第5話 予備校行かない宣言
こうして意地と見栄で浪人が決定したわけですが、やっぱり勉強に関してはイマイチ身が入りませんでした。高校を卒業して1、2週間は真面目に机に向かったのですが、何から手をつければいいかわからないし、やみくもに問題を解いたところで時間の無駄のような気がしたのです。私は当時から超面倒くさがりだったので、非効率的なことが大嫌いでした。
「できれば楽して成果を得たい」
こんなダメ人間のような発想が功を奏することになるとは……
必要な勉強だけをするにはどうしたら良いか、私は色々と考えました。センター試験の結果を見直し、受験した学校の過去問をもう一度解き、そして気づいたのです。
受験に失敗した全ての原因は物理であったと!
データを分析すればするほど物理が足を引っ張ていたことが鮮明になったのです。となれば選択肢は1つ。
物理は勉強しない!
こいつ、頭悪いのかな?
そう思われても仕方ありませんね。なぜ物理はやらないと決めたか。理由は簡単で、現役のころから物理よりも化学の成績の方が良かったからです。そもそも受験で物理を選んだのは、誰かに「理系に進むなら物理はやっておいた方がいい」と言われたからで、得意だったからではありません。確かに物理は理科の基本ですし、大学進学後もあらゆる場面で最大の敵として立ちはだかってきたので、しっかり勉強しておくべきだったのでしょう。
しかし、今の目的は志望校に合格すること。そのためには、さっぱりわからない物理を理解するより多少なりとも理解できている化学を強化することの方が簡単だと考えたのです。それがわかってしまえば、勉強の方針も決まります。
化学強化にウェイトを置き、他の科目は今のレベルを維持すれば十分。公務員試験は得意中の得意なので、受験直前に集中してやれば良し。
・・・これ、予備校とか通う必要ないんじゃ .......
現役時代に予備校や塾に対して必要性をあまり感じていなかったし、強制的に勉強させられるようで嫌だったし、そもそも出不精なので予備校まで通うのが面倒だったので、通わなくて済むなら好都合でした。なんて言ったって筋金入りの面倒くさがりですから!浪人の身にとって予備校の受講料もバカになりませんからね。(後で知りましたが、現役時代で少なくとも年間100万ほどかかっていたようです。)
ということで、予備校には行かず、自宅で勉強することにしたわけです。いわゆる宅浪というやつです。周囲には「本当に予備校行かなくて大丈夫か?」と心配されましたが、私が自力で成果を出せると考えた根拠は他にもあります。それは、志望校の受験形態です。
海上保安大学校は文系、理系どちらの人も受験できるようになっていました。受験科目は英・数・国・理科(物理、化学どちらか選択)・小論文・公務員試験とどちらかといえば理系寄りなのですが、一般の理系学科なら必須の数Ⅲ、物理Ⅱ、化学Ⅱは受験科目に入っていないのです。つまり、文系でも国立大学を受験する人がセンターで必要とする知識のみで受験が可能なのです。もっとわかりやすく言うと、高校1年生で勉強するレベルの知識がきちんと理解できれば十分合格は目指せるのです。
数学は得意な方でしたが、一番の得意科目は地理、理科系分野ならば地学と物凄く文系寄りの理系である私にとっては、この受験形態に救われたと言っても過言ではないでしょう。
というわけで、自分一人での受験勉強が始まるのですが、とても浪人生とは思えない楽しい生活が待っているのでした ......
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