第425話【カーチスの最期2】

<<国際連合事務総長ヤンガ視点>>


「うーーーーーん、困ったものですね。」


異世界防衛連合軍創設の際に、たくさんの星が国際連合に加盟して下さいました。


マサル神のおかげでこれまでその存在さえも知らなかった星との交流が拡がるのはとても有難かったのです。


いやあ本当に。


でもね、それが全て良かったわけでもないのです。いや、悪い思想を持った星があったとかじゃないんです。


もしそんな星があっても、追放すれば済むだけですし、そんな星をランス様が加盟させるわけありませんしね。


問題なのは、善良で見た目は何の問題も無いのに、実のところ上手く機能していない星がいくつか混じっていることなんですよ。


加盟申請書に記載されている国の人工配分や社会システムも理想的で問題無かったんです。

なんですけど、建国してすぐにその体制がいきなり作られたみたいで、運用が全く追いついていないんですよね。


だから素晴らしい社会システムも無用の長物に成り下がっているんです。


これから300年もこのままいけば、結構良い世界になるんでしょうけど、失敗事例の無い今の彼らにそれを求めるのは難しいでしょうね。


国際連合の運営に支障をきたす恐れがあるため、ランス様に脱退を勧めるようにしたらどうかと進言したんですが、即、断られました。


まあ、仁のランス様ですから、頼ってきた者を無下にするようなことはするわけないのですが。


だからそれらの星に対しては、国際連合加盟国全体で支援することになりました。


具体的には不足している食料の提供や、様々な星の過去の歴史や政治体制の変遷、失敗事例などを為政者に教育するとか。


しつこいようですが、とにかくどこの星も何千年と掛けて築いてきた歴史の重みがあるわけで、それを教えないと、完成系だけを真似ても上手くいくはずないんですよ。


あっ、もうこんな時間ですね。


実はこの国連事務局でそんな星の為政者さん達に勉強会を開催しているのですが、そろそろ皆さん集まってこられる時間です。


今日は特別講師としてシンゲン星の歴史学者様をお迎えすることになっています。


タイトルは確か...「しくじり政治家、星を捨てさせるな!」だったっけ。





<<スルーツ星星王皇太子スリスリト視点>>


わたしはスツール星の盟主国であるスルリト王国の皇太子スリスリト。


わたしが生まれる10数年前、我が父スリストが女神アルマ様のお告げを受けて国を興し、数年で世界を統一し盟主国となった。


驚く事に全ての国がアルマ様のお告げを素直に受け入れて、統一までに掛かった期間は1年にも満たないとのことであったらしい。


更にアルマ様のお告げにより構築された社会システムは、世界中の国民全てが納得できるレベルであったし、食糧の水準も高い。


何不自由ない世界であり、急速に発展したこともあり、人口増加に食糧供給が追い付かないとか、不測の犯罪に対応しきれていないなどのいくつかの問題点はあるのだが、こればっかりは時間が解決するしかあるまいと思っていた。



そう、そう思っていたのだ。


わたしは今、ラスク星という星にいる。


昨年、アルマ様が降臨され、このラスク星を含めた多くの星が参加する国際連合に我がスルーツ星も参加するようにお告げを受けたのだ。


国際連合加盟後、いくつかの新規参加星から若手為政者が集められて教育を受けているのだ。


このラスク星という星は我がスルーツ星とよく似ている。っていうかそっくりだ。


だからここで聞く講義はわたしにとって退屈なものであった。


それは一緒に参加している他の星からの聴講者も同様であったみたいだ。


そして今日、わたし達は驚愕の事実を知ることになったのだ。



今日はシンゲン星という国際連合加盟古参の星から歴史学者と呼ばれる方が講師として来られた。


はっきり言って歴史学者って何者かわたしは知らない。


いや歴史ってなんだ。


「シンゲン星で歴史学者をしています、カルマニと言います。


自らの世界の歴史を振り返ることで今の世界がどうやってできてきたのか?


何故このシステムになったのか?そして何故この世界を維持改善しなければいけないのか?


このことについて学んでいただきたいと思っています。


また、今日は我がシンゲン星の歴史をご紹介します。


我がシンゲン星の民は太古このラスク星の民でした。何故現在のシンゲン星に移住しなければならなかったのか、その時のお話しを致したいと思います。」


そうして、先生が歴史というモノの重要性について話しを始められた。


「先生、お話しを遮って申し訳ありません。そもそも、歴史というのは何でしょうか?」


先生の目が点になっている。わたしはおかしな質問をしたのだろうか。


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