第219話 【ランスの特訓1】
<<ランス視点>>
「ランス様、ダンジョン攻略にお付き合い頂いていますが、正直なところ、どうでしょうが?
お恥ずかしい話しですが、今のギルド所属の冒険者達では、これ以上の攻略は難しいと思っています。
全体的な底上げが必要なのです。
そこで恥を忍んでお願いしたいのですが、魔法を教えて頂けないでしょうか?」
グリルさんから冒険者の皆さんに教えて欲しいって頼まれちゃった。
教えるって言っても、僕も自己流なんだよねー。
「グリルさん、分かりました。
でも僕も自己流なので、教えられるか分かりませんよ。」
「ありがとうございます。
魔法を使える者を集めますので、何かコツだけでも掴んでもらうようにしたいんです。
ちょっと待って下さいね。
今呼んてきますから。」
グリルさんは急いで部屋を出て行っちゃった。
グリルさんが出て行ってすぐに受付のお姉さんが、お菓子を持って来てくれた。
昨日イリヤと行った店のお菓子だ。
美味しいって評判だから、楽しみにしていたのに、昨日は遅かったから売り切れていたんだよね。
お菓子を食べながら待っていると、グリルさんが10人ほどの冒険者を連れて戻ってきたんだ。
皆んなで練習場に移動する。
「ではランス様、お願いします。」
「「「お願いしまーす。」」」
「この間からダンジョンの中で見ていて思ったことを話しますね。
皆さんは、魔法を使う時に何を考えていますか?」
僕は1番魔法の威力が弱かったお姉さんを指さした。
「えーと、詠唱ですかね。
間違っちゃうと魔法が発動しないから、間違わないように頭の中で暗唱しながら魔法を使っています。」
「他の人はどうですか?
同じだという人は、手を挙げて下さい。」
ほとんどの手が挙がった。
おかしいなぁ。
お父様やパターソン先生から魔法を教えてもらったんだけど、詠唱については、何も言って無かったんだよね。
「魔法って詠唱しないと発動しないのですか?」
「はい、そう教えて頂きました。」
「あのぉ、僕は詠唱したことないですが。」
「「「………ええっー。」」」
皆さん驚いていることに、逆に驚いた。
「詠唱なんて無くても魔法は発動しますよ。
イメージが大切なんです。
お姉さん、手にこの棒を持って下さい。」
先程質問したお姉さんに小さな木の棒を渡す。
「その棒の先に火がついている様子をイメージして下さい。
出来れば形や色大きさも精緻に。
そしてイメージが出来たら、次に棒の先に火が着くまでのイメージを詳細に思い描いて下さい。」
お姉さんは一生懸命にイメージしている。
数秒後、棒の先に火が着いた。
「「「おおー。」」」
皆んな驚いている。
「今火が着く時、何か考えましたか?」
「はい、火が着くイメージをしました。
なんていうか、棒の先端から煙が出て、そこに種火が着き、火が徐々に大きくなるイメージですね。」
「詠唱無しでも魔法は発動しましたよね。
大事なのはイメージだと思うんです。
お姉さん、この棒に先程の火をもう一度着けてもらえますか。」
先程よりも少し大きな僕をお姉さんに渡す。
先程のイメージが残っていたのか、今度はすぐに火が着いた。
「じゃあ、その火を少しだけ大きくして下さい。」
お姉さんは火を大きくしようと頑張るがなかなか上手くいかない。
少し大きくなっても元に戻ったり、大きくなり過ぎたりしてる。
「火を燃やす時には酸素と言うものがいるって、お父様が言っていました。
酸素って言うのは見えないんだけど、僕達人間がいつも吸っているもので、それが無いと生きていけないそうです。
だから人が生きていられる場所であれば、どこでもあるそうです。
お姉さん、周りにある風を集めて少しずつ火に近づけるイメージをしてみて下さい。」
お姉さんは困ったような顔をしている。
何度も自分で息を吸って、風の流れをイメージしているようだ。
納得出来たのか、火に向かって数秒後、火は少しずつ大きくなっていった。
「「「おおー。」」」
周りがどよめいた。
「わたしも出来たー!」
後ろの方から声がした。
僕の説明に合わせて、自分でもやってみたみたい。
「皆さんもやってみて下さい。
上手くいかない人は、出来た人から、どんな風にイメージしたのかを聞いてみて下さいね。」
ギルドの練習場では、冒険者達が用意されたたくさんの棒を持って真剣に火をつけようとして頑張っていた。
「出来たわ。」
「わたしも。」
「俺なんてこんなに早く着けたぜ。」
「俺は火の強弱はお手の物だ。」
たくさんの喜んでる声や、イメージの仕方を習っている声が聞こえてくる。
でも、いくら頑張っても出来ない人もいた。
元々魔力が無いみたい。
そういう人もいるって、本で読んだことがある。
「魔力が無くても魔素があれば、魔法は使えるみたいです。
だって魔道具があるでしょ。
火を着けられなかった人は、魔素を集めるイメージをしてから、火を着けるイメージして下さい。」
僕がそう言うと、火が着かなかった人は一生懸命に挑戦していた。
やがて、その中から何人かは火を着けることが出来た。
さすがに全員に出来た訳では無いが、皆さん喜んでくれたみたいで良かったよ。
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