第278話【謎の青年と新たな敵】
<<マサル視点>>
「そしてその傍には、魔方陣を起動したであろうひとりの青年が立っていました。」
俺は、腰に着いているポーチから水筒を取り出し水を口に含んだ。
「その青年は、わたしの存在に気付いていたようで、まだ空中に浮かんでいるわたしを手招きしたいました。
わたしはそれに応えて、彼の近くに降り立ちました。
『この世界にも、あんたのような魔術師が居たんだね。
この星はまだ未発達だからって聞いていたんだけどね。
あんたみたいな魔術師が居るんだったら、わざわざ来なくても良かったかな?』
『この星?
あなたはこの星の人では無いのですか?』
『そうだよ。僕の名はクラシケラ。ここから10光年くらい離れた星からやって来たんだ。
魔獣達を殲滅するためにね。
この星はね、昔僕達の先祖が住んで居たんだ。
もう3000年も前のことだよ。
最近になって、僕達の星のとある国で面倒な新興宗教が活動しだしてね。
その宗教の教祖が過激で、この星を植民地にしようと魔物を送りつけているんだよね。
僕達は、それを止めさせようとしてるんだけど、強固な隠ぺい魔法がかけられていて、彼らの居場所を特定出来ないんだ。
でも、この星に魔物が召喚される時に大量の魔力が放出されるから、こっちで魔方陣が動くたびに僕が来て、キメラで処分しているんだよね。』
と、わたしと青年はそんな会話をしたんです。
青年との会話はとても信じがたいものでしたが、今起きている事象については充分辻褄が合っていました。」
俺は言葉を一旦切って、ライズさん達の方を見た。
やっぱり固まっているようだ。
そんな気がしたんだよ。
「マサル様、申し訳ありません。
マサル様が魔物を結界を使って閉じ込めた。
その後キメラが現れて魔物を食い尽くした。
この辺りまでは理解出来ていると思います。
ただ、その先があまりにもわたしの常識から離れていて……
なぁ、ライズ。」
「そうですね。わたしもよく理解出来なかったです。
申し訳ありません。」
マライさんに続いて、ライズさんにも謝られてしまった。
「とにかく、数日は大丈夫だろうということだったので、わたしは一足先に、国際連合に報告に行ってきます。
ムラーク子爵には、おふたりから、本日の晩餐会に出られないこと、謝っておいて頂けますか。
じゃあ、お疲れ様でした。」
「「マサル様~、そんな無体な~。」」
飛び上がる時にふたりの悲鳴が聞こえたような気がするが、とりあえず聞こえなかったことにしておこう。
<<国際連合事務局長アニス視点>>
夕刻、寮に戻ろうと部屋を出たところで、マサル様にお会いした。
「アニスさん、お帰りのところでしたか。
申し訳ありませんが、少しお時間を頂けますでしょうか?」
マサル様は、モーグル王国へ魔獣の調査に行っていたはず。
こんな時間に急いで戻って来られるということは、何かあったに違いない。
「大丈夫です。もう一度鍵を開けますね。」
「もしよろしければ、わたしの自宅で晩飯でも食べながらで、どうでしょう?
アニスさんもお腹空いていますよね。
わたしもペコペコなんですよ。」
「えっ、よろしいのでしょうか。
そうですね。ありがとうございます。
喜んで、お呼ばれ致します。」
やったあ!マサル様のお屋敷の料理って、各国の王族が競って行きたがるくらい美味しいって有名だよね。
ラッキー。
「では転移しましょう。」
わたしはマサル様に腰を抱かれて少し夢うつつになりながら、お屋敷に到着したのだった。
「なんだって、それじゃあ、魔物のスタンピードがどこで起こるのか全く分からないじゃないか!」
マサル様のお屋敷の書斎で、ハローマ王国のガード王が声を荒立てている。
「まあまあ、ガードさん、興奮しても、しようがありませんよ。
それよりも冷静に対策を考えないと。
ねぇ、ネクターさん。」
「そうだな、ガード、気持ちは分かるが、レインの言う通りだ。
ところで、マサル殿。
何か案はあるのだろうか?」
マサル様のお屋敷に到着して、食堂に入ったら、いつもの3王が居られた。
手早く食事が終わり、書斎に移動すると、マサル様からモーグル王国での調査結果について話しが始まった。
残念ながら、大変美味しいはずの食事なのに、味が分からなかったのは、どうしてだろうか。
「まず、魔物を召喚するための魔方陣がどこに出現するかですが、これには人工衛星を使おうと思います。
今回、砂漠一帯の魔力を調べるために、小型の人工衛星を使いましたが、大型で高度10キロメートル付近まで打ち上げる人工衛星を1000機ほど作って、飛ばそうと思います。
クラシケラから、魔力波長を教えてもらったので、ある程度正確に全世界をカバーできると思います。」
「よく分からんが、マサル殿が言うのであれば、間違いないだろう。
よし、アニス君。幹事国決議で国際連合として費用と労力を負担することとしよう。
いいね。」
ネクター王の指示で、マサル様の言う人工衛星なるものを打ち上げることを、国際連合として全面的に支援することとなったのだ。
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