69 子魔狼とテオドール
ヒッポリアスは俺のすぐ近くに顔を持ってくる。
床にぴたりと下あごを付けている格好だ。この格好をヒッポリアスは良くとる。
なるべく子魔狼に視線を合わせようとしているのだ。
ピイはプルプルしながら子魔狼たちのそばによる。
ヒッポリアスやピイも子魔狼たちが可愛いのだろう。
「あぅあぅ!」
「きゅお~」「ぴぃ」
ヒッポリアスは俺にじゃれつく子魔狼たちの匂いを嗅いだりしている。
そして、ピイは子魔狼たちを撫でるように優しく触れていた。
俺は子魔狼たちと遊びながら、その鳴き声の意味をテイムスキルで解読する。
子魔狼たちはもうヒッポリアスもピイも怖くないようだ。
赤ちゃんなのに大したものだ。
「あぅ!」
「む? 少し喉がかわいているのか?」
俺は飲み水を皿に入れると、子魔狼たちの前に置く。
ちなみに飲み水も皿も魔法の鞄に入れておいたものだ。
すぐに子魔狼たちはぺちゃぺちゃ水を飲みはじめた。
「好きなだけ飲みなさい。おやつも食べるか?」
「ぁぅ!」
どうやら子魔狼は小腹が空いているようだった。
なので、焼いた肉を取り出すと、細かくすりつぶして皿に乗せる。
「わむわむわむ」
子魔狼たちは美味しそうに食べる。
「ケリーが小分けにしてあげた方がいいって言ってたよな」
まだ子魔狼たちは痩せているのでなるべくおやつも上げた方がいいだろう。
「子魔狼用のおやつもまとめて作っておくか」
魔法の鞄に入れておけば、腐ることはないので安心だ。
そして、俺はおやつを食べている子魔狼を優しく撫でる。
おやつを食べ終わった子魔狼はまた俺にじゃれつき始める。
しばらくすると、一頭がとことことトイレに歩いて行った。
そして用を足す。
「おお、えらいぞ、トイレがわかっているんだな」
トイレを成功させた子魔狼を、褒めて撫でまくった。
「あう!」
トイレした子魔狼も誇らしげに尻尾を振っている。
「はい、そっちでみんなと待っていてな」
そして子魔狼を毛布に移すと、トイレの処理を済ませておく。
それが終わったころには、子魔狼たちは気持ちよさそうに眠っていた。
「よしよし。沢山眠りなさい」
俺は子魔狼たちのそばに横たわる。
子魔狼を撫でたいが撫でたら起してしまうかもしれない。だから我慢する。
寝息を立てる子魔狼たちを眺めているうちに、俺もいつの間にかうとうとしてしまった。
「わむ」
ふと気づくと、一頭の子魔狼が起きて俺のお腹の上に乗っていた。
他の二頭は俺にくっついて眠っている。
「お前も眠っときなさい」
そういって、俺のお腹の上に乗っていた子魔狼を優しく撫でる。
「ぁぅ……」
子魔狼はしばらく俺の指を甘噛みしたりしていたが、うとうとして眠りについた。
俺もウトウトし始めたころ、フィオとシロが帰って来た。
「ねてる?」「わふぅ?」
「ああ、子魔狼たちはお休み中だよ」
そう言ったのだが、子魔狼たちは目を覚ます。
フィオとシロの匂いで起きたのだろう。
「わふ」
フィオとシロは起きた子魔狼たちを撫でたり、臭いを嗅いだりする。
子魔狼たちも「きゅんきゅん」鳴きながら、フィオとシロに甘えていた。
そして、俺はフィオたちに子魔狼たちを任せて自分の毛布へと戻った。
ヒッポリアスとピイも一緒に俺について来た。
すると、フィオが子魔狼たちを撫でながらこっちをじっと見る。
「どうした? フィオ」
「わふ……。こまろ?」
「ん?」
「なまえ」
「……子魔狼たちに名前を付けたいのか?」
「そ」「わふ」
どうやら、シロもフィオと同意見のようだ。
「それはテイムしたいということか? それともただ名前を付けたいだけ?」
「んー」「わふぅ」
フィオは悩んでいるが、シロはテイムしてやってほしいと言っている。
『きゅお。ていむしてあげて』
『ぴぃ~~。ぴいもさんせい』
ヒッポリアスもピイもテイム、つまり従魔にしてあげて欲しいという。
「うーむ。だが、子魔狼は赤ちゃんだからなぁ」
『きゅおー。ておどーるにていむされると、しあわせ』
『ぴいも!』
「ありがとうな、嬉しいよ、ヒッポリアス。ピイ」
俺はヒッポリアスを優しく撫でる。
ありがたいことに、そう言ってくれる魔獣は少なくないのだ。
テイマー冥利に尽きるというものである。
俺の魔力は魔獣にとって魅力的らしいので、それも関係しているのだろう。
そんなことを考えていると、フィオが言う。
「こまろ、ていむ!」
「フィオも子魔狼をテイムしてあげて欲しいのか」
「わふ!」
「そうか……。うーむ。子魔狼たちはどう思う? テイムされてもいいのか?」
「くぅーん」「くーん」
「ふむふむ」
「ゎぅ!」
俺は子魔狼たちから念入りに話を聞く。
どうやら、子魔狼たちもテイムされたいらしい。
「そうか……。ならば、俺とフィオ、どっちにテイムされたい?」
「くーん」「ぁぅ」
「ふむふむ。なるほど」
子魔狼たちは悩んでいるらしい。
だが、フィオが言う。
「こまろ! ておどーるていむ!」
「フィオは俺がテイムした方がいいと思うのか?」
「おもう!」
フィオはそう言って深く頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます