74.子供を諦めたはずの私の持つ複雑な感情

 改稿の為に非公開にしている前作『帰ってきた!無雲の生態~お久しぶりです、生きてます』で少しだけ触れている「子供を諦めた」という事に関する私の最近の複雑な感情について今日は書きたいと思います。


 私はかつては、子供が好きだった。他人の子供に対しても優しく振舞うことが出来たし、将来は子供を何人か産んで育てたいとごく自然に考えていた。それが二十代前半の話だ。しかし、二十代後半から私に降りかかった多剤大量処方という地獄の中、私は子供を持つ事を諦めるしかないという状態に陥った。


 当時私にはK君という彼氏がいた。専門学校の同級生で私が元気な時を良く知り、また病気になってからの私の事も良く知っていたK君とは、将来結婚するつもりだった。しかし、K君は子供が欲しい人だった。私は医者から子供を諦めるように言われていたし、K君の望みは叶えられないと思った。その”子供問題”で苦しむ私を見て父は私達を別れさせた。


 私はそれから長い年月をかけて子供を諦めた。妊婦を見ると苦しくて、子供を見ても苦しくて、それは私の中で憎しみとも似た感情に変わっていった。


 彼らを憎む事で私は自分の中の葛藤をやり過ごそうとしたのだろう。


 嫌いになれば、欲しくならない。

 嫌いになれば、羨ましがらない。

 嫌いになれば、もう苦しまない。


 月日が経ち、子供から完全に目を背けた頃においたんと出会った。おいたんは虐待されて育った人間だったから、自分は絶対に子供を作らないと心身共にブレーキをかけている人間だった。だから、私達は最初から子供は望まない夫婦として存在することになった。


 しかし、最近私の心の中がまた苦しくなってきたのだ。


 今の職場の上司D先生が妊娠してるっぽかった。最近知ったが本当に妊娠していたのだ。私はわけもわからず苦しくなった。その場から消えたいと思うくらい苦しかった。


 その理由を、自分なりに分析した。感情を良く知る事で自分をコントロールできるはずだからだ。


 私の中には、D先生がと思う感情があった。安定した職業と伴侶と子供を持つD先生が、純粋に羨ましかった。それはごく平凡な人生かもしれないが、私にとっては望みたくても望めなかったかつて心の奥底に封印しただった。


 今の日本社会はかつての社会と違い、この平凡が贅沢になっている世の中だから、これが平凡だとは言い切れない。それは理解している。しかし、私は思うのだ。M?と。


 私の人生は医療によって台無しにされ医療によって救われ今も医療によって生かされている。しかし、精神科医療においてはのだ。


 私の人生がどのように壊されどのように復活したかは改稿中の作品に期待して欲しいので、ここでは言及しない。ただ、このを考えると私は苦しいのだ。


 そこにあるのは、私の中の心の声だ。


 本当は、私だって子供が欲しいのだ。おいたんの遺伝子と私の遺伝子を持ち合わせるに会いたいのだ。


 しかし、年齢の壁や収入の壁がある。そして何よりおいたんは子供を望まない、望めない、作らない、作れないの四重苦だ。おいたんの心の中には、まだ消えない大きな傷がある。おいたんに負担を負わせてまで私は子供を望まない。私が一番望むのはおいたんの笑顔だ。おいたんの笑顔を消してしまう可能性がある事は、人生の選択肢において選んではいけないのだ。


 そして何より、今更どの面下げて子供を持てというのだ。私はK君を傷つけた。K君への義理として、私は他の人と子供を持つ事は許されないと思っている。


 というわけで、最近私はこのぐちゃぐちゃした感情に苦しめられていたのです。妊婦を見ているのはしんどいなぁ。だって幸せそうだもん。そりゃ、幸せだろうよ。


 私の現在が不幸なわけではない。十分幸せだ。しかし、そこにプラスアルファの幸せがあったらどんなに満たされるだろう。その苦労も幸せと思える存在が子供なのだから。


 ここに私の素直な感情を書いてしまったら、少し肩の荷が下りた感じだ。おいたんの前でこの感情の事は話せない。話したらきっとおいたんは苦しむから。


 今日は凄く重苦しい内容になってしまいましたが、やっぱり無雲は呑気にアイス食ってる(寒いのに)という事実がありますので、ご安心ください。(笑)それでは今日もお付き合いありがとうございました!!


 

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