第402話【プロフェッサーゼロス7】

<<マイク視点>>


「まずいな。こちらの遠距離魔法による弾幕は有効なはずなのに、奴ら平気で出てきやがる。

いや平気でもないのか。魔法に当ってる奴もいるな。だがすぐに回復して立ち上がりやがるな。


いくら回復薬を持っていても、魔法に当った時の恐怖は拭えねえはず。


本来なら進軍が止まってもおかしくないはずだ。だけどあいつらは、そんなの関係なしに突っ込んできやがるぜ。」


やがて先頭を走る俺に敵兵が斬りかかってきた。


俺は剣に魔力を流して迎え撃つ。


「伸びろーーー!魔剣フロンタール!」


俺の魔力を帯びた愛剣フロンタールは刃に纏った魔力を伸ばし、剣の有効範囲を3倍まで伸ばすことが出来る。


フロンタールの攻撃範囲に入った敵兵に俺は剣をふるう。


確実になぎ倒したはず。しかし、敵兵もさるもの、跳躍して躱す。


本来片刃の剣ではあるが魔力を纏っている部分は全方向が刃と化す。


上段から斬りつけた剣を上に切り返して飛び上がっている敵兵を狙う。


ガキーーン


切り返したフロンタールは敵の剣と斬り結ぶ形となり、敵兵はそのまま俺の背後へ。


後ろから剣撃が襲ってくる。それをフロンタールで受け止めてはじき返す勢いで振り切る。


本来ながら長さの分だけこちらが有利であり、勝負がついているところであるが、敵兵は瞬間移動でも使ったのかフロンタールの間合いから一瞬で離れた。


敵兵がさらに攻めようとしてきた時、後ろから魔法弾がそいつを直撃し、ようやく敵兵は地に臥せった。


「マイク大丈夫か?」


「ああ、ムラマサ、助かった。こいつら無茶苦茶強いぜ。」


「そうだな、今俺の隊の中距離攻撃班をフォローに当てさせているから、何とかしのげている状況だな。


しかし、人数はあちらの方が多いぞ。このままじゃ、じり貧だ。」


「よし、とっておきの秘技を出すぜ。ムラマサ離れとけよ。


フロンタール行くぜ。秘技、縮地剣舞!!」


縮地剣舞、それは俺の必殺技。縮地による瞬間移動を行ないながら剣舞の如く流れるような高速の剣捌きで辺りにいる敵を殲滅する。


斬られた者も斬られたと思わず、そのまま死に至るため、安死剣とも呼ばれている。


僅か20秒。


俺の周りにいた30人ほどが死の眠りについた。


だが、その俺の死の舞を剣で受け止めた奴がいた。


その風貌や威圧感から見て敵将であることは間違いない。


「なかなかやってくれるではないか。だがここまでだ。」


「俺の秘技を止めるとは、名だたる戦士と見た。俺はマイク、名を名乗れ。」


「知らん。ここで死ぬ奴に名を教える必要もあるまいて。ふん!」


そいつは言葉もそこそこに巨大な戦斧(バトルアックス)を振り回しやがった。


先頭経験の無い奴だったら風圧だけで殺られてしまうんじゃないかって思うくらい強烈なやつだ。


「あっぶね。」


「ふん、ちょこまかと避けやがって。それならこれはどうだ。」


頭の上でグルンと振り回された戦斧は奴の身体を中心に縦横無尽に飛び回る。


右上から左下に、そこから左上に振り上げると途中で真横にと、とにかくあんなデカ物を軽々と振り回すだけじゃなく、ちゃんと制御もできている。

なんてバカ力なんだ。


「ほらほら、避けているだけじゃ勝てんぞ。うっっ、ふん!」


ムラサメの渾身の雷がそいつを襲い、そいつは戦斧でそれを振り払う。


一瞬の隙が出来たところで俺は縮地を使って後ろに下がり、何とか間合いを取ることが出来た。


何度も連続して放たれるムラサメの雷。


そう彼のユニークスキル『ランニング・プレッシャー』は、全く溜を作らずに高等魔法を連発できるスキルなのだ。


通常、魔法は発動するまでに溜が必要である。それはいかなる高位の魔導士でも必定であり、魔導士はこの溜をどれだけ縮められるかを生涯研鑽する。


逆に言うと、溜の間に物理攻撃を与えられれば魔法使いに勝ち目はない。


そういう意味では彼のスキルもまた常識外れのレアスキルなのである。


これほどの手練れを相手にムラマサのレアスキルが無ければ、溜の間に彼は斃されていただろう。


だが敵もさるもの、ムラマサの雷を撥ね退けながら徐々にムラマサに迫っている。


「呪縛鞭!」


俺は、奴の注意がムラマサに移ったところで、フロンタールの技のひとつ呪縛鞭を使って敵将を拘束しようとした。


フロンタールが纏う魔力を鞭のように変化させ、相手を拘束する技だ。


呪縛鞭は確実に敵将を捕らえたかのように見えたが、奴は一瞬で戦斧を手元に引き込み自分の身体と呪縛鞭の間に差し込んで、その鋭利な刃で呪縛鞭を断ち切った。


俺の呪縛鞭とムラマサの連続雷の波状攻撃を受けた敵将は自分の不利を悟ったのか、巨大な魔力の塊を錬成し、それを俺達に無造作に投げつけた。


あんなものに当っては大変だ。俺はムラマサを抱きかかえ縮地でその場を離れる。


魔力の塊は先程まで俺達のいたところで激しく閃光し、爆発せずに霧散した。


そしてそこには敵100人の姿は既に無かったのだ。



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