第165話 【ロンドーの騒動、そして再会】
<<デカ視点>>
ロンドーに着いて、ひと段落ついた頃、わたし達がいる宿舎の外が騒がしくなってきました。
「ちょっと外を見てきますね。」
カトウ公爵様が、外に出て行きました。
「あっ、お父様。何かあったの?」
しばらくして、ランス君のトランシーバーに連絡が入ったみたいです。
「どうやら、クーデターのようだね。
100人くらいに囲まれているようだ。」
「デカお姉ちゃん、100人くらいに囲まれてるって。
クーデターみたいだって。」
100人って!!
何が起こっているの?
訳がわからないまま、立ち尽くしていると、カトウ公爵様が戻ってこられた。
「バインド魔法で全て拘束しておきました。
とりあえずは大丈夫ですね。
ランス、イリヤ、牢を作って外の奴等を入れておいてくれるか。」
「わかったよ、お父様。
ところで何があったの?」
「キャロという者がクーデターを起こしたらしい。
王宮のアーク様も狙われていると思うから、今から応援に行ってくる。」
「わかったよ。こっちは任せておいて。」
ランス君の言葉に、カトウ公爵様は微笑みを浮かべ、王宮の方に走って行きました。
ランス君とイリヤちゃんは、魔法を巧みに使いながら、土魔法で牢を作り、重力魔法で拘束されている兵達を次々と牢に入れていきます。
あっという間に100人くらいの反乱兵は牢に閉じ込められました。
「さあ、牢には結界も張ったしこれで大丈夫だろう。
デカお姉ちゃん、イリヤ、僕達も王宮に行こうよ。」
わたしはランス君に導かれるまま、王宮へと向かいました。
王宮の玄関口に到着すると、カトウ公爵様がちょうど出て来るところでした。
「あー、デカさん、こちらも終わりましたよ。
もう安全です。
ランスもイリヤもご苦労様。
向こうでゆっくりさせてもらおうか。」
わたしは玄関口を覗き込むと、そこには記憶に残っている顔がありました。
もしかしてあの時のお兄さん?
「あなたはヤライの……」
「はい、族長カーンの娘デカと申します。」
「………ヤライのデカ。
あなたはもしかして50数年前に、ヤライの大森林で迷っていた少女でしょうか?」
「そうです。あなたはやはりあの時のダークエルフのお兄様ですね。」
わたしは、肌身離さず付けていた赤い球のペンダントを出して見せた。
「そのペンダント、間違いない。
そうか、あの時の少女があなたなのですね。
申し遅れました。わたしはロンドーの皇太子、アークです。
そうか、あなただったのか。
あなたがわたしのお相手で本当に良かった。」
「アーク様、わたしもお会いしとうございました。
あなたが、結婚相手で本当に良かった。」
わたし達は互いに見つめ合いながら、この再開を心から喜んだ。
<<ヤクル視点>>
なんだか訳がわからない。
キャロ様による謀反が起き、王宮の玄関口でわたしは、アーク殿下の親衛隊と共に、玄関口で敵兵と交戦になった。
圧倒的な不利の中、せめてアーク殿下だけでも逃げて頂こうと、盾となって死ぬ覚悟を決めていた。
敵兵の剣がわたしを貫こうとし、死ぬと思ったが、結局わたしは死ぬことはなかった。
そればかりか、キャロ様を含めて敵兵は、全て牢の中に入れて捕らえられていた。
こんなところに牢はなかったし、どうして一瞬で敵が捕まったのかも全く理解出来ない。
ただ、現実があるだけだ。
わたしは、不可解な事実をとりあえず棚に上げて、現実に向かいあう。
「キャロ様、これはどういうことでしょうか?
説明して頂けますか。」
キャロ様は、牢の中でポカンとしている。
当然だと思う。
ついさっきまで、謀反は成功していた。
囲まれたアーク殿下は、あと数分後には殺害され、王宮の制圧は完了していたに違いない。
キャロ様の権力を持ってすれば、他の有力者達も従わざるを得なかっただろう。
明日のアーク殿下の婚姻、王権の移譲を控え、ロンドー全体が浮き足だっていた。
ある意味謀反を起こすのには、完璧なタイミングであった。
それが完璧に成功したと思われた瞬間に、牢に拘束されているのだから。
「キャロ様!、キャロ様!!」
わたしの呼びかけにやっと意識をこちらに向けたキャロ様は、ボソリと呟く。
「どうして………」
わたしは、親衛隊にキャロ様の屋敷や領地を抑えるように指示した。
親衛隊の迅速な行動により、キャロ様の全てを抑えることに成功、キャン様の家宰で、キャロ様の側近だったハロの供述により、今回の謀反の全容が明らかになった。
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