第208話【農地造成】
<<ランス視点>>
街の移住者がひと段落したので、農地を作ることになった。
お父様の計画では、街は20,000人の人口を想定して作ったんだって。
まだ半分くらいしか移住していないから、当面は大丈夫だろうと思うんだ。
それに、いつまでも食糧を輸入に頼っていられないからね。
農地は、前と同じく山を崩して作ることにした。ただ水を流さなきゃいけないから、全部は崩さない。
中腹から段々になるように削っていくんだ。
1段当たり大体2キロメートル四方かな。
1段あれば3万人くらいの米は取れるらしい。
2毛作で麦も作るみたい。
当面は、半分づつしか使わないみたいだけどね。
それを3段作る。
1番上は米用の田んぼ。
お父様は、米をこの国の主食にしたいみたい。
備蓄にも優れているし、他国でも人気があるから、余ったら輸出も出来るからって。
2段目と1番下は、住居や畑の区画。
果樹園もここに造る。
もし場所が足りなくなったら、同じ要領で違う山を崩して造るんだ。
お父様と僕で、段々までは造成した。
今回削った土砂は、島の反対側の崖に落として、小さな砂浜にしている。
当面こちら側には来ないだろうけど、最終的には、リゾート?にしたいってお父様が言っていたよ。
リゾートってなんだろう?
段々になったら、ローバー先生が来てくれた。
山の調査を行い、それに合わせて、水の引き方と田んぼや住居区画等の設計を行う。
僕もローバー先生に教えてもらいながら、一緒にやらせてもらったんだ。
まずは水源の調査から。
湧水の場所をいくつか見つけて、そこにため池を作る。
そしてため池に作った水門から田んぼや住居区画に水路を引いた。
もちろん土魔法を使ったから、あっという間に出来上がったよ。
ローバー先生が、出来た水路を見て考え込んでいる。
「先生、何か問題でもありましたか?」
「ああランス君、大雨と日照りの時のことを考えていたんだ。
大雨に関しては山の反対側に大きな穴を掘っておいて、増水分をそちらに流せばなんとかなりそうだか、日照りの時にどうしたものかと思ってね。」
「じゃあ、周りの山にもため池をたくさん作っておいて、日照りで水が足りなくなったら、その山のため池と、この山のため池を転移魔方陣で繋いじゃいましょうか。」
お父様が、街を開発する時に、転移魔方陣を使って、山に作ったため池から上水施設に水を引き込んでいたのを思い出したんだよね。
「ふう、やっぱり君達親子には常識が通じないか。
いや、何事にも最初は必ずあるものだ。
今常識が…と言っていること自体が古い考えに囚われているのかもしれんな。
よし、その考えでいこう。」
さて、大まかに区画が決まったところで、住居の建設をしなきゃ。
もうすぐ第4陣がやって来るからね。
それまでに住む家は必要だもの。
住居区画に作る住居はテラスハウス風にした。
3階建てで1階が作業スペースとして土間になっている感じ。
お母様の意見を取り入れたんだよ。
1棟に10 軒で、計10 0棟。
とりあえず今回の移住者が入っても、少し余るくらいの件数にした。
もちろん、住居区画と街は転移門で繋ぐ。
こうしたら距離なんて関係ないから、農地側に住む人に不利益は無いと思うんだ。
お父様やお母様も見学に来てくれて、出来栄えを褒めてくれたよ。
住居を用意して、周りを整地していると、第4陣の皆さんがやって来た。
随行して来たスポックさんが、こちらにやって来た。
「ランス君、ご苦労様。
こちらの皆さんが、第4陣で来られた方達だよ。
皆さん、こちらがマサル様とリザベート様の御子息のランス君です。
この辺りの整地から家を建てるまで、ランス君が頑張ってくれたんですよ。」
「皆さん初めまして、ランスと言います。
これから大変だと思いますが、しっかりサポートさせて頂きますので、よろしくお願い致します。」
「「「ははあー。もったい無いお言葉。ランス様~、ランス様~」」」
「はあー、また始まったよ。
ランス君、気にしなくていいからね。
ここに来るまでにマサル様やリザベート様にもこんな感じで、大変だったんだよ。」
僕の前で土下座して平伏する皆さんを見て、スポックさんがため息をついていた。
それから30 分程土下座は続き、やっと頭を上げてくれた皆さんを連れて、田んぼや住居区画を案内した。
ひと通り案内を終え、皆さんはそれぞれ割り当てられた家に入っていった。
「ランス様、ちょっとよろしいでしょうか?」
移住者の何人かが、声を掛けてきた。
「はい、何かありましたか?」
僕は振り返って聞く。
あっこの人知ってる。学校で特別授業してくれたジョージさんだ。
「いや問題じゃないんです。
俺はジョージって言います。
俺達、いろんな国で土木工事を中心に様々な改革作業を手掛けてきたんですけどね、今回こちらに永住したいと思って移住してきたんです。
それで、ここの工事も手伝わせてもらえればと思って声を掛けさせてもらいました。」
「ジョージってあの『世界一の敏腕現場監督』のジョージ様ですか?」
たまたま来ていたカトウ運輸の職員が、驚きの声を上げる。
「そんなことを言われたこともありますが、本当にやめて下さいね。
そんな大そうなことは、してないんですから。」
「ジョージさん、ご無沙汰しています。
特別授業の時はお世話になりました。
移住者の中に居られたんですか?」
「ええ、覚えていて頂いて光栄です。
一応、ほとんどの国で改革がひと段落したんで、この国でお世話になろうかと。」
「それは僕も嬉しいです。
そうだ、お母様がお会いしたがっていましたから。
もう、お母様にお会いになられましたか?」
「ええ、着いてすぐに。」
「ランス様、ジョージ様達のチームは10数年にわたって、世界各地の工事現場を渡り歩いて、改革を推進して来られた最強チームですよ。
わたしの故郷も、ジョージ様のチームに入って頂き、急速に発展出来たのですから。
あの時は本当にありがとうございました。」
ジョージさん達、とっても恥ずかしそうです。
「で、ランス様、手伝ってもよろしいでしょうか?」
「是非お願いします。
一緒に素晴らしい農地にして行きましょう。
いろいろ教えて下さいね。」
こうして、ジョージさん達チームの加勢もあって、農地作りは順調に進んでいます。
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