第282話【元凶の教祖を探せ2】
<<ミラベスタ王都警備隊隊長視点>>
新興宗教『サーガの光』が違法な人身売買をしているとの情報を得て、我等王都警備隊が調査に乗り出したのはちょうど2年前のことだった。
スラムの孤児救済を名目に、数多くの孤児達を集めて、他国に売り払って荒稼ぎしていたのだ。
スリで捕まえた孤児の証言から始まった、この大掛かりな人身売買事件は、当時かなりの大きな事件となったが、複数の大物貴族の介入でうやむやとなり、結局教団の支部長クラスの尻尾切りで幕を閉じた。
それからしばらくは教団もなりを潜めていたのだが、つい1ヶ月ほど前に、宇宙観測局から王都警備隊に『不審な魔力が王都から宇宙に向けて発信されている』との連絡が入ったのだ。
魔力の送信先を確認すると、そこは我が人類の祖国と呼ばれているマルス星であった。
残念ながら発信源を突き止めることは出来なかったが、その目的を調査すべく、隊員のクラシケラをラスク星に向かわせたのだ。
戻って来たクラシケラに状況を確認すると、リモート召喚魔方陣を起動させて、大量の魔物を召喚していたと言う。
近くに集落があったため、クラシケラの判断で、魔獣キメラを召喚し、未然に被害を防いだらしい。
その後も何度かそんなことがあり、こちらでも調査をしていたところ、あの『サーガの光』がマルス星を植民地化して、向こうの人間を奴隷として人身売買しようとする企みを突き止めたのだ。
ただ、魔力発信源は、強力な隠蔽魔法で隠されており、未だ見つかっていない。
そんな時、いつものようにラスク星に行っていたクラシケラが、1人の現地人とコンタクトを取ったと言うのだ。
その現地人の名はマサル。
彼は我等からみたら旧態以前の文明しか持たないラスク星の人類とは違い、非常に高い教養と魔力を持っているとのことだった。
クラシケラはマサルに興味を持ち、彼に請われるままに、我が星から発信されている魔力の波長と、教団の情報を与えたという。
果たして、クラシケラが次にラスク星に出動した時には、ほぼ時を同じくして、自らの力で魔方陣を感知、発見したマサルと現場で出会ったという。
海底でキメラの召喚が出来ないクラシケラの代わりに海に入ったマサルは、あっという間に魔物を全て片付けて、魔方陣を破壊したらしい。
先日クラシケラからそれらの報告を受け、俺もそのマサルに興味を持ったのだ。
そして今日、クラシケラからマサルがこの星に来ているとの連絡を受けて、俺はクラシケラ達がいる食堂にやって来たのだ。
「そこからは俺が話そう。」
「ミラベスタ隊長。」
「やあ、君がマサル殿だね。クラシケラから話しは聞いているよ。
君達の星はここと比べて文明がかなり遅れているから、君の話しを聞いて興味を持っていたんだ。会えてうれしいよ。
しかも君がシンゲン様と同じ地球からの転移者だったはね。」
マサルは、普通の壮年男性だった。
「マサル、こちらは王都警備隊長のミラベスタ様だ。」
「初めまして、マサルです。
一応、マサル共和国の代表をしています。」
「なんと、これは失礼しました。
国王陛下であらせられましたか。」
「いえいえ、国の建国はしましたが、共和制を引いて、国の運営は議会に任せておりますから、国王ではないですよ。
ただのマサルで結構です。」
「では、わたしのこともミラベスタとお呼び下さい。」
「ミラベスタさん、わたしの星でも、ようやく魔物の転移魔方陣に対する対策が終わりました。
それでクラシケラさんから聞きました、元凶ですか?、それを捜しに来ました。」
「迷惑をかけて、本当に申し訳ないです。」
「いえいえ、ミラベスタさん達の責任じゃないですからね。
ただ脅威がある以上、早く取り除いておく必要がありますからね。
皆さんのお邪魔にならないように、先に調整しておきたいと思って参上したわけです。」
「お気遣いいたみ入ります。」
「教祖の名前は分かりますか?」
「教団の名前が『サーガの光』、教祖の名前はシラカハヤです。」
「『サーガの光』のシラカハヤですね。」
マサル、いやマサル殿が何か呟きながら、うわ目使いになにかを見ている。
「なるほど、この地域に『アラハルネ旧神殿』という場所がありますが?」
「それでしたら、ここから10分程度の場所にある、遺跡ですが。」
「そこにシラカハヤがいると、思われます。」
「しかし、あそこには何も…」
「一度調べてみても良いですか?」
「それは特に問題ありませんが。
わたしが案内しましょう。」
俺は、マサル殿を連れて、食堂を出て『アラハルネ旧神殿』に向かった。
<<マサル視点>>
タブレットで教祖を検索すると、『アラハルネ旧神殿』と出てきた。
場所を聞くと、すぐ近くのようだ。
ミラベスタさんが案内してくれるようなので、ついて行く。
食堂を出て、しばらく歩くと壊れた石の構造物が散らばる遺跡跡に到着した。
「マサル殿、ここが、『アルハルネ旧神殿』です。」
俺は遺跡の中を丁寧に調べていく。
魔力を薄く伸ばして、波紋のように魔力を流していく。
そうすると、1ヶ所魔力の波紋に歪みが見つかった。
俺は、ミラベスタ殿に向かって話した。
「ここを調べましょうか。」
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