第198話【共和制】

<<リザベート視点>>

次々に官僚の方達が入って来られます。


中にはお目に掛かった方もちらほらで、和やかな雰囲気の中でご挨拶させて頂きました。


いきなり跪く方や緊張で顔が真っ青な方もおられたのには、少し困りましたけれど、時間が解決してくれると思います。


「皆さん、お疲れ様でした。

ヘンリー様からお聞きになっておられると思いますが、ここがマサル共和国です。


これから皆さんの宿舎までご案内します。


さあ、まだ建設途中ですが、街をご案内がてら歩いて行きましょう。」


マサルさんが、皆さんに挨拶し宿舎まで案内します。


わたしやお義母様もエスコート役に徹しましょう。


「リザベート様、トカーイ帝国から参りました、マリルと申します。


以前、リザベート様が帝国カレッジで講演頂いた時、わたしは学生として、あの場で聴講させて頂いておりました。


あの時から、わたしの目標はリザベート様になりました。


卒業と共に、わたしも官僚として行政改革に携わってきましたが、今回このお話しを頂き、取るものも取らず真っ先に立候補させて頂きました。


リザベート様やマサル様とご一緒に働けることが何よりも光栄で嬉しいです。」


わたしの講演で、こんなにも影響を受けて頑張っている方を見ると本当に嬉しくなります。


「マリルさん、ありがとう。

ここでも頑張ってね。」


「ううっ、あ、ありがとうございます。

ううっ、リザベート様にお言葉を掛けて頂けるなんて。グスッ。」


「そんな泣かないで。」


泣いてしまったマリルさんの肩を優しく抱いてあげたら、余計に泣かれてしまいました。


「リズちゃん、泣かせちゃダメじゃない。」


お義母様の肩が細かく震えています。


「ユーリスタ様、お目に掛かりとうございました。


わたくし、ハローマ王国から参りました、ジャルと申します。


わたくし、王立カレッジの卒業生でして、ユーリスタ様の論文を拝読させて頂き、わたくしの天命を知ることになりました。


い、一度ユーリスタ様のご尊顔を拝見致したく、願っておりましたが、こんな機会をお与え頂けるとは、わ、わたくし、わたくし今日ほど神に感謝したことはございません。ヴビィー。グスッ。」


頭の少し寂しくなったおじさまに泣き付かれお義母様困っています。


他人のことを笑うからですよ。



そんなことをしているうちに、カトウ運輸の本社前を過ぎて、庁舎の外門をくぐりました。


皆さん中に入って驚いておられます。


時計台からドーム?でしたっけ

の前を抜けて、皆さんの宿舎になる寮に着きました。


その内の一つに入り、設備の説明をした後、皆さん自分の部屋に入って行かれました。


各部屋からは驚きの声が聞こえてきます。


設備に関しては、一応マサルさんも自粛して、一般販売している物だけにしたのですが、それでも王族や大貴族しか購入出来ない金額の物もあり、初めて見た方も多いようです。


特に温水便座とか。


あれは初めて使ったら絶対驚きますよね。


夕刻、夕食の案内を寮の館内アナウンスでした時も大騒ぎでしたけどね。


夕食は大好評でした。


寮の食堂で、普通に出しているメニューなのですが、常識外だったみたいです。


わたしやお義母様もマサルさんと一緒にいるのが長いので、麻痺しちゃっているのですね。


翌日、この国の在り方についてマサルさんが共和制の話しをされました。


皆さん真剣に聞いておられます。


ひと通り話し終わったところで、質問タイムです。


自分の知識と、かけ離れ過ぎて放心している人、配布資料やメモを読み返して必死に理解しようとする人等、様々です。


その中で、1人の男性が立ち上がり、拍手をしながら泣いています。


「ヴビィー。こ、これは、わ、わたくし、感銘を受けました。


この共和制という国の在り方、まさしくユーリスタ様のお考えになられた理論を具体化したものに相違ありません。


ユーリスタ様の論文、国家論第18 章5節の『理想郷』に書かれた内容を読まれよ。

マサル様のお言葉は、この世の理想を具現化するものでしょう。グスッ、グスッ、ブオォーー。」


港からの道中でお義母様に縋り付いて泣いていたあのおじさんでした。


「お義母様、先ほどの論文の話しは本当?」


「……たぶん?

確か国家論を書いていた時は、ちょっといろいろと荒んでた頃だったからねぇ。


あまり内容を覚えていないのよね。」


………


突然、拍手が嵐のように響きわたりました。


「「「ユーリスタ、マサル、ユーリスタ、マサル」」」


大合唱です。



「お義母様、どうされます?」


「どうって言われてもねえ。

若気の至りだからねえ。


でも結局マサルさんの考えが皆んなに支持されているんだから、良かったんじゃない?」


目が泳いでいます。



「「「ユーリスタ、マサル、ユーリスタ、マサル」」」


合唱はその日の夜半まで続くのでした。

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