第197話【庁舎建設】

<<スポック視点>>

わたしがこの街の責任者だって!


マサル様が提唱される共和制の意味はよく理解できているつもりです。


民が自ら選んだ首長が政治を執る。

首長には平民であろうと資格があれば立候補でき任期もある。


首長を議長として、同じく民から選ばれた議員が議会と呼ばれる会議体でそれぞれの政策を議論し、最終的な政策が決定されるのです。


これまでの王政や帝政を覆す画期的な制度でしょう。


まさしくマサル様の国にふさわしいと思いました。


しかしながら、あの柔軟な発想と行動力にはいつもながら頭が下がる思いです。


わたしも付いて行けるよう、頑張らないといけませんね。




<<マサル視点>>

「ランス、この辺りに政務庁舎を建てるから、手伝ってくれるかい。」


「分かったよ。何をすればいい?」


「まずはその外側の線に沿って壁を建ててくれるかい。


厚さ50センチメートルで高さは、3メートルくらいで。


外線の内側の土を掘って壁を作り、内側のへこんだところを掘にしたいんだ。」


「分かった、内側の線まで堀にすれば良いね。」


「そうだ。頼んだよ。」


わたしはランスにそう言うと、建物の建築に取り掛かる。


首都となる街の幹線道路を進んで街の中心部から少し奥に入ったところに、敷地を確保した。


この庁舎には100人ほどが入れる会議場やこの国とこの街を管轄する行政官達の執務室、式典等のイベントを行い、非常時には避難所を兼ねた巨大な屋内レクリエーション施設等、様々な機能を持たせたいので、広い区画を確保した。


国際連合事務局もこの敷地に入れる予定だ。


まずは、ランドマークにもなる時計台の建築かな。


「ビルド!」


時計台のイメージ、そうイギリスのビッグベンを思い浮かべながら魔法を放つ。


高さ100メートルくらいのコンクリート製時計台が出来た。


上から2/3くらいのところに直径7メートルくらいの大時計が付いていて、1時間毎に時報が鳴ると共に色を変えることにした。


時計台の中は展望台や観光客用の土産物屋等を入れて観光名所にしようと考えている。


次は政務棟だな。


政務棟は、ペンタゴンをイメージし、時計台の隣に建てた。


5階建てで5角形の建物。

真ん中には広い中庭があり、そこを中央公園として、市民の憩いの場にしてもらいたい。


その次はイベント会場。


イメージは開閉型ドーム球場で、屋根の半分くらいが開くやつ。


玉子型の大きさは長い方が120メートル、短い方が100メートルくらいにして、観客席は5層で4万人収容にした。


この街の人口を最大2万人くらいにしたいと思っているから、津波なんかが起こっても全員が避難して宿泊できることを想定している。


実際には、今ランスが作っている防護壁が津波を寄せ付けないから、その中の施設すべてを解放すれば、住民+観光客が充分に避難できるスペースを確保できると思う。



「ユーリスタさん、リズ、イリヤ、内装を頼めるかな。」


「「「わかりました(わ)」」」


外側と大まかな部屋割りは作ったので内装は女性陣に任せる。


ユーリスタさんとリズの感性で作ってもらえば機能的で優美なものができるだろう。

実際の構築はイリヤの魔法でできるだろうし。


机や椅子なんかは、事前にルソン殿とアーク殿に制作を依頼してある。


ロンドーの製品は汎用品の什器類としては申し分ない仕上がりで安価だし、ヤコブの調度品は豪華で見栄えが良いしね。


事前に納品された試作品を女性陣に見せてあるので、それを加味して考えてくれるはずだ。


最後に転送砦を作る。


この転送砦は、各国に設置している転送陣と接続し、ここを経由することで他国の転送陣を繋ぐことが出来るように考えた。


この転送砦には各国から派遣された警備兵が2~3名づつ常駐し、常に警備と検閲を実施することになっている。


今のところ、王族及びその同伴者に限定して利用できるようにする予定だが、将来的にはある程度門戸を開きたいと思っている。


カトウ運輸の転送陣もこの横に設置した。


これで概ね庁舎の建設は終了した。


かなり機能を盛り込んだが、今後作っていく地方都市にもこの縮小版を用意し、市民に開かれた政務庁舎を目指そうと思う。



1ヶ月かけて内装も終わり、ロンドーやヤコブから届いた什器や調度品の搬入も完了した。


今日は、各国から派遣された官僚達が到着するので、転送砦に家族を連れて向かった。


「じゃあ、お父さん行ってくるよ。」


ランスが転送陣を使ってナーラに向かう。


ナーラの国際連合事務局跡には仮設の事務局を建ててある。


今日そこに各国から派遣された50数名の官僚が集まるのだ。


ヘンリー様が既に迎え入れて説明をしてくれていると思う。



ランスが向かってから10分後、最初の1人が転送門をくぐってきた。


「ようこそ、マサル共和国へ」


俺達は笑顔で彼等を迎え入れた。

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