第283話【教祖を捕まえろ】
<<ミラベスタ視点>>
マサル殿が、『アラハルネ旧神殿』の廃墟跡の中央辺りを指差して、ここを調べましょうと言い出した。
こんなところ調べて何があるというのか。
マサル殿が率先して瓦礫を避け始めたので、一緒に瓦礫を避ける。
あらかた瓦礫を避けたところで、マサル殿がある一点に魔力を注ぎ出した。
すると、1メートル四方くらいが光を放ち、その部分が持ち上がった。
その下に階段が続いていた。
「マサル殿、これは!」
「恐らく教祖はこの下に居ると思います。」
「しかし、この辺りも探索魔法の範疇に入っていて、調べたはずですが?」
「恐らく近すぎて、誤差の範囲になったのではないでしょうか。」
たしかにこんな近ければ、あり得ることだ。
まさかこんな近くにいるとは思わないからな。
「さあ、行きましょうか。」
マサル殿が先頭に立って、地下を降りて行く。
50メートル近く下に降りると、扉が見えた。
扉を開けて中を見ると、教祖のシラカハヤの姿もあった。
取り調べ室で、シラカハヤを尋問する。
シラカハヤは瞑目するように、静かにしたまま、黙秘を続けていた。
俺は正直焦っていた。
いくらアジトを調べても、証拠が出てこないのだ。
48時間の拘留期間もあと数時間で終わってしまう。
様々な貴族がシラカハヤを擁護にやって来たり、圧力をかけて解放しようとしてくる。
もうダメかと諦めかけた時、マサル殿が部屋に入ってきた。
「ミラベスタさん、見つかりましたよ。
あの教祖がいた部屋の下に隠し部屋があったのですが、その部屋自体が、魔方陣でした。
白い壁に同じ材質の壁材で、魔方陣が描かれており、隠蔽魔法が付与されていました。」
シラカハヤの顔を見ると、さっきまでの自信満々の余裕は全く無くなり、諦めが漂っていた。
<<クラシケラ視点>>
あれほど困難を極めた事件は、呆気ないほどの結末だった。
突然やって来たマサルが隊長と話しをしていたと思うと、突然『アラハルネ旧神殿』に行くと言い出した。
マサルが『アラハルネ旧神殿』の秘密の通路を開くと、そこにシラカハヤがいた。
隊長がシラカハヤの尋問をしている最中、マサルはシラカハヤが隠れていた部屋を探し続けていた。
やがてシラカハヤの拘束期限48時間に達しようとした時、ついにマサルは証拠の魔方陣を見つけたんだ。
それをシラカハヤに話すと、シラカハヤは全てを悟ったように、ペラペラと話し始めた。
自分の子供を教団に差し出す者、教祖の下僕として生涯を捧げたいと考える者、自身が奴隷となっても教団に寄進したいと願う者、こういった熱狂的な信者が現れると同時に、これを悪用して他国に奴隷として売り飛ばし、利益をむさぼろうとする貴族が現れた事
そういった貴族に唆されて教団内部の腐敗が進み、それをネタに一部の悪徳貴族に脅され始めた事
信者だけでは数が足りず、誘拐や盗賊による襲撃等に手を染め始めた事
国の監視が強化され、人を集めにくくなった事
人身売買がを摘発され、国内での活動が難しくなった事
摘発後も貴族の脅しは続き、何とかしなければと考えていた時、偶然、古文書からリモート召喚魔方陣が見つかり、ラスク星から調達しようと考え付いた事。
シラカハヤは、ここまでを一気に吐き出してしまうと、その後、自分達を脅していた貴族の名前も洗いざらい話した。
『サーガの光』が起こした大規模な人身売買騒動はこうして幕を閉じることとなった。
シラカハヤから名前の出た貴族は10数家に及び、その中には王族に名を連ねるものまで含まれていた。
あまりにも王家を揺るがしかねない規模であったため、一部下級貴族の処罰のみ庶民には公開され、それ以外については秘密裡に処理されることになった。
俺も処罰対象の全ての貴族名を把握していないし、知りたくもない。
どう処理されたのかも、どうでもいい話だ。
ただ、大貴族の中で一気に世代交代が進んだことで、今後こういった不幸な事件が起きないことを祈るだけだ。
<<マサル視点>>
シラカハヤの取り調べが進み事件の全貌が明らかになってきたので、俺はミラベスタさん達に後を託してマサル共和国に戻った。
国際連合事務局にいつもの主要メンバーが集まり、事の顛末を話す。
「信じられないことばかりだが、マサル殿が言うのだから真実なんだろうな。」
「どちらにしても、とりあえずの危機は去ったということか。」
「マサルさんご苦労様でした。あなたが居なければどうなったことか。」
ネクター王、ガード王、レイン皇帝からねぎらいの言葉を頂き、1週間ぶりに自宅に帰った。
「「「マサルさん(お父様)お疲れさまでした。」」」
「僕達も今度そのムサシ号に乗せて下さいね。」
「わたしも宇宙とやらを見てみたいわ。」
「そうだね、うまく動くことも確認できたし、今度は皆んなで宇宙旅行でもしようか。」
「「「賛成!!」」」
何故か声の中に侍女頭のメアリが含まれていた気がするが、気のせいだろうか。
なにわともあれ、久しぶりの自宅を堪能することにしよう。
「よし、ランス。風呂にでも入るか。」
「うん。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます