横綱ゾンビVSクローン名球会!

文屋旅人

横綱ゾンビVS復活の名球会

 21XX年、日本列島はゾンビの危機に瀕していた!

 日本の検疫を突破して国内に侵入したゾンビウイルスは、普通の人間に感染してもただの糞雑魚ゾンビにしかならない! しかし、東アジアの島国にしか存在しない特定の半裸で行う神事を行う益荒男、即ち相撲取りに感染した時のみ、その相撲取りを時速100キロで移動し高い加速能力を持つ突進性相撲ゾンビに変貌させるのである!

「うわあああああっ! 相撲ゾンビが来たぞぉぉぉぉおおおっ!!」

 人々は恐怖する。

「どすこいどすこいどすこい!」

 時速100キロで迫りくる青白い肌の相撲ゾンビ。

 しかも、今この新宿に存在するのはモンゴルから来た力士、白い鳳と称えられた存在がゾンビ化してしまったのだ。

 自足100キロで迫る力士は実際強い。

 ただでさえもその力士は負けなしと知られていた力士なのだ。歴代最高峰の力士とも言われているほど強い彼が、相撲ゾンビになったら手が付けられない。

「どすこいどすこいどすこーいっ!」

「ぐわーっ!」

「げぇーっ!」

 相撲ゾンビは哀れな犠牲者たちを突っ張りで肉片に変えていく。

 相撲ゾンビは時速百キロの速度で突進していき、進路上にあるものを轢殺していく。

「くっ! 自衛隊すら、相撲ゾンビには立ち向かえないのか……」

 訓練で鍛え上げた自衛隊員ですら、異様な力と速度を誇る相撲ゾンビには手も足も出なかった。何とか逃げ惑う人々を保護し、相撲ゾンビの間の手から守ることしか、彼らにはできなかった。

「どすこい!」

「どすこい!」

 すると、新宿で暴れていた白い鳳のもとに、もう一人の相撲ゾンビが来た。

 青い龍と称えられていた、もう一人の史上最強と言われる相撲取りだ。引退後、久々に友人知人に対してちゃんこをふるまおうとしたら、不幸にもこのゾンビウイルスに感染してしまった。

「どすこーい!」

「どすこい!」

 そして、白い鳳と青い龍は互いを確認すると……。

「はっけよーい!」

「はっけよーい!」


「「のこった!」」


 時速100キロでぶつかりげいこを始めた。その衝撃で、新宿の街は壊滅した。

「どすこーい!」

「どすこーい!」

 二人の相撲ゾンビはしこを踏む。

 ここは我らの縄張りだ。そういわんばかりに、しこを踏んでいた。

 相撲とは本来神事である。それをゾンビが行うことによって、この新宿は相撲ゾンビの領域であると主張しているようであった。

 その時である。

「ふむ、シアトルにあんなクレイジーな存在はいなかったね」

 一筋のボールが、レーザーのように飛んでくる。

「はっきょい!?」

 偉大なる二人の相撲ゾンビをしたって現れた相撲ゾンビたちは、そのボールに貫かれる。

「ふん、弱小チームを率いて400試合勝った儂をここまでこき使うとは……」

 さらに、安定した剛速球が投げられる。

「ふむ、これは強敵だね」

「だけど僕たちならいけるさ」

 そして、相撲ゾンビたちがよけたボールを二人の男が打ち返す。

 彼らは、即ちクローン名球会。

 日本政府は野球文化保存のために収集していた名球会会員たちの遺伝子を解析し、現代に対相撲ゾンビ兵器としてクローン野球選手を生み出したのだ。

 そう、第二次世界大戦の故事から日本の国技にはアメリカの国技をぶつけるべきであると判断した、当時の防衛庁長官の冴えたやり方であった。

 この度、新宿に現れた二人の偉大な相撲ゾンビを打ち倒そうと現れたのは、シアトルで活躍していたレーザービームを放つ男、空前絶後の400勝の男、そして日本で最も有名な三番打者と世界のホームラン王のコンビで会った。

「どすこーい!」

「どすこーい!」

 相撲ゾンビたちはしこを踏む。

 そして、相撲ゾンビたちはしこを踏みながらクローン野球選手に向かってくる。

「ふふ、血肉沸き躍ってきたよ」

 偉大なるスーパースターが笑う。

「行こうか、日本ポロ野球を支えてきた男の強さを見せてやろう!」

 不屈の男が呵々大笑する。

「さぁて、いっちょ国を救うか」

「天覧試合以来の緊張だ」

 偉大なる二人の打者も笑う。

「どすこーい!」

 波の如く押し寄せる相撲ゾンビたちに立ち向かうは、復活した名球会の勇者たち。

 こののち200年間相撲ゾンビとクローン名球会たちの戦いは続き、ついには名球会が勝利したのである。

 こうして、日本は相撲ゾンビアポカリスを押し戻したのだ。



          了

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