第410話【異世界防衛連合軍5】

<<ムラマサ視点>>


マサル様が仰っていた異世界防衛連合軍が正式に発足した。


そして俺達もその中の1組織として組み込まれることになったのだ。


異世界防衛連合軍 特別行動隊というらしい。


やることはあまり変わらないみたいだけど、イリヤ様達の指令チームは、総司令本部と名前を変えて全軍の作戦指揮を執ることになる。


俺達特別行動隊は総司令本部直属として様々な作戦の遊撃に回ることになったのだ。




さて、俺達は異世界防衛軍の本拠地となるスペリオン星に来ている。


出来たばかりの各隊に訓練をつけるためだ。


俺は魔法担当として部下10人と共に軍の魔法使いに指導しているのだ。


ちなみにマイクは剣術を、レイトは爆発物、ヤストは弓や銃などの飛び道具をそれぞれ担当している。


魔法訓練に参加しているのは300名。


これでも5グループに分けた内の1グループである。


各星の正規軍から選抜されただけあり、様々な星からの寄せ集めにも関わらず、非常に統率が執れている。


ただ、魔法のレベルについては各星でバラバラだ。


俺からみたら生活魔法程度でしかないレベルから上でも中級魔法程度。


まあ、女神から特別な能力を貰った召喚者とは比べる方が酷というものだな。


訓練初日の今日は座学から始める。


魔力量の測定と魔法属性判別を行い、近接攻撃班、遠隔攻撃班、そして回復班の3グループに分けた。


近接グループは身体強化や武器への魔法付与により、敵と相対して戦うタイプ。


比較的ガタイが良くて魔力量が少な目が中心となる。


遠隔攻撃グループは、後方支援として遠隔から広範囲魔法を使う。


魔力量が大きく、中級以上の能力を持つ者が中心。


最後の回復グループは、前線で傷付いた者や魔力切れになった者達の回復を行う。


神官などの特殊な職に就いている者がほとんどだった。



座学ではそれぞれの特性や役割を説明し、戦闘時にどう動くのかを、過去の戦闘例に基づき説明していく。


その上で各グループの連携形態のパターンを含めてそれぞれの動き方を教えていくのだ。


特に近接型グループは剣術隊との連携も重要になるし、遠隔攻撃グループは弓・銃チームとの調整が必要だ。


そして回復グループは全てのチームに守られながら戦場を縦横無尽に動く必要がある。


各星から選抜されている兵の中でも魔法を使えるものは比較的少ない。


特に遠隔攻撃グループに入れるような中級以上の魔法使いは、その存在自体が希少であり、高飛車な者が多いため、その辺りは認識を変えていかないといけない。


また、回復グループの者達にいたってはそもそも軍人でない者も多く、戦場を知らない者がほとんどである。


そういった者達は戦場の恐怖に触れると身体が動かなくなってしまうのだ。


だからここでは、彼等に恐怖を覚えさせる必要がある。


我々遊撃隊が10人も参加している理由がここにあった。


圧倒的な力の前に自分達の無力感を叩き込み、その上でそれに立ち向かうための精神力と協調性を掴ませなければならないのだ。


偉そうな事を言っているが、これは俺達遊撃隊も乗り越えて来た試練なのだよな。


召喚者による選抜テストがあり、それぞれの世界では無双していた俺達は、かなり高飛車だった。


正直、どんな敵でも自分ひとりで何とでもなると驕っていたのは俺だけじゃなかったと思う。


そう、マサル様にあの特訓世界に連れて行かれるまではね。


まあVRMMOみたいな体験って言えば分かりやすいか。


実際には怪我もするから、現実世界なんだけどね。


とにかく、様々なシチュエーションでの戦闘を体験しながら、それを次々とクリアしていくってこと。


あの体験世界を乗り越えたことで連帯感が生まれたことは間違いないね。


今指導している連中は、俺達みたいな召喚者じゃないから、いきなりあの体験世界には行かせられない。


だから、あそこに行けるように基礎訓練をするのが大きな目標となる。


さすがにチートを持っている奴はいないから、魔力量も少ないし、使える魔法もかなり限定されている。


だけど、それだけに巧く工夫している奴らもいて、俺達みたいな大火力恃みじゃないんだ。


この辺りは凄く勉強になったね。


連れてきた10人も同じように考えたみたいだ。


情報交換をしながら、教えて貰っていたよ。


もしかして、これもマサル様の狙いどおりなのかな。


まさかね。

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