「化け猫ユエ」について

作品URL: https://kakuyomu.jp/works/1177354054896395656


 「ヨゾラとひとつの空ゆけば」の第二部が終わって訪れた引きこもりがちなゴールデンウィーク。

 周りの皆さんが「手クセでかきましたw」みたいな事言ってすごいスピードで一作あげたりするのを目の当たりにして、


「よっしゃ僕にも手クセなるものを見いだしてみんとす!」


 と思ったのが始まり。

 帆多は筆速に自信が


 結論。

 手クセだろうがなんだろうが遅い人は遅い。


 一日に5000字とかそういうのはまだまだぜんぜん無理でした。


【原案ができるまで】

 ええっと、最初は別の長編「ヨゾラとひとつの空ゆけば」の脇役を使ったスピンオフで考えてました。

 麦藁色の髪をした魔法使いと、大きなしゃべる黒猫の話。

 でも本編との絡みが面倒くさすぎて却下。麦藁色さんには向こうでやってもらうことがまだある。


 なので設定だけふわっと引き継いで、別人の話にすることに。

 この時点で、「しゃべる猫が相棒」というのも立ち消え。

 だってねえ。しゃべる猫3匹目ってのもねえ。

 

 魔法の設定は共有させ、細かい所はズラしました。王族猫ケトリール vs 王族ネコガトヒアウ、おいでませ vs おいでませい、みたいな。


 ともあれ舞台設定はできた。別作品からの縛りもなくなった所で明るく楽しい冒険活劇にしよう。そう考えてました。

本当です。


 「しゃべる猫」はなくなりましたが、王族ネコは好きだし「猫の魔法」は使いたい → じゃ、魔法の依代として、体の一部だけ持ってることにするか → よし! 眼球だ! という発想に至ります。ヨシじゃねーわ。


 最初は瓶にでも入れて持ち歩かせようと思ってましたが、瓶って割れますし、ネコの眼球の大きさってヒトとあまり変わらないらしいのでじゃあもう眼窩に入れちゃえと。


 ここでちょっと迷ったのが、猫の目を右目にするか左目にするか。ボールペンで紙に書いてみたり、猫と人の目の写真を並べたりしてちょっと検討。


 (○_○)(○ _│)( │_ ○ )


 ……右目かな。


 「右目 意味」で調べたら、「右目は太陽、左目は月」なんてのがありました。主人公の名前が「ユエ(月)」なのはここからです。

(中国語では、天体としての月は『月亮(ユエリャン)』であって、『月』一文字じゃないそうですね。いいの。ユエのお師匠さまがそうつけたの)

 

 こうして、僕の中の14歳が諸手をあげて喜ぶ「右目が猫の魔法使い」が生まれました。



 じゃあなんで右目が猫なの? という問いからもろもろの設定が生える生える。

 使い魔の契約違反による肉体の奪取とか、魔女の力を取り込もうとして起こった事故とか、魔女が人に魂を植えつけてして繁殖する別種の生き物であるとか、このあたりです。

 

 結果、魔女の魂も体内に居座ることとなり、じゃあどこに? → 子宮、となりました。

 

 ここまでで月と子宮。連想して月経。


 モチーフがだんだん重くというか生々しくなっていきます。


 舞台をどうするかも平行して考えていました。

 西洋風だと別の自作とモロ被りするので東洋のどこか。

 直前に読んだ作品の影響で日本+竹藪が真っ先に浮かんだのですが、アクションに向く和装女子の服装がピンと来なかったのでインターネットの海へ。

 中東? 東南アジア? 服装どんなの?


 ──アオザイ。

 やばいアオザイかわいい。


 そしてモデルはベトナムへ。

 アオザイが正装なので、略服も知りたいともう少し調べて見つけたのがこちら(外部サイト)。


https://iconicjob.jp/blog/vietnam/time_and_fashion_vietnam/


 平笠をかぶった女性の写真をみて、これだ、これいい、となりました。

 作中では場面によって五色布かぶせたりと、かなり独自の(おそらく乱暴な)ミクスチャーにしましたが、ユエの服装は上のサイトを参考にしています。


 作中のセリフで「長衣ザイなり開衣バーバなり、上着を着な、上着を」

 の長衣ザイはアオザイです。

 「アオ」が「服」なんですって。


 

 さぁモデル地域は決まった。

 化け物退治の話にするのは決めてたので、どんなのにしようかとまたインターネットの海へ。


 見つけたのがこちら。

https://www.google.com/amp/s/myth.maji.asia/amp/area_asiaSoutheast.html


 ユエが猫だから相手は犬っぽいのがいい、という安易な発想を持っていましたが、犬の化け物は載ってない。

「じゃあ、コン・イオンを除けるための犬を地獄に落とそう」と聞く人が聞いたらめちゃくちゃ怒りそうな思いつきで、天地を反転させて埋めることに。ありがとう霊幻道師。


 いきなり「コン・イオン」と書いても誰もわからないので、そこは漢字の力を借ります。

 子盗子鬼コン・イオン。よしよし。


 で、こういった妖怪に対抗するならってことで魔法とは別枠の技術「まじない」を設ける事に。


 話の上では重要でないので、はっきりと説明していませんが、こんな違いを意識しています。

 

-魔法

 依代を元に何かを呼び出して、その力を借りる。

 「おいでませ」する。

 個人の才能に左右される。

 土地に左右されない


-まじな

 手順に則る事で特殊な事象を起こす。

 「おいでませ」しない。

 誰でも実行可能

 土地に左右される

-のろ

 人に害を及ぼすまじない。


 五色布や平笠が黒犬に効いたのは、事前に偶像として情念を集めてまわったから、というつもりでしたが、これも特に書いてないんで、その辺は、ふわっと。


 猫の目、犬の怪、月の巡り、呪いと揃いまして「月に一度、生理中の女性が犬に子宮を喰われる」という陰惨なストーリーラインが出来上がっていきます。


 明るい冒険活劇どこ行った。


 


【ユエについて】

 他者を助けようとする主人公は別の作品でているので、彼女には別の性格付けがしたいと思ってました。

 また、魔女を宿しモノの怪を喰う人は、果たして元のヒトなんだろうか、という問いがありました。

 

 その結果ではあるのですが、いささか共感能力に乏しく、思いやりが欠けた主人公になっています。わぁ、言葉にするとキツいな。

 



【リールーについて】

 右目なので、主体的に物事に影響を与える事はできません。彼に課せられた役割は文字通り傍観です。

 リールーがいなければ誰もユエの欠損に気付けません。

 

 ユエと体の主導権を交代できる、だとか、リールーの一人称語りで進める、というのも考えました。が、ユエの身体感覚が大事でしたので結局使いませんでした。


 直接的な活躍を書けなくてちょっともったいない事をしました。次は目からビームでも撃とうかしら。


 なお、種族名『王族猫ケトリール』はケト・シーの"ケト"に王家を示す"リール"です。Cait Real. 言語混成。






【雑感、および自己満足的な】


 以前に書いた『わたし、お月様に会いたいの』と『爪』でそれぞれ「月」や「子盗み」をモチーフにして書いているので、僕の中で何かあるんだろうなぁと言う気はします。


 子盗みと言うとまだマイルドですが、『爪』もだいぶ痛い話というか無理矢理の帝王切開なので、なんだろう、僕は子宮に恨みでもあるのか???



 明るい楽しい冒険活劇を書ける日はくるのか?


 頑張ります。帆多の次回作にもご期待ください。


 



////////////////////////////////.

 ここからは、本当に自己満足での記載。


-ユエとシェマの対比

 注)シェマ→長編「ヨゾラとひとつの空ゆけば」第二部のヒロイン。ユエの元ネタ。


ユエ ←→ シェマ

稲穂色の髪 ←→ 麦藁色の髪

琥珀の瞳 ←→ 蜂蜜色の瞳

おいでませ ←→ おいでませい

王族猫ケトリールの目が相棒 ←→ 王族ネコガトヒアウが相棒

月由来の名前 ←→ 猫由来の名前

本名を隠してる ←→ 書類上の姓を名乗らない

彼此不問はさりとわず ←→ 

相棒ラブ ←→ 相棒ツンデレ

////////////////////////////


以上、ご静聴ありがとうございました!

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