第444話【ユートピア計画7】

<<マサル視点>>


「アースの跡地で指定されている塵を見つけました。」


マイク君と同じようにゼロスの誘拐を想定して、該当しそうな星にロケットを持たせた隊員をそれぞれ駐留させていた。


そして、イスレムさんが時空空間の入り口にあたる魔道具の可能性を示唆してくれたことで、俺は駐留させていた彼らにその魔道具を探すように指示していたのだ。


そしてシンゲン星に駐留させていたレイト君からその成果を示す第一報が入ったのだ。


「レイト君、よくやったな。よし、慎重に聞いてくれ。


その塵の大きさはどれくらいで魔道具はどんな風に設置されている?」


「塵の大きさはかなり大きいです。直径1キロメートルほどかと。まあ星にしては全然小さいので宇宙じゃ塵としか呼べないんでしょうが。


それと魔道具ですが、地表に埋まっているようです。まだ手を付けていないのでどの程度埋まっているのかは不明ですが、地表から見えているのは直径30センチメートルほどでしょうか。」


「そんな小さな魔道具をよく見つけたな。」


「ええ、この塵は砂に覆われていて、風で絶えず砂が波のように流れています。その砂の中から30センチメートルほどの高さの円柱が見え隠れしていたんです。


肉眼で捉えることは出来ませんでしたが、わたしは探索のスキルを持っていますので。」


なるほど、上手く隠してあるわけだ。


俺はイスレムさんに探索用の魔道具を探索中の各駐留隊員に送るよう指示した。


「各隊員に探索用の魔道具を送る手配をしたよ。レイト君、その魔道具を亜空間バッグに入れることは可能かい?


何が起こるか分からないから慎重にね。」


「やってみます。」


通信機を通してレイト君の作業している音が聞こえてくる。


探査スキルを駆使して安全性や魔力放出、トラップなど慎重に調べているようだ。


「マサル様、今探索が終了しました。どうやら外側にはこれといった問題はなさそうです。


周辺の地表も探ってみましたが、深さも1メートルくらいみたいなので、このまま周りの砂を掘って抜き出せると思います。」


「分かった。それじゃあ、亜空間バッグを上から被せた状態で、その魔道具に手を触れないように周囲の砂を取り除いてくれるかい。


ある程度砂を除けば、亜空間バッグがその魔道具を吸い込んでくれるはずだ。」


「分かりました。やってみます。」


「慎重にな。」


数分後、レイト君から無事に魔道具を回収したと連絡が入った。


俺とレイト君の会話を聞いていた総司令部の皆んなはその様子を固唾を呑んで見守っていたが、無事回収の一報を聞いて手を取り合って喜んでいる。


「マサル様、発見された当時の様子をまとめたものと探索の魔道具を送ったところから、順次発見の知らせが入ってきています。


解除の方法を伝えても構わないでしょうか?」


「ああ、イスラムさん。頼むよ。くれぐれも慎重にって言ってくれ。それと回収後の亜空間バッグはこっちに送ってくれるように指示してくれるかい。」


「承知しました。そのように手配します。」


皆んなが喜んでいる間イスラムさんは俺とレイト君のやり取りを記録してレポートにまとめてくれていたみたいだ。

連絡担当のウルティマさんと上手く連携を取りながら次の準備をしてくれていた。


ランスの奴、良い秘書を持ったものだな。


それから数時間の間に30人の駐留隊員から連絡が入り、回収が滞りなく終わることとなる。


その間に5ヶ所ほど消滅させられたようだが、事前に仕掛けておいたロケットを星に残っていた隊員が発射することで、無事に戻ってこれたのだった。


しかし、30以上という大規模に展開された時空空間魔道具が一斉に起動されたらと思うとぞっとする反面、ゼロスの行動力は我々の想像を大きく超えているものであることに、より気を引き締めることになったのだ。





<<ゼロス視点>>


アースから無限に良質な生命エネルギーを吸い上げるための時空空間「ユートピア」を使用した実証実験は思いの外難航していた。


やはり、異世界でも最も進化しているアースを最初に手掛けたのは間違いだったのだろうか。


本来のわたしであれば、もっと手頃なところから手を付けたのかもしれないが、マサルの出身地であることも含め、彼への敵愾心が関わっているのも否めないことだろう。


わたしもまだ青いな。


そんな矢先、アース同様にクーペ星を取り込んでいたユートピア2号が破壊されるという非常事態が発生した。


いや、クーペ星自体は残っているため、外部からの破壊というよりは内側からの崩壊と言った方が正しいだろう。


しかし、そんなことが果たして起こりえるのだろうか。


クーペ星を飲み込む際にそれが存在する恒星系ごと飲み込んだ。


その最大長は40億キロメートルにも達するはずで、ほぼ中心にあるクーペ星から次元空間の端までは最短でも18億キロメートルはあるはずだ。


それだけの距離を超えて壁に達するだけのロケットを作れるほどの文明がクーペ星に有ったということか?


いやそんなはずはない。いや待てよ、マサルなら。


マサルなら作りかねんな。しかしもし作ったとしても時空空間の壁は全てを飲み込むはずだ。物理的な攻撃など意味が無いのだ。


考えがまとまらないが、時空空間を内側から破壊されたのは間違いないだろう。


よしそうであれば、予定を前倒しで仕掛けたユートピア達を全て起動してやろう。


いくら手を尽くそうとも、あれだけの数を一度に消滅させられたら、動きようがあるはずもないのだから。




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