第6話

 一瞬でも「俺凄いかも?」と思ったことが恥ずかしい。

 なぜ恥ずかしいかって言うと。



 ニキアス 198歳 男

 職業:魔法剣士 LV113

 属性:風

 筋力:100  体力:95  敏捷:215

 器用:217 魔力:342 幸運:130



 レベル100超え!?

 あと年齢も100超え!?

 スキルに関しては多すぎてもう何が何だかわかりゃしない。

 魔法の方が多いようだけど、剣術っぽいスキルも10以上はあった。

 

 筋力は俺の方が勝っているが、これって種族的なものだよな。しかも誤差の範囲でしかない。


「空くん、エルフのステータスと比べるものじゃないよ。エルフは長寿だ。人間よりその分、経験を積める生き物なんだよ」

「そうよ。だいたいあんた、そのレベルでそのステータスじゃない。わたしやリシェルと比べると、自分のステータスが恵まれてるって分かるわよ。ほら、見なさいよ」


 見なさいといって見せられたシェリルのステータスはこうだ。



 シェリル 82歳 女

 職業:狩人 LV35

 属性:風

 筋力:23  体力:32  敏捷:231

 器用:272 魔力:90 幸運:118


 年齢……ねん……見なかったことにするべきか。

 ここで何か言ったらダメなんだよな。


 敏捷と器用がずば抜けて高いが、幸運を除外すれば確かに俺よりも数値は低い。

 魔力は誤差の範囲でも、エルフだと考えればやっぱり低いのかも?

 それにシェリルのレベルは35ある。

 レベル1の俺と比べれば、確かに俺のステータスはいいほう?



「私のステータスもご覧ください」

「あ、うん。見るよ」



 リシェル 82歳 女

 職業:精霊使い LV33

 属性:水

 筋力:18  体力:28  敏捷:146

 器用:8 魔力:297 幸運:138



 器用8!?

 確かにこれは弓を持たせたらアカン奴だ。

 ニキアスさんほどではないが、やっぱり魔力が高いな。敏捷も俺と比べればやや高い。

 でも筋力や体力、そして絶望的な器用を見れば……。


 いや。俺って幸運を除けば、他は平均して高い数値なのか?


「あの、幸運って何に関係があるんですか?」

「幸運? そんなの決まってるじゃない。運がいいか悪いかよ」

「その数値はね、直近の行動でいくらでも変わる数値なんだ。君は異世界から召喚され、置いていかれたというのもあるから低く出ているね」

「逆に私たちは、空さんと出会ったことで森の浄化ができるようになりましたから、幸運が高くなっています」


 幸運は上下変動する数値のようだ。

 そしてニキアスさんは、


「一人前の冒険者として認められる者は、戦士であれば筋力が50、体力もそのぐらいだろうね」


 と言う。

 え、余裕で超えてるんですけど?

 だが中堅ともなればその二つのステータスが100ぐらいと、倍に膨れ上がる。

 つまり俺は中堅クラス。


「だが君のレベルは1だ。つまり、経験を積めばまだまだいくらでも上がるってことだよ」

「だけど空には攻撃スキルが何もないわ。空気浄化だけだもの」

「だからそこ、ニキアス叔父様に弟子入りが必要なのですね」

「そ、そうなんです! お願いします、ニキアスさん。俺に剣術を教えてください!」


 腕を組み、うぅーんっと唸ったニキアスさん。

 唸っているが、その顔は何故か笑っている。

 そしてポンっと手を叩くと一言。


「マスターと呼びたまえ」


 そう言った。


 マ、マスター?


「いやぁ、君を弟子にするなら、俺のことをどう呼んで貰おうかと考えていたんだよ。師匠とか先生だとありきたり過ぎるだろう? だからマスター。いいだろう?」


 このエルフ……ちょっと……変。


 だけどやることはしっかりやってくれた。

 陽のあるうちは森を練り歩き、里に戻って来てから2時間ほどみっちり剣の修行。


 そんな生活が十日続くと、森を歩くのにもすっかり慣れてきた。


「あ、空気清浄のスキルが50になった」

「え!? ご、ごじゅう!?」


 ステータスを開いて驚くシェリルに見せる。

 空気清浄スキルはレベル9までは+30秒ずつ効果時間が伸びていたけれど、10になると突然効果時間は10分に。

 そこからレベルアップ毎に1分ずつ伸び、レベル10の倍数でガバっと増えた。

 レベル50では130分に!


 2時間以上だ。

 これまでリシェルが風の精霊にお願いしてくれて、俺の周りは空気清浄で浄化された状態を保ってくれていた。

 もう少しレベルが上がれば、俺のスキルだけでぐっすり眠れるようになる。


「あ、効果範囲も広がった!」

「50になってようやく広がったのね。それで、いくらになったの?」

「あぁ。半径3メートルから、半径……100メートル……」

「広くなりすぎじゃない!?」

「そんなこと俺に言われても、スキルの仕様なんだから知らないよ!」

「ふふふ。最近二人の仲が良くなって、私嬉しいです」

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