203 ボアボアの家

 俺は少し気になっていたことを聞いてみる。


「ヒッポリアスの仲間は?」

 同種の仲間はいるのかと尋ねたつもりだったのだが、

『ておどーる!』

 ヒッポリアスは嬉しそうに言う。


「そうだな。俺はヒッポリアスの仲間だよ」

『ぴいもふぃおも、しろも……』

 ヒッポリアスは嬉しそうに仲間の名前を上げていく。


「ぴぃ~」

 仲間と呼ばれて、俺の肩に乗っていたピイが嬉しそうに鳴いた。


「ヒッポリアスは仲間がいっぱいだな」

「きゅお!」

 嬉しそうで楽しそうなので、ほっこりする。


「ヒッポリアスと同じ種族の者たちはいるの?」

『きゅぅお~? わかんない』

「あったことない?」

『ない!』

「そうか」


 ヒッポリアスが非常に珍しい種族なのは間違いなさそうだ。

 会話しながら、ヒッポリアスとピイと少し歩くと、ボアボアの家の前にいるベムベムたちが目に入った。


「べむ!」

 俺たちに気付いたベムベムがよたよたと駆けてくる。

 その手には俺が作ったスコップが握られていた。


「ぶぶうぃ」

 ベムベムと遊んでいたらしいボエボエも走ってくる。


「ベムベム、もう起きたのか」


 ベムベムとは今朝ぶりである。

 今朝、夜明け直後まで、ベムベムはヒッポリアスの家にいた。

 そのベムベムを、俺がボアボアの家に送り届けたのだ。

 ボアボアの家についたベムベムは陸ザメたちに混ざって眠っていた。


「べぇむ」

 どうやら、あれから眠って、みんなと一緒に起きたらしい。


「ボエボエもおはよう」

「ぶぶい!」

 ボエボエも元気だ。


 俺はしゃがんで、ベムベムとボエボエを撫でた。


「ベムベムもボエボエも朝ご飯は食べたか?」

「べむう」

「ぶい!」

「そうか、食べたのか」

「べむ?」

「ん、シロたちか」

「べむ!」

 ベムベムはシロや子魔狼たちがいないことが気になったらしい。


「シロたちはヒッポリアスの家の方にいるんだよ」

「べぇむ~」

 ベムベムは子魔狼たちと遊びたかったらしい。

 子魔狼たちが来ていないことを残念がっていた。


 ベムベムとボエボエと一緒に、ボアボアの家の前まで移動する。


 ボアボアの家の前では飛竜がのんびりと日向ぼっこしていた。

 そして、ボアボアは作ったばかりのぬた打ち場で、気持ちよさそうにぬた打っている。

 大人の陸ザメたちは近くの雑草を食べていた。

 陸ザメたちは手に自分の農具を持っているが、全く使っていないようだった。

 宝物だから持っているだけなのだろう。


「べむ…………むしゃ……べむ」「……むしゃべむしゃ…………」


 陸ザメたちが雑草を食べるペースは非常に遅い。

 旧大陸のヤギに比べて、数分の一、いや数十分の一のペースかもしれない。

 陸ザメたちはニ十頭ほどいるが、全員合わせて旧大陸のヤギ換算で一、二頭ほどの除草能力だろう。


「ちょうどいいのかな」

 陸ザメ一頭が、ヤギ一頭分の働きをするならば、かなり広大な範囲の草が食べ尽くされてしまう。


「べむ!」「べむ?! べむう!」

 俺に気付いた陸ザメたちが挨拶すると、走ってくる。


「みんな、おはよう」

「べむべむぅ」「べむ!」

 走って来た陸ザメたちは、綺麗に整列している。


「べむべむっ」

 どうやら、陸ザメたちは俺に撫でて欲しいらしい。

 だから、並んで撫でられ待ちをしているようだ。

 俺は、順番に陸ザメたち全員を撫でていく。

 なぜかボエボエとヒッポリアス、ベムベムまで並んでいた。


「俺のことは気にせず、食事を続けてくれ」

「べむ!」

 俺が撫でると、陸ザメたちは満足したのか食事に戻っていった。

 なぜか、ボエボエも陸ザメたちについて行った。

 どうやら、ボエボエは陸ザメたちが好きらしい。


「ベムベムも食事しなくていいのか?」

「べえむ!」

「ふむ。お腹いっぱいと」

「べむ!」


 子供だから少食ということだろうか。

 子魔狼たちの場合、シロよりも食事回数は多いのだが、陸ザメは違うのだろうか。

 少し気になった。


 その時、飛竜が頭を俺にこすりつけに来た。

「ぐるる~」

「飛竜、おはよう、今朝ぶりだな」

「ぐるる」

「ちゃんとご飯食べたか?」

「ぐぅる」


 どうやら、ボアボア、ボエボエたちと一緒にご飯を食べたようだ。

 陸ザメは草食だが、飛竜とボアボアは雑食だ。

 食べ物の種類が異なるのだ。


「そうだ。飛竜、今時間あるか?」

「ぐる?」

「今、アーリャがシロに魔力の使い方を教えているんだが、飛竜にも手伝ってほしいらしい」

「ぐるる!」


 任せろと言うと、すぐに飛竜は拠点へと飛んでいった。


 俺は飛竜を見送った後、ぬた打っているボアボアを眺める。

 ボアボアはとても元気そうに見えた。


 俺が眺めていることに気付いたボアボアがやってくる。


「ぶうい」

「ボアボアおはよう。怪我はもういいのか?」

「ぶぶい!」


 ボアボアは大丈夫だと力強く返事する。


「念のために傷を見よう」

「ぶい!」


 俺はボアボアのお腹を調べる。

 魔熊モドキの角にやられた傷は、完全にふさがっていた。


「うん。さすがボアボア。回復が早いな」

「ぶいぶうい!」


 ボアボアは俺の作ったポーションのおかげだと言ってくれる。


「もちろん薬の効果もあるが、それよりもボアボアの回復力高さの方が大きいよ」


 俺がボアボアの体を撫でると、

「ぶい~」

 ボアボアは嬉しそうに、俺に体を押し付けて来た。

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