第1話 旅立ちの日
それは、満月の夜の事だった。
村の外れの一軒家に、二人の人間がいた。一人は妙齢の女性、一人は少女である。
少女の名前はララティナ、今年で十四歳になる見習い魔女である。
見習い魔女というのは、魔女に師事している人達のことで、魔女というのは、魔法や人智を超えた力を持っている人達のことである。
もう一人はララティナの師匠、ルルテア。ララティナにとってルルテアは、師匠であると同時に母親のような人でもあった。
ララティナは、幼い頃両親を亡くしていた、その時、ララティナを引き取ってくれたのがルルテアだった。
二人は、村の外れの一軒家に二人で住んでいる。普段は、薬を売ったり、占いをしたりしながら生計を立てている。その傍ら、ララティナはルルテアから、魔女についての授業を受けていた。
「見習い魔女、ララティナ」
「は、はい!」
ルルテアの言葉にララティナは立ち上がり、返事をする。
「私、ルルテアは、弟子である見習い魔女、ララティナを魔女の試練に推薦します」
と、宣言した。
それに合わせて、ララティナは、事前に覚えた言葉を紡ぐ。
「私、見習い魔女、ララティナはルルテアの推薦により、魔女の試練への挑戦を宣言します」
「ララティナよ、今ここに貴方の試練への挑戦が認められました。次に、試練の説明に移ります」
「はい」
覚えた宣誓を、きちんと言えたことに安心したのも束の間、すぐに気を引き締める。
「貴方にはこれから、各地を巡り、四つの禁術を修得してもらいます。期限は、二年後、そこで禁術を修めていれば、貴方は晴れて魔女に成れます」
その言葉に、ララティナは不安と期待を抱くのだった。
◇
「さて、ララティナ、貴方に最後、教えるべきことがあるわ。付いて来なさい」
ルルテアはそう言うと、外に出る。それに、ララティナも続く。
「いい、ララティナ。今から、貴方に使い魔の召喚を教えるわ」
使い魔とは、魔女の手助けをする存在である。
「はい、ルルテアさんにとってのハクジャさんのような存在ですね」
会話の中、ルルテアが片手を上げ、合図を出すと、その手の指輪の宝石が光り、二人の前に白い大蛇が現れた。
「ララティナちゃん、遂に旅立ちの時か、俺も感慨深いね。いやいや、めでたい、めでたい」
「ハクジャさん、ありがとうございます」
「まあ、使い魔について俺から説明するって流れでいいのか、白薔薇?」
「ええ、お願いするわ、基本的な事は、ララティナにも教えているけど、復習にもなるし、貴方から話すのが一番だと思うわ」
ルルテアに促されて、ハクジャは少し考えるような素振りをしてから、喋り始めた。
「そうだなあ、まず、使い魔ってのは、魔界から魔女が呼び出し契約する生物だ。その役割は色々だが、まとめると魔女の手助けって感じだな」
「はい、普段から見ていたので、それはわかります」
「俺たち魔物は本来実体が無い、魔女に召喚されて、仮の実体を得ることができる。そして、魔女に使役され続けることで、真の実体を得ることができる。これは俺達にとっては大きなメリットなのさ。だから、ギブアンドテイクってやつだな。まあ、端的に使い魔を説明するとこんなもんだろうよ」
話が終わると、続いてルルテアが話始める。
「ありがとうね、ハクジャ。ララ、それじゃあ、次に召喚の仕方を教えるわね。まず、自分の血を地面に落とすのよ」
少し怖いと思ったが、親指をナイフで傷つけ、地面に血を垂らした。
「これでいいですか?」
「ええ、次に自分が望む使い魔をイメージしなさい。これからの旅でどのような助けが必要か考えるのよ」
ララティナは目を閉じて、自分が助けて欲しい使い魔の姿を想像する。静寂の中で、地面に血が落ちる音だけが聞こえる。
ララティナが欲しいのは、自分を守ってくれる使い魔、強くて大きな使い魔。イメージが固まった。
「イメージできたかしら、では魔力を集中させるのよ。指から落ちる血に魔力を伝えるような感覚よ。それができたら、唱えなさい、合言葉はサモン、ゆっくり落ち着いて」
その言葉を受けて、魔力を集中させる。滴る血に魔力が宿ることがわかる。そして、ゆっくりと口を開き、
「サモン」
と唱えた。
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