第430話【カーチスの最期7】
<<マサル視点>>
レイト君が穴を塞いでくれた。
さあ殲滅戦だ。俺はレイト隊の隊員全員に持たせている転移魔法具を一斉起動させて彼等を後方に強制転移させた。
全て移動が終わったところで巨大な結界を掛けて魔物や敵兵を閉じ込め、そのまま消滅させた。
その一部始終を見ていた味方の隊員達から驚愕の視線が注がれる。
しまったな、ちょっと刺激が強すぎたか。
そんなことを思っていると、いつの間にか横に来ていたレイト君が声を張り上げていた。
「全ての敵は消滅した。我々の勝利だ。そしてこれが神であるマサル様の力の一端んだ。神の裁きにより我らは勝利したのだーーーー!!!」
「「「おおおおおーーーーー!!!!」」」
驚愕の眼差しは狂喜の微笑みに変わっていったことに一安心して、俺はヤスト君の基へと急いだ。
<<マイク視点>>
カーチスって言ったか、こいつ強い。
いや強いなんてもんじゃねえ。俺がフロンタールの力を全て出しても、全て躱して攻撃してきやがる。
身体強化ぐらいは掛けているだろうが、障壁魔法も使っていないはずの肉弾戦で俺が圧されるなんてありえない。
しかしこのままではじり貧でやられちまうじゃねえか。どうする?
俺の一瞬の躊躇をついてカーチスの強烈な剣撃が飛んできた。
咄嗟にフロンタールで防いだが、その勢いが止まることは無く、そのまま後ろに弾き飛ばされた。
やばっ!!
そう思った瞬間、目の前に剣を振りかぶったカーチスが現れる。
まだ体勢どころか、着地もかなわない状態では受けようがなかった。
やられる!
そう思った瞬間、轟音と共にカーチスが後ろに吹き飛ぶ。
「マイク君、大丈夫?」
ランス様だ、ランス様が来てくれたんだ。
「ランス様、有難うございます。」
「礼は終わってからだよ。さあ、奴を斃そう。」
「はいっ!」
ランス様に魔法で援護してもらいながら、縮地剣舞を使ってカーチスに迫る。
さすがのカーチスもランス様の魔法を躱しながら俺の剣撃を避けるのは難しいようで、じりじりと後退していった。
あと少し、そう思ったところでカーチスの奴ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「障壁!」
カーチスの声で彼の周りに魔法障壁が発生する。どうやら魔道具を起動させたようだ。
とたん、ランス様の魔法攻撃が障壁で無効にされてしまった。
「この魔道具は特別製だ。いくらお前達の魔法の威力が高くとも所詮は家畜共に我らが与えた力、防げぬわけがあるまいて。ガハハハハ!」
「まずいな」
ランス様のつぶやきが聞こえた。
そうだ、こいつら神の世界の人間だったんだ。
神が創った恩寵である魔法を神が防げてもおかしくないんだよな。
とにかくこれからは魔法障壁を持ったカーチスと戦わなけりゃならない。
しかも、俺のフロンタールの魔力も魔法障壁に遮られてしまうから、完璧に俺達が不利な状況に追い込まれてしまった。
さあどうする?!
「マイク君、俺が魔法で物理攻撃を加え続けるよ。
いくら魔法障壁でも物理的な攻撃が加わると一瞬の亀裂が入ると思う。
そこを狙ってくれるかい。君の眼に身体強化を掛けるよ。
どうだい、これで魔法障壁が見えるようになったはずだ。」
確かにシャボン玉みたいな虹色の混じった薄い膜が見えるようになった。
そこへ大量の岩石が降り注いでいる。
ランス様の土魔法で作られた岩石が次々とカーチスの魔法障壁へとぶつけられているのだ。
岩石が直撃した場所の魔法障壁が揺れているのが分かる。
連続して当たった場所には一瞬だけど亀裂も入っている。
ランス様に向かってカーチスも剣撃による衝撃波を飛ばして攻撃していて、ランス様にも余裕が感じられなくなってきているようだ。
カーチスの視線から逸れた俺は精神を集中し、魔法障壁の亀裂を探る。
魔法障壁の魔道具からは一定間隔で障壁の補修が行われているようで、亀裂は短時間で修復されて元通りになっていた。
出来ては消える亀裂を見定める。集中して、集中して... 今だ!!!
「うっ!」
ランス様への攻撃に目を奪われていたカーチスの一瞬の隙をつき、魔法障壁の亀裂を貫いた俺のフロンタールは、カーチスの右太ももを貫くと共に、魔道具も砕いた。
その瞬間、カーチスを覆っていた薄い膜ははじけ飛び、ランス様の放っている岩石が次々とカーチスを襲う。
右太ももを庇いながらも必死に岩石を砕いては避けるカーチス。
俺はカーチスの懐に飛び込み、フロンターレを突き出した。
「どうやら終わったようだね。」
「はい、お父様。応援ありがとうございました。」
「マサル様!」
カーチスを斃した俺は、そのまま時空空間の穴を塞ぎに行った。
そしてようやく一息ついた頃には、魔物やカーチスの部下達はマサル様に一掃されていたのだ。
そしてマサル様が来られたことで、スルーツ星で起こった10ヶ所にも及ぶ大規模な攻防戦にようやく終止符が打たれたことを知ったのだった。
カーチスの最期編 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます