第431話【つかの間の休息】
<<マイク視点>>
スルーツ星での死闘を終えて俺達はつかの間の休日を楽しんでいた。
敵の兵士を壊滅状態と言えるくらいに削ぎ、かつ隊長格であったカーチスを斃したことで、3日間の特別休暇を頂いたのだ。
ランス様からは、「もっと休みをあげたいんだけどね」って言って頂けたのだが、こちらもかなりの被害を出しており、その対応に忙しいランス様を考えると、3日も休みを貰うのは心苦しいところなんだが。
まあ、レイトやヤストも結構酷い怪我を負ったみたいだから、彼奴らがゆっくり出来るようにって配慮なんだろう。
異世界防衛連合軍の本拠地である、このホルス星にもいつの間にか立派な街が出来ていて、各星の名だたる商会が軒を連ねている。
そのメイン通りをひとりで歩きながら無事に生還出来た喜びを噛み締めていた。
「カーチスか…」
手強い敵だった。剣技には絶対の自信を持っていた俺が、完全に圧されていた。
剣技もそうだが精神力も到底敵わないだろう。
ランス様が参戦してくれてこちらが有利になっても全く退かず、それどころか闘いを楽しんでいるような不敵な笑みを浮かべてたっけ。
障壁が壊れても、俺達を狙う眼には闘争の火が消えてなかったからな。
敵ながら尊敬しちゃうじゃねえか。
それにしてもひとつ気になるのは、奴が最期に残した一言だ。
ゼロス
最後の方は声になってなかったが、確かにカーチスはゼロスと言った。
なんのことなんだろう?
惚れた女の名前だろうか。
<<ランス視点>>
今回のスルーツ星への大規模襲撃は俺達に衝撃を与えた。
戦闘の規模だけじゃなく、兵士の質だ。
召喚者から更に選抜した特別行動隊の隊員と比べても遜色の無い戦闘力と、決して退かない不屈の闘志を持っていた。
そしてあのカーチスという漢。
もしあのタイミングでマイクの一撃が無ければ、危うかったかもしれなかった。
それほどの強敵であったのだ。
組織体制や訓練を見直す必要があるな。
それにしても今回はお父様に助けられたよ。
あのタイミングで現れてあっという間に戦局を変えちゃうんだもんな。
全く神のような強さだよ。
うん?
そうか神だったんだよね。
<<ムラマサ視点>>
「お父様お帰りなさい」
「ただいま、マリア。お利口にしてたかい?
はい、お土産。」
「わー、ありがとう!」
「あなた、お帰りなさいませ。お疲れ様でした。」
「旦那様、お帰りなさいませ。お風呂の準備も出来ております。」
「みんな、ただいま。
そうだな、先に風呂に入ろうか。マリア一緒に入ろう。」
「うん!」
俺達が拠点にしているホルス星に最近出来たかわいい系の店で買った皆への土産をそれぞれに渡して、マリアと一緒に風呂へと向かった。
久しぶりの三連休に戻って来た我が家はいつも通りだな。
あれだけの激しい戦闘にも関わらず、重傷者を出さずに済んだのは奇蹟に近いものがあるが、それでも隊員達の疲労は限界を越えていた。
そしてそれは俺も同じで、休みを家で過ごすことにしたんだ。
独り者のマイク達には申し訳ないが、俺には故郷に妻と子供が待っているのだ。
マイク達は元の世界で死亡後に生前と同じような新しい身体を与えられて別の世界に転移しているのだが、俺は俗に言う転生者だ。
こちらで産まれるはずの依代に魂を移して誕生した。
だから、父母も居れば生まれついた家も存在する。
俺は伯爵家の次男として誕生し、この国の魔法師長として生活していたのだ。
そう、これでも一応魔法師爵を持つ貴族なんだよ。
まあ、領地を持たない法衣貴族だから、前世と同じサラリーマンみたいなもんだな。
今は国王の命により国際連合に派遣されている感じだな。
娘のマリアとこうして一緒に風呂に入れるのも後何年くらいだろうか。
せっかくの休みなんだから、ゆっくりと家族と過ごすことにしようか。
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