第327話【スタンピード5】
<<シノブ視点>>
空を飛び回りながら魔法を連発する。
下では和也君が長い魔力刀を使って無双していて、魔物は大混乱している。
統制が取れずに右往左往しているのが多いから、上から的にするにはちょうどいい感じ。
もしあのスピードで全体的に突撃してきたら、たぶん魔法を当て切れていないと思う。
和也君が群れを乱してくれているから助かってるわ。
魔法も最初は力加減が分からなくて大変だったけど今はだいぶ慣れてきて上手く抑えられていると思う。
後ろの方に冒険者達だと思うけどたくさんいるから少しぐらい後ろに逃がしても大丈夫そうだけど、出来るだけ自分で抑えようと思う。
もうすぐ1時間くらい経つと思うんだけど、いっこうに魔物の群れが減る気配がない。
相変わらず和也君の魔力刀は傍若無人の蹂躙しまくっているけど、さすがに疲れてきたみたいだわ。
たまに空に上がって肩で息をしているもの。
その間わたしは巨大広域魔法で一気に吹っ飛ばすの。
魔力量の残量も心配だからあまり多くは打てないけど、効率的に和也君を支援するためには必要だと思うのよね。
和也君もこっち向いてサムズアップしてくれる。
そんな感じで殲滅を続けていると、だんだん魔物の数も減ってきたようで、砂煙が低くなってきた。
「あと少し」そう思っていたら、今度は遠くの空が真っ黒になってきた。
突然のことに驚いていると、だんだん黒い空がこちらに近づいてくる。
よく見るとそれは翼竜の群れだったの。
わたしと同じくらいの高さを無数の翼竜が飛んでいる。
さすがにこれには和也君も驚いたみたい。
慌ててわたしのところに飛んできた。
「しのぶさん、あれはまずいな。もう少し高く飛んで殲滅したいんだけど、もう魔力が少ない。
特大魔法で殲滅してから、一旦下がろう。
さすがにあいつらも散り散りになるだろうから、冒険者達で何とか持ちこたえるだろう。」
和也君はそう言うと長い呪文を唱えだす。
そして溜めに溜めた魔力を一気に吐き出すと、目に見える範囲全てが火の海に変わった。
「さあ、後ろに下がってギルマスに頼みに行こう。」
そう言って和也君が後ろに引こうとすると未だ高く上がる炎の海から魔物が整然と出てきたのだ。
「まずいな。まだリーダーが倒れていなかったか。さてどうするか。」
和也君も打つ手が無くなったみたい。
空からも地面からも魔物が溢れてくる。
万事窮す、そう思った時、ひとりの男性が突然現れたわ。
「加藤先生!」
男性を見た和也君が声を上げる。
加藤先生と呼ばれたその男性は、こちらをニコッと見て巨大魔法を次々と出していく。
一時的に魔物が減ったことを確認すると彼は一気に魔物の群れに飛び込んでいったの。
やがて、整然としていた魔物の群れは半分に割れていき、ひときわ固まっていたところで大爆発を起こしたわ。
その爆発を合図にそれまで整然としていた魔物が右往左往するようになったの。
ただ、今度は拡がりすぎて魔法でも殲滅できないくらいになっていたの。
そしてそれはいくつかの街に向かっていった。
どうするの!
そう思った時、加藤先生はわたしのところに来て、「君は空間魔法の能力を持っているんだそうだね。」って言うの。
わたしが頷くと、「じゃあ瞬間移動して、収納魔法で魔物を全て収納していって。大火力を使うとそろそろ街に被害が出そうだからね。」って言ったの。
あっそうか、その手があったんだ。
収納魔法で魔物を消していくのはラノベの定番じゃない。
やだわたしったら忘れてたわ。
わたしが頷くと彼はニコッと笑みを見せて自分は反対側に瞬間移動して次々と魔物を消していく。
わたしも見とれている場合じゃないわ。
彼の真似をしてあっちこっちに移動しながら街に近づく魔物を次々と収納していったの。
最後の魔物の群れを収納した時、隣には加藤先生と和也君がいた。
「しのぶさんだっけ、よく頑張ったね。」
加藤先生が褒めてくれた。
「加藤先生、ありがとうございました。おかげで助かりました。」
「和也君、もう少しだったね。スタンピードの場合は落ち着いて群れのリーダーをしっかり見極めないとね。
最近は魔物も進化していてダミーのリーダーを用意する奴らもいるんだよ。」
「さすがは加藤先生です。やっぱり凄いです。」
和也君がニコニコしながら加藤先生と楽しそうに話していた。
「あのー和也君?」
「ごめんごめん、しのぶさんを置いていたね。こちら異世界管理局の転移者向けセミナー講師の加藤優先生。
僕達転移者のカリスマなんだよ。」
「しのぶさん、本当によく頑張ったね。ポーラ様からSOSが入った時にはどうなるかと思ったけど、君がいて良かった。
和也君だけだと大変なことになってたかもね。」
カリスマに褒められてちょっと照れてしまうけど、スタンピードが収まって本当に良かったわ。
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