第382話【ワースドでの攻防2】

<<マサル視点>>


アキラ君とナタリーさんのケアはミリア様とランスに頼んだんだけど、アキラ君はともかく、ナタリーさんのケアは困難を極めたらしい。


アキラ君は日本のラノベの知識もあるし、召喚途中の誘拐だったのでなんとなく事情は掴めている状況なんだけど、ナタリーさんはラスク星の一般人。

それも片田舎から出たことも無いような人だから、ランスやリザベートを見て恐縮しっぱなしで大変だったみたい。


何とか話しを聞けるところまで持ち込めたところで、タイミング悪くマリスさんが乱入。


その後、気絶したナタリーさんを介護したりやらなんやらで、結構大変だったって昨日の晩飯の時に聞かされた。


結局ふたりからの情報はあまり芳しいものはなかった。


しいて言えば、アキラ君の証言である、過去にあの牢内に他の誰かがいた形跡が残っていたということぐらいか。


どちらにしてもワースド星に敵の拠点があったことは確かなので、継続して調査することになった。


「マサルさん、ワースド星に何か手掛かりがあるのは間違いなさそうね。


というか、手掛かりがワースド星しか無いんだけど。」


「それとユウキ君の失踪かな。


彼の失踪の原因からも何か掴めるかもね。」


「そうだな、その2面から当たってみるのが良いだろう。


ユウコ君は監査部と一緒にユウキ君の失踪を調査してくれたまえ。


マサル君はワースド星の調査を頼むよ。」


「「はい!」」


調査室でのミーティングを終えて俺とユウコさんはそれぞれに調査を開始したのだった。




ワースド星の上空に転移した俺は、そこから地表に向けて薄い魔力の膜を落とす。


膜は落ちながら徐々に拡がり、地表に辿り着く頃には直径20キロメートルほどになっていた。


その薄い魔力の膜に思念吸収の魔法陣を載せる。


やがて魔法陣からは地表が持つあらゆる思念が俺の元へと集まって来た。


ワースド星は濃い 魔素に覆われているため、比較的思念の残時間が長いらしく、思ったよりも思念が集まって来る。


何故思念を集めてるかって?


もちろんユウキの情報を集めるためさ。


彼が誘拐した異世界人の管理担当だとしたら、彼の活動の痕跡が残されているはず。


それを集めることで彼の行動を調べられないかと考えたんだ。


「ちょっと膨大過ぎるな。」


俺は久しぶりにタブレットを取り出す。


昔、カトウ運輸の路線を世界中に拡げる時にマリス様から頂いた何でも検索出来る便利なアイテムだ。


集まって来た思念を一旦魔石に溜め込み、それをタブレットにデータとして流し込む。


やがてタブレット上に地図が浮かび上がり、赤い点が幾つもついている。


濃いところや薄いところが点在しているが、この点がユウキの居た形跡なのだ。


濃いところ程数多く居た事になる。


当然アキラ君達を救出した場所は真っ赤に染まっていた。


次に赤い場所は、どうやら食品街のようだ。


おそらくここでアキラ君達の食料を調達していたのだろう。


赤い点はその辺りを中心に拡がって散らばっていたが、俺の目が一点で止まった。


赤い点が散らばる中でそこだけ全く赤い点が無かったのだ。


その範囲3メートル四方くらいか。


怪しいと睨んだ俺はそこへと向かった。




<<ユウコ視点>>


調査室を出たわたしは監査部に向かったわ。


ユウキが召喚された異世界『スマル』の情報を集めるために、スマル監視チームのところへよ。


もしユウキも誘拐されたとしたら、ナタリーさん達みたいな痕跡が残っているはずだしね。


スマル監視チームに着くと、既に連絡が行っていたみたいで、快く迎えてくれた。


資料室から該当しそうな映像を選び出して片っ端からチェック。


ここの資料って膨大な量の映像が保管されているから普通ならインデックスサーチを使うのよね。

頭に思い描いたらそのイメージで検索できる機能なんだけど、今回の場合、ナタリーさんの時みたいなイメージで検索したんだけど見つからなかったの。


だから、今は手当たり次第見ているって感じ。全く骨が折れるわ。




「うーーーん、それらしきものはありませんねー。」


「そうよね。これだけ探しても見つからないって!


ナタリーさんとは違う方法で誘拐されたのか、もしくは...うーーん判らないわね。」


いつの間にか来ていたアース監視チームのライクさんとラスク監視チームのセイラさんも一緒に探してくれている。


「もしさあ、誘拐されたんじゃなくて自主的にモーリス教授に加担したんだとしたら...いやもしもの話しだよ。」


「うん?ライクさん、もう一回言って。」


「あ、あくまで過程の話しだよ。もしユウキという召喚者がモーリス教授に自分の意志で加担したらとしたら、映像に残ってなくて当然だよね。」


そうか、その可能性もあるんだったわ。


「わたし一度スマルに行ってみるわ。皆さんありがとう。」


わたしはスマルのユウキが消息を絶ったというダンジョンに向かったの。



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