第432話【正体判明1】
<<マサル視点>>
今日はジーク室長やユウコさんと3人で国軍に来ている。
マイク君達と戦って破れたカーチスという男の正体を確かめるためだ。
きっかけはユウコさんとの雑談からであった。
スルーツ星での死闘の後、俺は久しぶりに調査室に顔を出し、自販機の前で偶然出会ったユウコさんと今回の戦闘について話していた。
「へー、そんなに強い奴がいたんだ。
前にマイクさんの模擬戦の様子を見たけど、かなり強かったわ。
あの時は必殺の剣技は使ってなかったのよね。
そんなマイクさんが、剣技を全て出したって危なかったなんて。
しかもランスさんも一緒だったんでしょ。
信じられない強さね。」
「そうなんだよね。
まあ、ランスも周りにたくさん味方が居たから強い 魔法は使えなかったんだけど、それでもあの状況にあっても闘志を失わないところなんかは、とんでもなく凄かったよ。」
「マサル君、それってこの世界の奴なのかい?」
後ろからジーク室長が、声を掛けて来た。
「ええ、恐らく。魔法を使わずに魔道具を使っていましたし、その魔道具もオリジナルの物でしたが、間違いなく、この世界の物です。」
「その根拠は?」
「はい、その魔道具から思念を追えなかったのです。
異世界で作成された魔道具については誰が作ろうと思念を追えます。
だけど、俺の魔法でも思念を読み取れませんでした。
それは思念にスクランブルが掛かっていたからですが、それが可能なのはこの世界の技術者に限られるはずだからです。
そして、もし異世界人であれば、あれ程の手練れなんですから、魔道具など使わずに極大魔法をぶっ放していたでしょうね。」
「なるほどな。そうすると、この世界で探る必要があるわけだな。」
「そうですね。あれだけの手練れ、直ぐに判ると思っていたんですけど、実は難航しています。」
「カーチスか…
それほどの強さを持ったカーチスという男だと、俺もひとりしか思い浮かばないが。
うーん、いや、しかし…」
「室長、お知り合いにでも?」
「知り合いってことでもないんだが。
ちょっと昔にね……」
ジーク室長が、まだ学生の頃、街を騒がせている愚連隊が逮捕されたことがあった。
そのリーダーの名前が、ヤンマー・カーチスだったのだ。
その数年後、異世界管理局に入局したジーク室長は新人研修を受けるために国軍を訪れたのだが、その時に訓練を受け持ってくれたのがカーチスであった。
一緒に研修していた奴にカーチスと同郷の者がいて、元愚連隊のリーダーだと教えてくれたらしい。
自らも新人であるにも関わらず、かなりの傲慢な態度をとるカーチスに室長達も反感を持つことになるが、その圧倒的な強さは、それらの感情を打ち消したほどであったという。
1ヶ月ほどで室長達は研修を終えるのだが、その数ヶ月後にカーチスが消息を絶ったという噂が流れた。
室長達が伝え聞いたところによると、カーチスや当時単独での戦闘力が半端なかった連中が特別小隊と呼ばれる謎の部隊に配属され、しばらくしてその中の数人が行方不明になったという。
残った隊員も、その多くが精神に異常を抱えており、除隊後自ら生命を絶った者がほとんどだったという。
そのため、特別小隊はすぐに廃止され、それと同時に特別小隊の隊長も除隊、行方知れずになったということだ。
元々この特別小隊は国軍の最高司令からの勅命によりつくられた部隊であり、その目的については重要機密として、明かされることは無かった。
「まあ、こんな話しなんだよ。
だからその消息不明のヤンマー・カーチスが、今回のカーチスと同一人物では無いんじゃないかと思っているんだ。」
「そうですね。30年前に行方不明になった人が今さら現れるとは思えませんね。」
ユウコさんも別人だと思っているみたいだ。
でも何か引っ掛かるんだよな。
「マサル君、君はまだカーチスがヤンマー・カーチスだと思っているのかい。
軍の発表によると、特別小隊のあった秘密訓練場を捜索したら、そこには大量の遺体があったそうだ。
そしてその遺体の損傷は激しすぎて、身元もわからない程だったらしいのだ。
カーチスもそこに含まれていて、訓練中の事故死と結論付けされたんだよ。
だから、わたしの知っているカーチスとは全くの別人だと思うよ。」
室長は「余計な事を言ってしまったね」と、言っているが、それでも何だかあのカーチスとヤンマー・カーチスが、同一人物では無いんかと思ってしまうのだ。
「何か気になるのかね?」
俺の思案顔に室長が尋ねる。
「いえ、お話しはよく理解したのですが。
実はわたしの出身であるアースの小説で、死んだはずの人間が、実は連続殺人犯で、死んだ後も殺人をしていたという物があったんです。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます