Part10:決着 → 転移 → 第一異世界人との接触
「ふぅ……、ふぅ……、ふぅ……」
度重なる肉体強化の末に、勇者ちゃんの身体が赤熱しているのが分かります。ゆらゆらと赤い湯気が立っていますね。血が沸騰しているのでしょうか。勇者ちゃん、立っているのがやっとなのではないかと思われます。もう目の前の魔王と心中する事しか頭にないかも知れません。
「ゼノ君、もう止めてぇ! あなたは十分に頑張って来たわぁ!!」
「うっ!? ~~~~、~~~~」 ぺらりら♪ ぺらりら♪
何と勇者ちゃん、老婦人の声を受けてダメ押しでさらに補助魔法を重ね掛けしましたね。あっ、血を吐いています、大丈夫なんでしょうか。
「ぜぇ、ぜぇ、ま、魔王、もう次で、終わりにしよう」
「ふん、いいだろう。貴様の終わりをもって世界の終わりの始まりにしてやろう」
さて遂に勇者ちゃんと魔王の最終決戦です! もう私は目を離しませんよ、このまま実況を続けます!!
この実況の目的は勇者ちゃんが魔王を倒した後、勇者ちゃんを異世界へと転移させる事です。そしてその後の生活を実況する、というのがメインの内容になってるんですね。
だというのに肝心の転移をさせる事なくパートを重ねてしまいました。まぁ今現在何パート目に当たるのか分かりませんが。
なんにしても、もうそろそろ本題へ入らないと視聴者に見放されてしまいますからね。このパートで勇者ちゃんを異世界に転移させて、何がどうなったのか理解出来なくて呆然とした勇者ちゃんの表情までは撮り終わりたいところ!
さてでは転移させる為のカウントダウンを行いますねっ。
勇者ちゃんが世界を救った瞬間に、魔王との決着が付いたその瞬間に、勇者ちゃんを異世界へと、転移を、させますからね!!
「行くぞ魔王!!!」
勇者ちゃんが伝説の剣を両手で構えて魔王へと走り出し、3・・・
「望むところだ、勇者よ。そなたに、この世界に滅びを与えてやろう」
魔王が両手を広げてそれぞれ魔力を籠め呪文を唱えて、2・・・
勇者ちゃんが魔王へと斬りかかり、眩しい光が当たりを照らして爆発音が響きました!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
老婦人が勇者ちゃんへと手を伸ばし走り出して、1・・
今! 勇者ちゃんをこの世界から離脱させ、あらかじめ用意してあった異世界の座標へと飛ばします!!
んっ? 何か思っていた感触と少し違いますが、人間を異世界へ転移させるのも数千年振りなのでこんなもんでしょうかね。さすがにこの大事な場面で勇者ちゃんが元の世界から動いていないってミスはしないと思いますが、確認の為に魔王城玉座の間を見ておきましょうか。
ほらっ、勇者ちゃんいない! 上手く転移させられたって事ですね!! それにしても玉座の間はボロッボロですね、
砂埃が舞って見えづらいですが、人の影はないです、ね……。魔王は影も形もなく殲滅? されたよう、でっす、ね。うん……。
元々ね、魔王城には魔王以外いませんでしたからね、へへへっ。
おっと勇者ちゃんが転移した先である異世界を確認しましょうそうしましょう!
はいはい次なる実況の舞台はこちら、緑広がる草原でっす。え~っと、勇者ちゃん勇者ちゃん勇者ちゃん、どこかなぁ~、いるよね大丈夫だよね、ねっ!?
いたっ! いました。呑気に仰向けで寝っ転がってますね。うわぁ全身複雑骨折してますね。もしかして転移させる時に座標間違えたかな? 地面に埋もれてますね。隕石みたいに落っこちたのかも。ゴッドパワーで全回復しといてあげましょうかね。えいさっさのホイっと。
「こっちだと思うんだけどなぁ。お空から人が降って来るのが見えたけど、落ちたとしたらここらへんだよねぇ」
あらま、第一異世界人を発見しましたよ。髪の毛が銀色ですね、長い髪の毛をツインテールにした可愛らしい女の子です。10歳くらいですかね。
「うっ……」
タイミング良く勇者ちゃんが目覚めたようです。身体の傷は全てゴッドパワーで全回復させたのですが、とある事情で勇者ちゃんは身体を自由に動かせない状況なんですね。
「あっ、こっちから声が聞こえて来た!」
女の子が勇者ちゃんの呻き声を聞きつけ、駆け寄って来ました。無事に見つけてもらえて良かったね、勇者ちゃん。
「男の人だ!! 大丈夫? どこか痛いの?」
勇者ちゃんの傍に膝を付いて、女の子が話し掛けています。勇者ちゃんは何とか目を開け、女の子に返事しようとしますが、なかなか声が出ない様子ですね。溺れているかのように口をぱくぱくさせています。
「大変! どうしよう、どうしよう男の人が死んじゃう!! 男の人は大切なのに、守ってあげないとダメなのにっ」
あぁ可愛らしい! 何とか助けたいけどどうすれば良いか分からないんですね。頑張って!
「お姉ちゃんを呼んで来る? でもその間、男の人が1人になっちゃう! そんなのダメダメっ!! どうしようどうしようどうしよう……」
唇を尖らせて困っている女の子。何て絵になるんでしょうか。きゃわわっ。おっと、勇者ちゃんが右手を伸ばして女の子に触れようとしています。イエスロリータ、ノータッチですよっ! ってそんな事を言ってる場合ではないですね。
「えっ、何なにどうしたのっ?」
女の子が勇者ちゃんの手を取ります。そしてその手を引いて勇者ちゃんの身体を起こしてあげました。
「あれっ? 男の人、軽いね? もしかしたらワタシでも抱っこ出来るかも?」
女の子が勇者ちゃんの背中を支えて身体を起こし、勇者ちゃんを三角座りにさせました。そして女の子が正面から立って、勇者ちゃんを立ち上がらせます。勇者ちゃん、身体に力が入れられずふらふらですが、女の子がしっかりと支えてあげていますね。勇者ちゃんの胸元くらいしか身長がないのにとっても頑張っています。偉い!
そして女の子が勇者ちゃんの手首を持ち上げて、勇者ちゃんの脇の下に女の子が頭を入れました。そしてそして女の子が勇者ちゃんの足の間に腕を入れて、膝の裏を持ちます。勇者ちゃんの身体を肩の上にしっかりと載せて、女の子が立ち上がりました! 足の間に通した手で勇者ちゃんの手首を持ちました。
完成です。これぞ正にお米様抱っこ! 10歳くらいの女の子による、勇者ちゃんのお米様抱っこです!! 見事に勇者ちゃんをその背中に担いでいますね~。
お米様抱っこ、正式名称はファイアーマンズ・キャリーと言います。この動画を見ているそこのあなた! 要救助者がいた場合はこのようにして担ぐと比較的楽に人を抱っこする事が出来ますよ。この動画では要救助者よりもかなり背の低い女の子が実践しているので、もし気になった人はちゃんとそれ用に製作された別の動画を参考にして下さいね! 神ちゃんとの約束だよっ!!
「やっぱり男の人軽いんだね。これなら村まで連れて行けそうだ♪」
女の子が鼻歌交じりでスキップしながら来た道を帰って行きますね。肩にはぐったりとした勇者ちゃん。救助と言うよりも、拉致?
はい、こうして勇者ちゃんを無事にw 異世界へ転移させる事が出来ました!
何か忘れてるんじゃないかって? いやいや、何にも忘れてないよ、何もなかったんだよ? ねっ、勇者ちゃんが無事異世界転移出来たんだからいいよねっ??
この次のパートからは、異世界へ転移してしまった事に戸惑いつつも新しい生活に奮闘する、そんな勇者ちゃんの姿を実況する予定です。
この動画が気に入った方、チャンネル登録と高評価をよろしくお願いしますね!
それでは次回の動画でお会いしましょう、バイバイっ♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます