251.父の鋭すぎる観察眼
今日は珍しく父の話をしたいと思います。父の話って、恨み節になりがちなんで書かなかったんですが、昨日改めて「父すげぇ」って感じたので書こうと思いました。
無雲父は、今年で七十五歳になります。カクコンに参加した暴走じいちゃんのエッセイに登場した『カンブン』、その人です。
父が幼少期の頃は、暴走じいちゃんはまだ農業をしていて、家も裕福ではなかった。だから、父は幼少期から新聞配達・ヤ〇ルト配達・リアカーにトウモロコシを乗せて売り歩く、等の労働をしていたそうです。
商業高校を卒業すると、就職のために上京しました。そして、その会社に五十年間勤め続ける事になりました。
父が居た会社は、大企業寄りの中小企業。それなりの規模を誇る、文具やOA機器の卸問屋でした。父は、営業職としてそこに勤め、その会社で出世しまくり、取締役の座に就いていた時期もありました。
父は、就職してすぐに仕事の才覚を見せ始めたらしく、すぐに出世コースに乗ったそうです。なので、若い時から常に人の上に立ってきた人でした。
そんな父は、無雲が病気になるまで、あまり家の事を顧みない人でした。仕事一筋、仕事が趣味、みたいな『団塊世代あるある』な人間でした。
無雲が精神病になってからも、無雲の事は母にお任せって時期が長かったです。でも、それでも、休みの日には無雲と散歩に出かけてくれたりするようになりました。
父は、今までに三回死にかけています。大動脈瘤・大動脈解離・腰部圧迫骨折による重度貧血で、生死の淵を彷徨って、それでも生き返ってきた生命力のある人間です。
無雲が結婚して実家を出て、三年でおいたんを連れて実家に戻ってからは、チーたん(インコ)という友達を得て、それまでの『頑固ジジイ』は恐ろしいほどの『
父は、昔から無口であまりおしゃべりを好む
昨日、無雲は具合が悪かった。スーパーマーケットで若い女性二人に悪口を言われた・笑われたと言ってシクシク泣いて、唸ったりしていたのですが、そこで父が一言ズバリ言いました。
「お前、具合悪いのそれだけじゃないだろ。
無雲はギョッとしました。自分では意識の底に沈めていたはずの『おいたん在宅ストレス』をズバリと言い当てられたのです。
無雲は、元々ワーカホリックな所がある人間です。仕事が忙しければ忙しいほど、はかどればはかどるほど生き生きとして元気になる人間です。それが、おいたんが週四日も家に居るものだから、作業が進まずにストレスを抱えていたのです。
こういう風に、父はいつも無雲が泣いている理由をズバリと言い当てます。
「お前が朝から具合悪いのは、旦那が
「お前がどこか行きたい、何かしたいってダダこねる時は大抵疲れてる時。だから連れて行かない」
無口な人がたまに喋ると、それだけで重みがあるのですが、父の様に余計なおしゃべりをしない人がたまに発する的確なツッコミは、それはそれは重い。無雲としてはぐうの音も出ないのです。
無雲母は、無雲と同じでおしゃべりでいつも喋ってばかりいるハツラツとした人です。『無雲家の太陽』と美容師のお兄さんに言われるくらい明るい超絶ポジティブ人間。
母は、頑固な父の一歩後ろを歩いて、父の顔色を伺って、言いなりになってきた……ような印象がありました。が、今は亡き父の兄、無雲からしたら伯父さんが生前母にこんな事を言ったそうです。
「エイコさん、あんたはさ、カンブンの言う事を『はい、はい』って聞いて言いなりになっているようでいて、実は
伯父さんも、とても頭が切れる鋭い人でした。その伯父さんにこのようなコメントを言わせた母、強いな。って思います。母はおっとりしていてボーっとしていてちょっとピントがずれているように見えていても、いざとなると強い人なのです。夫の一歩後ろを歩いているように見えても、手綱を引いて歩いているのは実は母なのです。
無雲は、母の様に夫を掌の上で転がせる女性になりたいと思う。おいたんみたいなちょっと頼りない人は、上手い具合に転がしてこそなんぼだとも思う。
私は、父に関してこんな事を心の中に決めている。
「父は頑固だったから敵も多い。姉や兄は未だに父を快く思っていないだろう。しかし、父の悪口を言っていいのはこの世で無雲と母だけだ。父の事をきちんと理解しているのが、無雲と母だけなのだから」
M先生も、父の事を良く言いませんが、お世話になっているM先生でも、父の事を悪く言う事は許せません。父は、不器用だ。無口だ。頑固だ。母曰く「優しいけど思いやりが無い」人間だ。
それでも、父は、いつも無雲家の土台として無雲家を支え続けているのだ。その鋭い観察眼と分析力で、いつも冷静に無雲達を守り続けているのだ。
さて、時刻は十六時半を回りました。今夜の夕食を作りに参りますか!
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