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