プロローグ
世の中には、理不尽だなって思うことが多々ある。
例えば、普段から健康に気を使って、いろんな健康食品や健康器具に金使ってる奴が意外と早死したりして、逆に普段から酒にたばこばかりやって、自堕落な生活を送ってる奴が意外と長生きしたりするんだよな。
じゃあ、今のオレにその理不尽さを嘆く資格があるかって言われると……多分ない。
さっきの例え話で言えばオレは間違いなく校舎に部類するだろうからな。
ただ、今このときばかりは、理不尽さを嘆きたくもなる。
おそらく誰であったとしてもそうだろう……
…………
――クソッ!! このっ!!
「んんん!! んんー!!」
オレは必死になって身体を捩らせた。
手を動かし、足を上下に振る。
言っておくが、オレは決して気が触れちまったわけじゃない。
気がついたらオレは、この部屋で両手両足を縛られた状態で床に転がされていたからだ。
ちなみに口はガムテで塞がれてる。
そして、オレは今必死にロープをほどこうと足掻いてるってわけだ。
しばらく足掻き続けた甲斐もあったのか、後ろ手に縛られているロープが緩んできた。
「うん! ん――!!」
手首を縛っていたロープが取れた。
手が自由になれば、後は簡単だ。
体を起こし、足を縛っているロープを解く。最後に口に貼られたガムテを勢いよく剥がした。
「いって――ッ!」
――クソッ!
怒りをぶつけるようにして、丸めたガムテを思いっきり床に投げ捨てた。
口をさすりながら立ち上がり、ぐるりと部屋を見渡す。
壁、床、天井、見渡す限りコンクリートで、唯一の出入り口である扉だけが鉄でできている。
出入り口の傍の壁際には机が設置され、その上には電源の入っていないCRTモニター――ブラウン管のテレビみたいなやつ――が1台とキーボードが置かれていた。その壁の上方には大きなデジタルタイマーがある。
その反対側の壁の上の方には、机の上のモニターを俯瞰で捉えるようにしてカメラが設置されていた。
間違いなくあの場所だった――
「なんなんだよ……」
悪態つき、首元を掻こうとしてコツンと硬い音がなった。
「おい……これって……」
確認しなくてもわかる。
――俺の首には今、首輪がはめられている!!
俺は慌てて鉄扉に駆け寄った。
ノブをガチャガチャとやって扉を開けようと試みるが、当然のように開けることはできない。
閉じ込められた……
「ふざけんなって!」
――なんで俺がこんな目に!?
状況がまったく理解できない。
ただひとつだけ、思い当たるフシがないわけではない。
今思い出せる最後の記憶。
――あのとき、扉の向こうにいた仮面の人物……
『どうやら、お目覚めのようだね』
「――ッ!?」
室内に機械を通した声が響くと、オレは反射的にカメラの方を向いていた。
『さて、君がこの部屋から出る方法は……君自身が良く知っているはずだ』
「おい……それって……」
この状況で思いつく部屋から出る方法なんて、一つしか思い浮かばない。
俺はゆっくりとパソコンのモニターの方に向きを変えた。
『ああ、話が早くて助かるよ』
狙いすましたかのように、モニターの電源が入った。
何が始まるのかとモニターに近寄る。
『いろいろ聞きたいこともあるだろうが、まず最初に見てもらいたいものがある』
モニターの画面に、昔のフィルム映画のようなカウントダウンが映し出される。
3――
2――
1――
「――なっ!?」
映し出された映像を見て反射的にモニターを両手で掴んでいた。
そこに映し出された映像は今俺がいる部屋と全く同じ部屋。
ただし、そこににいるのは俺じゃなくて、横たわる7人の男女だった。
――なんで? いや、そんなはずは!?
映像から一際高い音が流れると、横たわっていた7人の内、ひとり女が体を起こした。
それが、このゲームの始まり……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます