密会~合コン相手はドS社長~
日下奈緒
第1話 結婚願望
皆さんは、上司からこっぴどくしばかれる事はあるだろうか。
一見、愛の鞭に見え、一見、パワハラ……いやドSに見え、その境はグレーゾーン。
そんな上司が存在するのは、私の職場。
デザイナー会社で、上司は社長と言う、小さなオフィス。
そして私は、そんなところのデザイナーだったりする。
「東村。このデザインは何だ。」
「えー。今回のクライアントの要望で、爽やかな水です。」
「爽やかに見えん。まるでドブ水だ。いや、水にも見えない。」
「そんな!」
「もう一度、やり直して来い。」
こんな感じのやりとりが、毎日続く。
水に見えないなんて、根本をつくこと、酷くない?
そんな愛の鞭ともいうべき、ドSなアドバイスが、彼の得意分野。
社長、高居綾斗。32歳。
そして、そんな毎日にふと思ってしまう。
私、デザイナーに向いてないのかなって。
絵が好きで、芸大に入って。
デザインが好きで、デザイナーになったけれど、一度も認められた事がない。
もう28歳にもなるし。
結婚相手でも見つけて、結婚した方がいいのかな。
私は、はぁーっと息を吐いた。
「なに?ため息?」
同僚の美奈さんが、近づいてきた。
「高居社長は、なぜか冬佳ちゃんだけに、厳しいもんね。」
「ですよねー。」
はははっと笑う美奈さんを見ながら、友達からのLineを見た。
【今日、合コン行かない?】
合コンか。
前の相手と別れて1年半。
そろそろ次の人が欲しい。
【いいよ。】
時間と待ち合わせ場所を聞いて、私はスマホを置いた。
今日、いい出会いがあればいいな。
仕事が終わって、私は合コンの待ち合わせ場所に行った。
待ち合わせ場所には、もう友達も来ていた。
「久しぶりだね~。」
「ねえ、本当に。」
友達とワイワイきゃきゃと話をして、お店の中に入った。
「ご予約の方ですね。こちらでございます。」
案内された席は、奥の壁側の席だった。
「いい場所だね。」
「ね。」
そして、女性陣のもう一人の子と合流。
「私の会社の、同僚なんだ。」
友達が、紹介してくれた。
「冬佳です。よろしく。」
「よろしくです。」
女性陣はOK。
後は、男性陣を待つばかりだ。
「遅いね。」
友達がそう言った時に、男性陣が二人到着した。
「遅れてごめんなさい。」
見れば、今流行りのシュガーボーイ達。
うん、うん。
いい感じ。
でも席は奥から座ったから、私の前には誰も座らなかった。
「もう一人の人は?」
気を利かせて、友達が聞いてくれた。
「仕事で遅れるって言ってたよ。」
なーんだ。ふーん。
気楽に考えながら、私はカクテルを飲み、もう一人の登場を待った。
「先に乾杯しておこうか。」
「はい。」
仕方なく、3対2で乾杯が始まる。
私はもう一人の登場を、今か今かと待ち構えていた。
シュガーボーイは、嫌いじゃない。
でも私の好みは、もっと渋めの大人的な感じの人なんだよね。
「あっ、来た来た。」
男性陣がもう一人を見つけ、私はその人を確認。
ただ、その人は……
「悪い、遅れた。」
よく知る人物だった。
私の目の前に、勢いよく座ったその人は……
「あれ?東村じゃないか。」
そう。
ウチの会社の社長だった。
「あれ?高居さん、冬佳ちゃんとお知り合い?」
「お知り合いも何も、よく知っている間柄だよな。」
社長は、ウィンクした。
何をシレッと言ってんだか。
「社……」
「あー、俺ウィスキー水割で。」
ん?
今、”社長”って言葉、阻止された?
「あの、社……」
「そうだ。皆、趣味とかある?」
益々、怪しい。
「社……」
「東村、カクテルのお代わり何にする?」
絶対怪しい。
「”高居”さん。大変ですね。お仕事何されてるんですか?」
わざと聞いてやった。
「俺は、デザイナー。いいな、東村。デザイナーで。」
「……間違ってはいないですけど。」
まさか合コン相手に、社長が来るなんて、思いもしなかった。
しかも、社長である事を隠している。
こんな合コン、意味ないよー。
私も、他の二人と話したいよー!
すると社長に、鼻で笑われた。
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