第12話
「い、一緒に暮らす!? いやいや、二人とも待ってくれ。その、年頃の男女がだなー」
「もう決めました!」
「へ、部屋はちゃんと別々にするわよっ。あ、当たり前でしょっ」
それだって結局一つ屋根の下じゃん。いや嬉しいけど。
これって……俺にも春が来たってことなんだろうか。
年中無休のくしゃみ鼻水に涙。
マスクをつけたってそれらは気持ち治まる程度で、花粉シーズンは酷い有様だった。
鼻はトナカイかよってぐらい赤くなり、目は充血気味。
顔の作りは普通だと思うが、こんな状況じゃそれ以下にしか見られないし、俺もそれは自覚している。
空気清浄──このスキルのおかげでくしゃみの咳も鼻水や涙も出なくなった!
もちろんスキル効果が切れれば出るもんは出るけど。
そういや俺、異世界に来てから一度も鏡見てなかったな。
鼻の赤いのとれたんだろうか?
「そ、それで返事はどうなのよ」
「ダメだと言われても付いて行きますよ?」
再びグイっと体を摺り寄せてくる。
くっ。この世界のエルフの女性はなかなかにグラマーだ。細いのに出る所は出てて困る!
「わ、分かった。分かったから少し落ち着こう。と、とにかく中で話し合おうよ。ね?」
「分かりました」
「分かったわ」
8帖ほどの小さな小屋には、ベッドとテーブルに椅子、それにクローゼットが一つある。
お茶は簡単なもので、陶器のポットに水を入れ、火石と呼ばれる石を中に入れればしばらくしてお湯になる。
入れっぱなしにすると沸騰し続けるので、石は菜箸で取っておく。
水に触れると発熱する石だけど、発火するほどの熱量は無い。
お湯の中に茶葉を入れて、それで完成だ。
「どうぞ」
「ありがとうございます空さん」
「ありがとう空」
お礼を言われるけれど、お茶の淹れ方は二人に教えて貰ったものだし、茶葉も二人に分けて貰ったものだ。
俺は淹れるという動作をしただけ。
「それで、家のことなんですが──」
「家が完成するまでは、野宿で使うテントで寝泊まりしたらどうかしら?」
「え? テントがあるのか!?」
「叔父様が持っています。だけど小さいので、人間の町で少し大きなものを購入したらどうかと思うのですが」
人間の住む町か。
ここから結構遠いらしく、そもそも森を抜けるのに丸一日はかかって、さらに町までは徒歩で二日の距離だという。
「何日も空気浄化を休んで大丈夫かな」
「それに関しては大丈夫だと思います。里の周辺だけでも、半径3キロは浄化できていますし」
「最も濃い部分の浄化も出来ているんだもの。生命の樹の浄化能力もあるし、数年サボっても平気だと思うわよ」
ははは。数年もサボることはないだろう。
明日は苗木を植える場所を決め、長老に結界を張って貰う。
その日は夕方まで周辺の空気清浄に努め、明後日は町に行こうという話になった。
家の建設はその後だ。
「家は2、3カ月かかるだろうし、しばらくはテント暮らしよ。もちろん雨風が激しい日には里に戻るつもりだけど」
「そうだな。数時間の距離だけど事前に天気が分かれば平気だろう」
「それは私に任せてください。精霊の声を聴けば、天気の予想もできますから」
あぁ、精霊魔法ってそういうのも出来ちゃうのか。まぁ風の精霊とかに聞けば分かるんだろうな。
「よし。じゃあこの件はおしまいってことで。空、スキルはどうなの?」
「おっと、忘れていたよ。えぇっとね──」
忘れる原因を作ったのは二人なんだけど、それは置いとくとして。
まずはカンストした空気清浄のスキルだ。
ホログラムのようなステータス画面のスキル名に触れると、そこに別の窓が現れる。スキル詳細ようの画面だ。
【空気清浄】
自身を中心に半径500メートル範囲内の空気を清浄化させる。
人体に悪影響を及ぼすあらゆる物の排除。
効果時間:24時間
24時間戦える戦士マン並みの効果時間になってる!
しかも効果範囲500メートルって、こりゃまた拡大されすぎだろ。
それから空気操作の確認っと。
【空気操作】
空気中に漂うあらゆる成分やその量、温度等を自在に操れる。
(レベルにより制限あり)
効果範囲:1m×1m×1m
射程:目視でしっかり狙える範囲
効果時間:60秒
空気中の成分量を増やしたり減らしたりできるってことか?
空気中の温度調節も可能って……暑くしてみたり寒くしてみたり?
温度調節は分かりやすいけれど、空気中の成分ってのがなぁ。
酸素、二酸化炭素はまぁ呼吸に必要&吐き出した物だし分かるとして。
あとは窒素……他は?
化学の教科書でもあればなぁ。
けど、俺が分かっている成分だけでも……これ、本当に自由自在だっていうならヤバい性能なんじゃ?
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