百年紀のカレンダーⅢ アールヴヘイムンの海原 【ノーマル版】
ミスター愛妻
アールヴヘイムンの海原
プロローグ
姫奴隷の帰郷
……昔、先祖たちは獣のような生活をしていた。
そこへ神が現れ、私たちに知識を授けた。
私たちは神とともに、幸せな生活を送っていたが、悪魔が現れ、神はこの場所で戦われた。
山は割れ、崖ができるほどの戦いの果てに、悪魔は倒され、神の命も後、僅かになられたとか……
そして最後を悟られた神は、共に戦った十六王家の我等の先祖に対して、全てを託されて消えていかれた。
十六王家は託された神の知識を世界に広め、アールヴヘイムンは創世された……
ある日、アプサラス・ハレムを預かるパールヴァティは、このアールヴヘイムンの創世神話について、機密情報を開示された。
戦闘艇X665調査報告
最後の審判戦争前に発見された、男性体の戦闘艇人工知能の遺書である。
機密情報ではあるが、先ごろ最高軍事機密指定が解除され、ルシファーの意向で、パールヴァティだけに開示されたようである。
「貴女は知る必要があるでしょう、アプサラス・ハレムの責任者としてね」
「ところでスジャータさんから、執政官府直轄地の視察要請があり、静養がてらアールヴヘイムンに滞在することになったの」
「貴女も随行しなさいな、こんなことでもなければ、アールヴヘイムンに里帰りできないでしょう?」
惑星アールヴヘイムンは要監視世界、なんせ暗殺団を送り込んできた惑星。
何とか献上品を提供し、滅亡は免れたのですが、ネットワークでの評判は最悪。
いまだにアールヴヘイムン処理は甘いと、ミリタリーあたりではいわれています。
勿論ユニバース出身の執政官スジャータも、良い印象は持っていません。
なんせ暗殺団の件では、献上品一行としてルシファーの元に届けたのがスジャータ、面目丸つぶれですからね。
激怒したスジャータさん、『王宮』を灰燼にせよ、との命令を受け、容赦なく王宮がある王都を灰燼にしたのです。
このときの暗殺団の引率がパールヴァティ。
ルシファーからは許されはしましたが、他の世界のメイドさんや女官さんたちは、自分たちの大事な愛する主の暗殺を企てた生き残りの女。
しかも色仕掛けでの暗殺ですから、その怒りは深く根強いのです。
表立ってはルシファーの意向がありますので、扱いなどは変わりませんが、誰一人親しくしてくれないのです。
これはもう一人の生き残り、ウルヴァシーも同様です。
さらにハウスキーパー事務局では、要監視世界出身で暗殺を企てた寵妃、いまだ要監視対象となっており、おいそれと故郷に帰る許可は下りないのです。
まぁ軟禁状態に近い待遇です。
それでも一度、ウルヴァシーはハウスキーパー、サリーの計らいで、ヴィーナスのアールヴヘイムン視察の随員として選ばれ、里帰りがかないましたが、パールヴァティは一度として帰郷したことがないのです。
アプサラス・ハレムとはいわれていますが、実際は仮称なのです。
ここでいわれているアプサラス・ハレムとは、ハウスキーパー事務局が管理している女官さんたちの事で、アールヴヘイムン十四王国出身者のグループの事です。
アールヴヘイムンのもう一つのグループ、滅亡した旧二王国領は、いまでは執政官府の直轄地、ラクシュミー・ハレムと呼ばれていますが、ここからの献上品や寵妃は、今のところ出てきていません。
「でも私は……」
「十年一昔、そろそろ皆さんの怒りも小さくなっているでしょう」
「よく耐えましたね、のんびりと故郷の空気を吸ってもいい頃です、会いたい人もいるのでしょう?」
そういわれて、パールヴァティは弟を思い浮かべました。
……そういえば弟のカニシカも大きくなったでしょうね、最後にあったとき、弟は十三だったかしら……
とにかく腰が軽いヴィーナスさん。
パールヴァティを引きつれ、レイルロードに乗り、アールヴヘイムン線を経由、惑星軌道に浮かぶ標準簡易型のアールヴヘイムンステーションから、惑星上陸艇を使い、アールヴヘイムンのマハラバード執政官府にやってきたのです。
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