194.全然エンジンがかからない。

「最悪ですね」


 M先生から言われた言葉。寝れないからお酒を飲み、やる気が起きないからテレビをボーっと観て過ごしていると言ったら投げかけられた言葉。


「行動あるのみ。行動化せよ!」


 と言われましても、体に力が入らず、魂が抜けたかのような腑抜けの状態の私には『行動』する事がなかなか難しい。


 寝付けない時間、それはとても苦痛に満ち溢れている。考え込んでしまうのだ、これからの事を。『解雇』になったおいたんの次の就職活動。生活の基盤としての金銭問題。自分の仕事も軌道に乗っていない現状。もういっそ、誰か私の命を奪ってくれないか、とも思ってしまう。


 思考回路はどんどんマイナスになり、考えの全てが『死』に繋がっていく。


 その思考回路を止めたいから、夜になると深酒をして意識を封じ込める。


 好きで深酒をしているのではない。ただ、苦痛から逃れたくてアルコールを利用しているだけなのだ。


「寝れないなら起きてろ。そして朝は六時には起きろ。そうすれば次の日は眠れる」


 起きているのが嫌なのだ。とにかく考えたくないのだ。寝ている間も悪夢にうなされるが、それでも現実よりはマシなのだ。


 この状態でも、私には減薬が言い渡された。唯一の内服薬を三錠から一錠まで減らすように言われた。その状況に母は不安を覚えたようだ。メンタルの状態が極めて不安定なのに、それに加えて減薬をしなければならないのか。


 母は、父が病気で倒れて仕事を辞めた頃から、メンタルの調子を崩し、抗鬱剤や睡眠薬をM先生に処方してもらうようになった。私が実家に戻ってからは、大分状態が落ち着いてきたので、抗鬱剤も睡眠薬もほぼ無しで過ごせるようになってきていた。それが、また服薬したいと言い出した。


 今回のおいたん騒動は、私だけでなく母のメンタルにも大打撃を与えた。母の不安は、私の状態が悪くなる事への恐怖もあるのだろう。


 私は、今の状態が周りへも悪影響を与えている事を承知している。


 毎日の深酒が、身体にいいわけがないのだ。内臓は疲れ切っている。大きな病気を誘発してもおかしくないだろう。いくら私の身体が丈夫でも、年齢的に大きな病気のリスクはある。


 今、私が倒れるわけにはいかない。これ以上母に負担をかけるわけにはいかない。


 頭では分かっていても、行動が伴わない。


 仕事に没頭すれば、日中は考え込まなくて済むのだろう。それも分かっている。でも、やるべき作業は大量にあるのに、一向にエンジンがかからない。次に作る曲は決まっている。昔作った曲の焼き直しだから、音源を確認して新たに打ち込み直すだけだ。作業は三日もあれば終わるだろう。でも、それに取り掛かる事が出来ない。


 サイトに載せる予定のブログのネタは脳内では出来上がっているし、素材も用意してある。ワードプレスにそれを打ち込んで、整理するだけで記事のストックは出来る。三十記事ストックが出来たら、サイトを公開する予定だが、その作業に取り掛かる事が出来ない。


 全てが、滞っている。


 母は私のこの状況を「当然の反応では?」と言う。「この状況で元気があるほうがおかしい」とも言われた。


 M先生はスパルタ先生だ。とにかく患者のケツを叩いて動かす。そこに甘やかしは無い。私のケツも叩いて叩いて叩きまくる。


 それでも動かない私はある意味頑固だ。しかし、究極の逃げである『入院』は、M先生は絶対にさせない。もちろん、私にもその意思は無い。またあの閉ざされた空間に入って、不味い飯を食う意思など私には無い。


 立ち向かうしかないのだ。現状を打破していくしかないのだ。


 私に出来た大きな傷も、時間が癒してくれるだろう。少しずつでいいから、目の前の壁を壊していくしかないのだ。


 今私達家族の前には巨大でぶ厚い壁が立ちふさがっている。でも、今までも壁を打ち破って来たからこそ、今の無雲が存在している。


 私に壊せない壁など無いと信じている。


 何だか今日は語り口調がしんみりした重い内容になってしまいました(汗)。

 す、すいません。でも、無雲は生きていきますので、安心してください!!

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