第404話【プロフェッサーゼロス9】

<<イリヤ視点>>


いったいどうなっているのかしら。


ハリウス星のマイクさんの報告では、敵は自分達が不利だと見たとたんに突然逃亡したみたいだし、ジョージ星のレイトさん達の方もそうみたい。


レイトさんが仕掛けた地雷って魔道具でおよそ30の敵兵を斃されたら、何の躊躇もなく撤退したっていうし。


もしかして、また誘導なの?


でも、独房からはなんの異常も見られないわ。


どういうことなのかしらね。



ゴゴゴゴゴゴーー


考えに耽っていた時、突然大きな音と揺れが起こり、その場に倒れそうになる。


「何、地震なの?」


ブー、ブー、ブー、ブー.......


「イリヤさん、このビルの近くに大きな亜空間が出現。そこから大量の魔物が現れています。」


えっ?


『イリヤ!今亜空間の前に到着した。


これから封鎖作業を開始する。』


お父様から念話で連絡が早速入ったわ。


あまりにも早い対応にびっくり。


「イリヤさん!マイクさんより緊急入電。


いきなり目の前に現れた真っ黒な霧から大量の魔物が出現したって!


待って!レイトさんからも同様の連絡がきたわ!


イリヤさんどうしましょう?」


『イリヤ、やっぱり他のところでも現れたんだな。


イリヤ、よく聞くんだ。今から直ぐにお父さんの言うことを伝えて欲しい。


「渡した魔道具を使って魔物が出てくる穴に被せて塞ぐんだ。」


わかったかい。そう伝えれば分かるからね。』


お父様が言ってることはよくわからないけど、リーダー達が出ていく前に何か魔道具を渡していたみたいだから、多分その事なんだろうね。


「マイクさん、レイトさん、マサル様からもらった魔道具を魔物が出てくる穴に被せて!


マサル様からの伝言よ。」


「「了解です。」」


これで上手くいくと良いんだけど。




<<マイク視点>>


敵が逃亡して現場検証していると、黒い霧が出てきた。


不審に思い近寄るとそこには陥没したような穴が開いていた。


穴から沸き出す黒霧が濃くなって穴が見え隠れする頃になった時、穴からゴブリンのような魔物が突然出てきたのだ。


慌てて斬り捨てたが、次々と出てきて止まらない。


この時点で指令室に報告。


そのうち、穴の縁がだんだん拡がっていき、大型の魔物も出てくるようになった。


全員で魔物討伐に当たるも、数の暴力は容赦無く、次第に旗色が悪くなってきた。


「マイクさん、レイトさん、マサル様からもらった魔道具を魔物が出てくる穴に被せて!」


指令室のイリヤさんからの緊急入電。


マサル様からもらった魔道具!


そうだ、あれがあった。


俺は魔道具を取り出すと、穴から沸き出す魔物を蹴散らして穴に向かう。

大型の狼や角鹿、熊なんかが出てきているが、走りながら振り回す魔力を纏わせたフロンタールに引っ掛かっては、一瞬で彼の世行きだ。


身体が半分だけ出ている象みたいな奴を斬り捨てて穴に落とすと、マサル様から頂いた亜空間の魔道具を上から被せる。


かなり大きな穴になっていたが、言われていた通りに穴の大きさを意識しながら被せると、魔道具の口が穴に合わせて大きくなったのだ。


亜空間の魔道具。


無限の広がりを内に持っているらしい。


穴から沸き出すはずの魔物達は黒い霧と共にマサル様の魔道具に吸い込まれているようだ。


「リーダー。外に出ていた魔物は全て狩り終わりました。」


「よし、ご苦労様。しばらく様子を見てから帰還しよう。」


「こちらマイク。マサル様の魔道具を使って魔物の封じ込めに成功しました。」


「了解です。レイトさんの方も終わったみたいですね。

お疲れ様でした。


念のためしばらく様子を見てから戻って下さい。」


「了解です。」


待機の間に魔物の片付けをしていると、城門が開いて中から冒険者達が10人くらい出てきた。


慎重に俺達の姿を観察しながらも少しずつ近付いて来た。


「お前らいったい何者だ?

俺は王都冒険者ギルドのギルマスでヤーコンと言う。」


「俺はこの班の隊長をしているマイク。こっちも隊長のムラマサだ。


この世界の女神様から俺達のところに救援要請が来たからここに来た。」


「女神様からだと?」


「そうだ。ギルマスだったら話しは聞いているんじゃないか。


俺達は神によって召喚者中心に各世界から集められた特別チームなんだ。


任務内容は詳しくは言えないが。」


「そういや、マサトがそんな話しをしてたな。


まあ、アイツは選抜試験で落ちたとか言ってたが、戯言だと思ってたんだが。」


「多分それだ。」


「なら強いわけだな。マサトはうちのS級なんだが、お前らはそれよりもつよいんだろ?」


「まあ、得意不得意は誰にもあるからな。


たまたまそのマサトっていうのが今回の選考条件に合わなかったのかもな。」


「まあ、しかしお前らが来てくれて助かったよ。

ありがとうな。


ところで、この魔物は俺達も片付けに参加していいか?


冒険者に緊急招集かけたんだが、報酬として渡す物が心細くてな。」


ちょっと照れくさそうに頼んでくるギルマスのヤーコンに後片付けを頼んで、俺達は司令室に戻ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る