第383話【ワースドでの攻防3】
<<ユウコ視点>>
ユウキが誘拐ではなく自分の意志でモーリス教授の悪だくみに加わったんじゃないかと疑問を持ったわたしは、さっそくスマル星に向かったの。
ユウキが消息を絶ったというダンジョンは、オーソドックスな洞窟型のダンジョンで難易度もそれほど高くないって、そこらにいる冒険者に聞いたわ。
召喚者であるユウキがこんなところに来ることもおかしいんじゃないかしら。
ここへ来る前に冒険者ギルドに立ち寄って彼のことを聞いてみたんだけど、A級冒険者として活躍していたユウキの失踪は皆んな覚えていていろいろと話しが聞けた。
でも誰もが口を揃えて言うのは、「A級冒険者があんなダンジョンで行方不明になるはずがない」ってこと。
その時にユウキが受けた依頼もD級が受けるような簡単なもので、そのダンジョンに行くためにユウキが適当に選んだものみたいなのよね。
ますます怪しいわね。
ってことで、今ダンジョンの中に入っています。
比較的入り易いダンジョンということで上層部は結構な混雑ぶり。特に変わったものも無くどんどん下へ降りていく。
地下5階にユウキが受けた討伐依頼の対象魔物がいたけど、魔法を使うまでも無い相手よ。
それにこの階にいる魔物も大したことなかったの。
たまたま近くにいた冒険者を捕まえて、この階に強い魔物が出るか確認したんだけど、そんなことは無いって言われた。
ついでにユウキのことも聞いてみたら、その冒険者、ユウキ失踪の日にここでユウキを見かけたって言うじゃない。
その場でその時の状況を聞き出したわ。
その冒険者が言うには、ユウキは行く手を阻む魔物を鎧袖一触で蹴散らしながら猛スピードで駆け抜けていったって言うじゃない。
やっぱり、依頼を受けたのはフェイクだったのね。
その後も下の層に行く度に冒険者を捕まえてはユウキのことを聞いていったの。
そしたら地下15階で見つけた冒険者が最後の目撃情報をくれたわ。
「あの時、僕達のパーティーはこの下の地下16階でレッサードラゴンに襲われて全滅しかかってたんです。
そこに後ろから猛スピードで走ってきたユウキさんが剣の一振りでレッサードラゴンの首を刎ねて助けてくれました。
礼を言う僕達に一瞬微笑んだような顔をしたユウキさんはそのまま走って行きました。
僕達も疲弊していたのでこのままここにいると危険だと思ってユウキさんを追いかけたんです。
そして角を曲がったところで見たのは、ユウキさんが消えていくところでした。
まるで光に包まれて、溶けていくように。
その後、何とかダンジョンを脱出した僕達は冒険者ギルドにそのことを報告したんですが、冒険者ギルドでは相手にされませんでした。
そんなダンジョン内で人が消えるなんてって。
まあ、人が消えてしまうダンジョンなんて誰も入らなくなるでしょうから、ギルドもそんな噂を流されたくなかったのかもしれませんがね。」
「その時のユウキの表情は見えた?」
「ええ、なんか楽しそうな顔をしていましたね。多分自分が消えるのを分かってたんじゃないかと。」
なんとなく分かったような気がする。間違いなく誘拐じゃないわね。
「ありがとう。気を付けてね。」
わたしは冒険者に礼を言って地下16階のユウキが消えたって場所まで辿りついたの。
そこでマサルさん直伝の思念追跡を行うとやっぱり思った通りだったわ。
<<マサル視点>>
ワースド星でユウキの痕跡を追跡していた俺は不自然に痕跡が残っていない場所を見つけた。
その大きさ約3メートル四方。そこに降り立ってみると思った通り、そこにはひとつの魔方陣があった。
「認識阻害、痕跡消去が組み込まれているな。しかも古代魔方陣っぽい。」
見たことのない魔方陣だったから、タブレットを使って検索すると古代魔方陣で認識阻害、痕跡消去が仕込まれていることが分かった。
やはりモーリス教授が絡んでいるな。
そう確信した時、危険察知魔法が警鐘を鳴らした。
落ち着いて原因を特定、速やかに排除した。
俺の足元には複数の矢が落ちている。どうやらこのエリアに入ると自動的に矢が射掛けられるようになっているようだ。
更に警鐘は続く。今度は攻撃魔法だ。魔法障壁を張りながらその発射元である魔道具を次々と破壊していった。
全て破壊しつくすと、そこにひとりの青年が現れたのだ。
「お前何者だ。何故ここへ来た?」
「俺の名はマサル。君と同じアースからの召喚者だ。お前はユウキだな。君を追いかけてきたんだ。」
「マサル?ああ、次元の狭間で俺達の邪魔をしたやつだな。さては俺が閉じ込めておいたふたりを連れ去ったのもお前か!」
「あの誘拐されたふたりなら返してもらったよ。安全な場所で匿っている。
君が誘拐の首謀者かい?」
「さあな、知りたきゃ力ずくで俺から聞き出すことだな。」
そう言うとユウキは突然雷魔法を打ち込んできた。
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