「世界の種」について

 題名を目にするたびに「伯方の塩」と同じ調子でタイトルコールが流れるので、実はちょっと題名を変えたい。


 せ か い の タネ!


 ひとつ前にメモ書きを公開しましたが、ご認識の通りメモの前半(半?)はどこにも反映されておりません。PVをあれこれ見たりして考えていたはずなのですが

 It might seem crazy what I`m about to say

 突如産まれる精子と卵子の生死の話。通勤電車で調べる精子の旅と生理のしくみ。俺の屍を越えてゆけ。


 精子と卵子をモチーフにするにあたって、心がけた条件がひとつ。

 作中で絶対に茶化さないこと。


 さてさて話の筋は一本道、結末目指してよーいどん。


 尖兵や粘菌の襲撃をかいくぐりながら左右どっちの卵管采らんかんさいを目指すのか、という展開も考えたのですが(そして、老戦士とはそこで別れるはずでしたが)、独りになるとイクスが全然動かない。よし一緒に行けお前ら! 各々の役目を果たせゴーゴーゴー!



【各キャラについて】


・戦士

 戦士とはいえ倒す敵も勝利すべき相手も特にいないので「旅人」にするか迷いました。でも「旅人」の語感は長距離走的で話のイメージに合わない。


 △旅人よ駆け抜けて死ね

 ◎戦士よ駆け抜けて死ね。


 戦士ですね。これは環境との戦いだ。

 モチーフに則って束ねた黒髪を強調です。つやつやのマッチョたちです。設定時には短刀を持ってましたが、終盤を書くにあたって削除。胸をかっさばいて心臓を捧げるのはまた別の機会に持ち越しとします。


・イクスとイグレーゴ

 XイクスYイグレーゴです。


 イグレーゴがミヤの壁を突破していたら、産まれる世界は男児となるはずでした。


 イグレーゴに揃えるなら、Xの読みは「シース」となるべきなんですが、舌に馴染んでくれなかったのと音に迫力が欠けるのとでやめにしました。

 エックスをそれっぽく訛らせてイクスです。いくさとはかけてません。



・蘭の君

 卵にちなんだ名前にしよう。

 それはまあ良いんですが、響きが好ましいカタカナが思いつきませんでした。

 卵、らん、蘭、蘭の……君。蘭の君。

 

 蘭の花言葉もいい感じでしたので、この名前に決定。そしてミヤの居場所も蘭の玉座となり、終盤で玉座が奇跡の伸びを見せます。

 置いとくものですね、小道具。

 「姫」ではなく「君」なのは、響きの好みです。卵の黄身とはかけてません。


 現実の卵細胞は基本が「待ち」なので蘭の君もそれに沿うのですが、キャラクターとしてせっかく手足を持たせたのです。ほんの少しでもいいから攻めたい。

 まずは叫ぼう「根性みせろ!」


 結果、蘭の君は根性を見せてなりふり構わずイクスを引っこ抜きます。

 この時、イクスを引っ張るために蘭の君はミヤの外へ手を出しているんですよね。

 場面のイメージにはあったんですが、ちゃんと描写をしていなくて、せっかく限界を超えてくれたのに申し訳ない事をしました。

 

 


・酸の道 / 産の道

 この二つをかけようと思ったのはラストを書いていた時でした。

 かけことばにするならと「酸の道」から「サンノミチ」とカタカナ表記に変えたのですが、狙ってる感が出すぎて却下。

 ムロ、ミヤ、とカタカナに変えて隠そうともしましたが、無駄でした。逆にムロとミヤはいちいちフリガナを振るよりもカタカナの方が「異界っぽさ」が出たのでゴーゴー。



・老戦士

 名は付けず、役割に徹して貰いました。ありがとう。

 役割名で呼ばれる人が意外と活躍する。あるある。

 イクスと共にミヤへ進入し双子とする案もありましたが、各場面の説得力が弱くなる気がしてとりやめ。若いイクスがマッチョの屍を越えるべきと考えましたので、老いぼれは役目を果たして散ります。




・尖兵と粘菌

 好中球とマクロファージです。

 姿や行動のモチーフは「はたらく細胞」ではなく「驚異の小宇宙 人体」



【雑記】

・人称の混在について

 多数マスで押し寄せる戦士たちの場面は書きたい。

 独り待ち続ける蘭の君は内面に寄せないと動きがない。


 と言うわけで前者は三人称、後者は一人称と切り替えて書いてみました。


 下書きの段階では「むし」「たまご」の二話を作って、それぞれの話を組んでから分割しました(戦士たちを当初『むし』と呼んでました)。

 

 節毎で人称を分けたのにカメラがイクスに寄りすぎるなど、完全なマクロ視点を採りきれなかったのはちょっと課題かなと思ってます。

 カメラを近づけてモノローグ調に心理描写をするのが帆多の癖っぽい。

 切り替えるならメリとハリ大事。


 今回はこれぐらい、かな。


 現実における新世界の誕生までには、戦士と蘭の君が出会った後も乗り越えなければならない壁はたくさんあるのです。しかしその部分については割愛させて頂きました。ごめんね。


 割と素直に出てきた前四作と違って、「はたして面白いのだろうか」とかなり悩みながら出てきた種ですが、お楽しみ頂けていたら嬉しいです。

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