第462話【国際連合支援室2】
<<アルト視線>>
「....だけど今はテンプレートキットがあるの。ある程度成熟した異世界を簡単に創れる便利なキットよ。
誰でも簡単に創れるから、昔みたいにその異世界に深い愛着を持つ運営課員も減っているわ。
結果、知的生命体が居るにも関わらず、少しでも気に入らないと簡単に捨ててしまうのよ。
だから、知的生命体のいる野良星がたくさん出来ていて、それを狙う奴が出てきたわけ。」
マリス先輩の話しはなんとなく分かる。
僕もプロジェクト○スペシャル『アース誕生秘話』を観ていたからね。
あの時のゼウスさんの姿を思い出したら、また泣けてくるよ。
僕が異世界管理局を目指したのも、あの番組の影響が大きかったな。
そういえば、あの番組内でゼウスさん役はマサル室長で、ガイヤ役はマリス先輩だったっけ。
後でサイン貰わなきゃ。
「以前はそんなに大変だったんですね。」
スイムがしみじみと話し出す。
「実は僕のおじさんも異世界管理局に居たんです。
もう退職しちゃいましたけど。
そのおじさんも酒を呑みながら昔話を話してくれました。
本当に大変だったみたいですね。
おじさんは、自分が作ってしまった野良星をいつも気にしていました。
それだけ星を創るのって大変なんですね。」
「そうなんだよ。だから異世界人を放置したままの不幸な野良星をなんとかしたいんだ。」
「でも運営課員が少なくて管理しきれないって聞きました。」
「そうだね。
だから、国際連合にその仕事をやって貰おうと思ったんだ。
同じ異世界人同士で助け合いながら成長させていければ良いかなってね。
そしてわたし達国際連合支援室がそれをバックアップする。
管理自体はここで行い、神の存在しない星に、神を置くのさ。
神役はマリスさん達にお願いするよ。」
「「「まかせて!!」」」
「そして君達には国際連合と異世界管理局との橋渡しをしてもらうつもりだ。」
「僕達にそんな大役が務まるでしょうか。」
「大丈夫さ。国際連合との繋ぎはわたしがサポートするし、技術面ではポーラさんやシールさんだって居るんだからね。」
「マサルさん、わたしを忘れてない!」
「マリスさんには神役を頑張ってらわなきゃね。」
「そりゃそうね。なんたってわたしは運営課の花形だったんだから。」
大変だけどやり甲斐の有りそうな部署だな。
頑張って室長や先輩方に喰らいついていかなきゃね。
<<ランス視点>>
突然お父様が、神の世界の人達を連れて現れた。
全くこちらの都合も考え無いんだから。
「お父様、お越しになられるなら事前に連絡を頂ければ助かるんですが!」
「ランス、すまんな。
上からこちらの様子を見てたら暇そうに見えたんだ。
忙しければすぐに帰るよ。」
「せっかくお越し下さったのにそんな追い返すような真似出来ませんよ。
で、今日はどうされました?」
「いやな、今度新しい部署が出来て、そこの室長になったんだ。
ここと連携して、知的生命体のいる野良星を育成することが目的なんだ。
それでだ、今日は研修も兼ねて、ウチの部署のメンバーを連れて来たってわけさ。」
何かまた新しいことに手を出したみたいだな。
忙しくなりそう。
「紹介するよ。こちらからアルト君、スイム君、ヤルタ君の3人だ。
こちらは、国際連合事務総長のランス。俺の長男だ。」
「「「ランス様、よろしくおねがいします。」」」
「こちらこそよろしくおねがいします。」
「あとな、マリスさん達3人も部下になったんだ。」
「お父様!それって大丈夫なんですか?」
「まあ、成り行きと言うか。あくまでも本人達の希望なんだからな。」
「なんかややこしそうですね。」
この世界の管理者であり創造神であるマリス様やマリス様を支える2柱であり、この世界を守護するシール様、ポーラ様もお父様の部下ってことは...えーっとお父様はマリス様に召喚された異世界人でお父様はマリス様の使徒のはずなんだけど、神の世界では上司って...分からん。
まあ、お父様だからありかな。
「そうだ、ランス。こちら側の担当者も数名見繕ってくれるか。できればお前の側近とフットワークの軽い奴が良いな。」
「じゃあ、セラフを付けましょうか?最近お母様もお忙しくなったみたいで、結構手が空いているみたいですし。
セラフだったら、あちらの事情も良く弁えているでしょうしね。」
「そうだなセラフちゃんが良いかもな。セラフちゃんはだいぶこちらに慣れたのかな?」
「ええ。結婚前から社交界では結構有名人になっていましたけど、結婚後はお母様の補佐としてあちらこちらに顔を出していますし、国際連合の加盟各星との友好関係にもかなり尽力してくれていますよ。」
「そうか、セラフちゃんならマリスさん達とも良く知った仲だし、問題無いか。
じゃあ頼むよ。俺は彼等を案内してくるからな。ランス、邪魔して悪かったな。」
それだけ言うと、お父様は本当にあっという間に消えていった。
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