第411話【異世界防衛連合軍6】

<<マサル視点>>


ランスに異世界防衛連合軍を頼んで数日が過ぎた。


いやあちらの世界とは時間の流れを変えてあるから、向こうではそろそろ1ヶ月くらいが経つ頃だな。


指導に当たっている元々の召喚者チームにも良い影響が出ているみたいで何よりだ。


肝心の軍の強化についても順調なようで、そろそろ実戦装備を渡して欲しいってランスから要請が来ている。


用意した装備はひとり3つ。


1つ目は武器。それぞれの特性や軍の性格に合わせて、剣、槍、戦斧、弓矢を割り振る予定。


2つ目は防具。軽くて強度のある素材を使用。


武器、防具共に魔力による強化を加えてある。


3つ目は魔道具の入った装備品。


中身については後々わかるだろう。


今日は遊撃隊、そう元の召喚者隊の本部に来ている。


「やあケンジ君久しぶりだね。すっかり立派な大人になって。」


「加藤先生ご無沙汰しておりました。先生は相変わらずお若いままですね。うらやましい限りです。」


「まあまあ、ケンジ君もすっかり貫禄が出てきたじゃない。ケンジ君の噂は聞いているよ。


召喚者を集めて創造魔法の適切な普及活動を進めてくれているみたいだね。」


「ええ、加藤先生に教えて頂いたノウハウですからね。俺ひとりで持っているなんて勿体無くて。


たまたま、あの後セミナーで知り合った女性があの頃の俺と同じ悩みを抱えてたみたいで、相談に乗ってあげたら喜んでくれて。


それで女神のユリア様に相談してみたんです。


そしたら、最近創造の能力を使いこなせていない召喚者が増えてるって話しになったみたいで、俺がそのとりまとめというか指導役になることになって。」


「うんうん、ユリアさんから聞いてるよ。ケンジ君が頑張ってくれて本当に良かったよ。


いろんな世界の管理者様から俺の所にもケンジ君の話しが来ているからね。」


「有難うございます。中2で異世界に来て、あの時は本当に困ってたんです。

加藤先生にいろいろと教えて頂いて今の自分があるんだって痛感しています。


本当にありがとうございました。


それで今回は少しでも加藤先生のために頑張りたいと思って、俺のところで頑張ってくれている召喚者を何人か連れてきました。


よろしくお願いします。」


「ケンジ君ありがとう。本当に助かるよ。」


ケンジ君は運営課のユリア様が召喚した日本の男子中学生。


当時は厨二病真っ最中で、召喚時に選んだ能力は『想像魔法』。


しかし、中学生の持つ知識で想像したものが完璧なはずもなく、彼が創った建物や街は大地震によって壊滅してしまう。


項垂れる彼が女神ユリア様の紹介で俺の召喚者セミナーへ初めてやって来たのは、彼の世界で言うところの40年前。


俺から学んだ建築学やコミュニケーション術を上手く自分のものにしてくれた彼は、今では様々な世界に召喚された創造魔法の持ち主の教育係をしてくれているようだ。


こんな形で成長してくれると俺もセミナーを開催した甲斐があるってものだ。


ケンジ君達には、様々な攻城兵器や魔道具の製作を頑張ってもらうことになっている。


これらも連合軍の強力な戦力になってくれるはずだ。


こうして連合軍各隊に配備する武器や防具、それと装備品も一通り揃ってきた。


そして装備を支給し終えた頃、ランスから訓練の第一陣を終えたとの連絡が入った。


仕上りは順調なようだ。




「マサルさん、お疲れ様。何とか形になったようね。」


「そうだね、ユウコさんが頑張ってくれたおかげだよ。」


「なに言ってるの、わたしなんて最初だけよ。後はマサルさんとかイリヤさんのお陰ね。」


「ユウコさん、これからもよろしくね。」


「こちらこそ。調査室の同僚としてお願いしますね。」


俺達は顔を見合わせて笑いあった。


異世界防衛連合軍の結成により、これまで管理者任せであった異世界の運営を整理する方向で運営課が動いているそうだ。


そしてそれに合わせて管理局全体の再編も進んでいるらしい。


ジーク室長はその対応に追われ、ジオンさんも、異世界間の時間軸を調整するための会議が目白押しみたいだ。


なので俺達ふたりだけがこの部屋でまったりとお茶を楽しんでいる。


「なにも起こらなきゃいいのにね。」


湯呑を持ってぼそっとつぶやくユウコさん。


うん? これってフラグになるんじゃ?




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ケンジ君のエピソードについては 第296話から第303話【とある星の再建編】で出てきますので、よろしければ、振り返って頂ければと思います。



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