強さの証明

 次の日のお昼頃。僕たちはギルドの中にある酒場で水を飲んで待っていた。


「まだかな?」

「まだなんじゃない?」

「まだか〜」


 副ギルドマスターと戦う為に来たのは良いが、その人が全く来ない。受付嬢に話を聞きに行ったが10分位待っててと言われ30分以上待たされていた。


「お? お前たち、ギルドに来てたんだな」

「あ、お前は、あの時の……」


 僕たちに話しかけてきたのは、副ギルドマスターではなく城壁のところで話しかけてきたスキンヘッドの男だった。その隣には、あの時この男を連れて行った女の子が立っていた。


「あんた、また怖がらせて!!」

「ね、姉ちゃん?! ち、違うって!! ちょっと話したいだけなんだよ」

「ほんと?」

「ほんとだよ!」

「全く、1人で行動しちゃダメだって言ってるでしょ?」

「ごめんごめん。だから、そんなに殴らないで」


 姉ちゃんと呼ばれたその人は、男が何かを喋るたびに殴っている。

 ってか、この人達は一体誰なんだろう? この人たちが副ギルドマスター?


「すみません。貴方達誰ですか?」

「そうだったわね。私はメーラン。こっちが弟のラーラン。よろしくね」

「「「弟!?!?」」」


 弟と言われた大男ラーランの身長が190cmを超えており、姉のメーランの身長が130cm程なので、約60cmの身長差がある。

 そんな2人が兄弟に全く見えない。顔も似てない。その後も話を聞いたが血は繋がっていると言う事だ。

 副ギルドマスターはその後、別の人がきちんと来た。


「いやー、すまないね。お待たせ」

「あ、ギルドマスター」

「だから、俺は副ギルドマスターだって」

「良いじゃん。ギルドマスターはもう居なくなってるんだから。貴方がギルドマスターで。それに、副って付けるのめんどくさいんだけど」


 ギルドマスターはいるけど、今は不在なのか。そのうち会ってみたい。


「あのー、今回僕たちと戦うのって貴方ですか?」

「そうだ。お前たち2人は、自分の仕事でもしてるんだな。それじゃ、君たちはこっちに来てくれ」

「3人とも。頑張ってね〜」


 2人は僕たちを手を振って見送ってくれた。副ギルドマスターについて行くとギルドを出て裏路地に入りその奥にある大きな建物に向かった。


「こんなところに、こんな大きな建物があるんだな」

「ねぇ。全く見えなかったよ」

「なぁ、おじさん。ここでやるのか?」

「お、おじさん。ま、まぁ良いか。そうだよ。今からここで君たちの実力を見せて貰うよ」

「おじさん。強いの?」

「いやー、現役だった時はSランクではあったけど、現役を引退してからは全くだからな強くないよ」


 そうは言うが、この人から出でいるオーラがまだまだ戦える感じではあった。


「さて、それじゃ、やりますか。どうする? 1人ずつやるかい? それとも、3人で掛かってくるかい?」

「あー、1人ずつでやるよ。良いよね?」

「うん。賛成」

「私もー!」

「誰からでも良いぞ」


 副ギルドマスターはそう言って準備運動を始めた。


「なぁ、誰からやる?」

「私やりたい!」

「俺もやりたい」

「じゃあ、じゃんけんね」

「最初はグー! じゃんけんぽん!!」


 リュクスがグー。カリーナがパーでカリーナからやる事になった。


「やったー!!」

「俺が……カリーナに負けた……? ば、馬鹿な」


 カリーナは普通に喜び。リュクスはものすごい落ち込んでいる。今までにないほど落ち込んでいる。カリーナに負けた事がここまで悔しいらしい。たかがじゃんけんで落ち込み過ぎじゃない?

 っと、危ない。これは言っておかないといけない。


「ちょいちょい2人とも。絶対に本気出さないでね」

「うん」

「……」

「リュクス。そこまで落ち込む?」

「……」

「まぁ、良いや。カリーナ、頼んだよ」

「うん」

「最初は君か。よろしくね」

「よろしく〜」


 2人が挨拶を終えたタイミングで、ルールの説明が行われた。ルールは簡単だった。殺す以外のなんでもあり。簡単だね。


「では、スタート!!」


 審判の合図と共にカリーナが地を蹴り副ギルドマスターの脚を蹴り転ばせにかかる。それを、上に飛んで避けるが、まんまとカリーナの作戦に引っ掛かる。そのまま、上に飛んだ副ギルドマスターの体を低いところにいるカリーナが蹴り上げた。


「さぁ、どうする!」


 カリーナがまだやる気のようで上を見上げるが、副ギルドマスターはドスンッと地面に落ちた。


「え? 嘘……だよね? ど、どうしよう」

「勝者。カリーナ!!」


 その日は副ギルドマスターが気絶して夕方まで起きなかったので、続きは明日行われる事になった。


「カリーナ。あれって、本気じゃないよね?」

「う、うん。MAX100としたら10程度」

「うん。ありがとう。リュスク。明日はMAX100の1でお願い」

「……めんど」

「わ か っ た ?」


 僕が、笑みを浮かべながらそう問いかけると、ぶんぶんと頭を上下させた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る