第365話【怪盗スペルチ団5】

<<マサル視点>>


弥生ちゃん達の件といい、アキラ君の件といい、悪意を持った何者かが、無限エネルギー思想の実現に向けて悪巧みしているのは間違い無い。


ただ、その規模から考えてかなり大きな組織が動いている可能性が高い。


大きな組織ほど末端から綻びが出るのは推理小説の定番だな。


先ずは末端を探してみるか。


「ユウコさん、今回の事件は大きな組織が絡んでそうですね。

こういった組織には必ず現金化する末端があるはずですから、俺はそちらを探してみますよ。」


「了解よマサルさん。じゃあ、わたしは監査部に行って何か証拠になるものが無いかもう一度当たってみるわね。」


「よろしく。」


俺達は二手に分かれて捜査を始めることになった。




「さてどっから手を付けていくかな。」


末端を見つけると言っても、どこから手を付けたらいいのか皆目見当がつかない。


とりあえず街にでも行って何か無いか探してみるか。


そう思い、エレベータで1階に向かう。


チーン!


「あらマサルさん、久しぶりねぇ。」


「マリス様、久しぶりって程でも無いですよ。」


「もお、相変わらず固いわねぇ。もう同僚になったんだから”マリスさん”でいいわよ。」


「ええ、マリス様。」


「だから、マリスさん。だってば。


ああそうだ。マサルさん、アキラ君のこと調べてる?」


「ええ。弥生ちゃん達のことも含めて。でも手掛かりが乏しくってどこから手を付けようか悩んでいたんですよ。」


「あら、マサルさんが悩むなんて珍しいわね。


そうだ、ちょっとした情報があるのよ。全然関係ないかもしれないけど、聞いてみる?」


「是非。」


「あのね、最近生命エネルギーカプセルっていうのが密かな人気なの。


生命エネルギーカプセルっていうのは、わたし達が異世界から回収している生命エネルギーをカプセルに収めたサプリメントみたいなものよ。」


「でもマリス様「さんよ!」、マリスさん、生命エネルギーって異世界管理局の専売品じゃなかったでしたっけ?」


「基本はそうよ。でも最近はマサルさん達のおかげでたくさん採れるようになったから、一部は市場に流しているの。

もちろん、販売ルートは厳密に管理されているわ。


値崩れしないように出荷調整もしているしね。


その生命エネルギーカプセルが、供給量を大きく上回るくらい売買されているみたいなの。


以前にの粗悪品を無許可販売していて摘発されたことがあったんだけど、今回は品質に問題があるような製品がまだ見つかってないのよ。


これって、問題よね。異世界管理局の管理から漏れて横流しされているか、あるいわ誰かが生命エネルギーを無許可で生成しているか。


それでね、情報っていうのはここからなのよ。


最近生命エネルギーカプセルを金持ち相手に手広く売りさばいている商会があるって情報なの。」


「どこですか、その商会って。」


「マスメデ通りにあるシベリス商会よ。でも気を付けてね。あそこってマフィアとも繋がりがあるっていう噂を聞いたから。」


「マリスさんありがとうございます。早速行ってみますね。」


「マサルさーん、気を付けてねーー。」


エレベータでマリス様と別れた俺はマスメデ通りに向けて走り出した。





<<ヤスハ視点>>


とんだドジを踏んじまった。


今度のターゲットであるシベリス商会を調査すべく、俺はいつものように経理係として商会内部に潜入した。


俺って結構、学もあるし、いろんな大手商会に潜入目的で入社し経理マンとして実績を積んでいるから、人材紹介に登録しておけばスカウトから引く手数多なんだよな。


今回もシベリス商会で経理がひとり辞めたということであっさり入社できることとなった。


えっ、そんな都合よく欠員が出来るのかって。


そうなるように細工するのも俺の腕の見せ所さ。


さて、商会内部に入ってみてまず驚いたのはマフィアの存在だ。


用心棒全てがマフィアの構成員で固められていた。


商会の中枢である経理部の事務所にも常に2~3名が目を光らせている。


新入りの俺はまだ取引帳簿を一部しか見せてもらえないため詳しくは分からないが、番頭のアシュレイが裏取引用の帳簿を管理しているようだ。


このアシュレイ、やけに目付きが鋭い。部屋を見張るマフィアの連中よりも風格というか凄みがある。


奴らのアシュレイに対する態度を見る限り、もしかするとアシュレイ自体がマフィアの幹部なのかもしれないな。


とすると、ここはマフィアの経営である可能性が高い。


これは危険すぎる。今回の仕事は中止した方が良さそうだ。


その日定時に退社した俺は、アジトへ向かった。


「うん?つけられているな!」


尾行の気配を感じた俺は、アジトへ向かわず、別方向へと歩き出した。


尾行を巻こうと遠回りしていると、目の前にアシュレイが現れた。


「ヤスハ君。会社を退社してからずいぶんと長い散歩だねえ。ちょっとわたしに付き合ってくれないかい。


君が申告していた住所だけど、どうも別の人が住んでるみたいだねえ。」


そういうと肩を抱かれる。


不味い、完全に逃げるタイミングを失ったみたいだ。


10分後、俺はシベリス商会本店の地下倉庫に監禁されたのだった。








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