第266話 【レントゲン2】
<<ランス視点>
僕は冒険者ギルドに着くと、ギルド長のグリルさんにできたばかりの『レントゲン』を見せました。
「ランス様、それは?
えっ、怪我の判定をするための魔道具!!
是非テストさせて下さい。 おーい、『チーム竜の涙』こっちにマリブを連れてきてくれ!」
大男がひとりの若い男の人を引きずって来る。
その横には心配そうな顔をした若い女の人がいた。
「マリブ、いい加減にせんか!
ギルド長、連れて来ました。」
「ヤナセ、悪かったな。
ランス様、こいつマリブっていうんですが、今日訓練で崖から落ちたんですよ。
本人は大丈夫だって言うんですけどね、顔色を見る限り絶対ひどい怪我のはずなんですが。」
「ギルド長、俺は大丈夫ですって。イテテ、こんなの寝てれば治りますよ。」
「お前、死んじまっても知らねえぞ。ギルド長命令だ!ランス様に見てもらえ!」
「じゃあ、マリブさん。ここに寝て下さいね。」
僕は板の上に寝転んだマリブさんの上に魔道具をかざす。
頭から順番に足の先まで順に全身を映していく。
「頭は大丈夫。うん?お腹の骨が3本折れていて、血がたくさん溜まっているところがありますね。
これは血を止めておかないと、死んでしまうと思います。」
僕はマリブさんの身体で異常のあった個所を写真機に写して皆んなに見せた。
「ここが骨の折れているところです。それとこの黒くなっているところが血の溜まっているところです。」
僕の説明にその場にいる人達が真剣な顔で見ている。
「今から魔法を使ってマリブさんを治療します。その後もう一度撮影してお見せしますので、比べてみて下さい。」
「ヒール!」
僕はマリブさんに治療魔法をかけて、骨折と内臓の破損を治療した。
「いっ、痛みがとれた?」
「今マリブさんの治療を終えました。もう一度『レントゲン』を撮りますね。」
「こ、これは?」
「これがマリブさんの正常な体の状態です。『レントゲン』を撮ったら怪我の状態が一目でわかるんです。
この『レントゲン』を使えば、病院に通うかどうかの判定もできますし、この写真を見れば病院でも迅速な対応が出来るようになると思います。」
「「「おおっーーーーー」」」
「これは、lこれは素晴らしい!!
是非世界中の冒険者ギルドに設置させて頂きたい。
是非!!」
「マサル様、『レントゲン』の早急な設置ありがとうございました。
おかげさまで、若い層の帰還後の死亡率が大幅に低減できただけでなく、無理して依頼を受ける者が減ったことで、依頼中の死亡率や依頼の達成率も大幅にアップしました。
本当に素晴らしい発明です。」
今日はギルド長のグリルさんがお父様に『レントゲン』導入後の成果について報告に来ています。
『レントゲン』の導入とその活用方法の研究、病院へのレクチャーは、シルビア先生とイリヤが頑張ってくれたみたいです。
これまでは、病院に行っても発見できず亡くなっていた方も多くいたのですが、今では治療すべきところが『レントゲン』により明確になったので、早く適切な治療を実施できるようになり、その分病院でも対応可能な人員を的確に割り当てられるようになり、効率が良くなったのです。
また、これまでは魔法による治療だけで終わらせていたので、怪我をした本人も怪我の具合をよく理解していませんでした。
今回『レントゲン』で怪我の詳細が分かるようになり、冒険者側でも装備の充実等の怪我予防措置を採る者が増えてきたとギルドの受付のお姉さんからも聞いています。
今冒険者ギルドでは、『レントゲン』の専門家を作ろうとしているみたいです。
『レントゲン』を扱うのに魔力が必要ないため、引退した経験豊富な冒険者に『レントゲン』による診察技術を教えて、再雇用するようです。
経験豊富な冒険者に『レントゲン』の画像を見せたところ、怪我をした時の状況と判断して、その冒険者の欠点が分かり、それに対する指導が出来たらしいんです。
今後は経験豊富な冒険者に怪我の判断をさせ、怪我をした時の状況を聞き取りさせることで、怪我をした冒険者の
指導を行うことを目指しているようですね。
病院でも『レントゲン』を積極的に導入し始めました。
怪我だけでなく、内臓の疾患についてもある程度分かるようになるので、治癒魔法を使えない人でも勉強次第でお医者様に出来るのですから。
今、僕は大忙しです。
『レントゲン』の利用が広まるのは良いのですが、作れるのは今のところ僕とお父様のみです。
頑張っても1日に作れるのはせいぜい3台程度で、全く追いつきません。
とりあえず特許は取れたので、職人ギルドに製造をお願いしているところです。
今も職人ギルドから派遣されてきた魔道具職人さんに作り方を説明しています。
「いやあ、ランス様。勉強になります。こんな加工の仕方があるのですね。
これは、あの魔道具にも応用できますぜ。」
とりあえず、魔道具職人さんの頑張りに期待したいと思います。
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