世間は忙しい
二人に魔王と勇者である事を話すと、こんな風に返した。
「「それがどうしたの?」」
と。
「俺は魔王とか興味無いよ。これからもカリーナを弄って遊んで、フォレスに叱られる生活を送っていくんだ」
「私も、倒さないといけない魔王がここにいる。宣戦布告もして来たからね。絶対に一泡吹かせてやるんだ!! そして、フォレスに甘やかされて生きていくんだ!!」
「2人とも……」
僕はつい嬉しくなり少し涙が出て来た。だって、地球出身の僕からしたら、勇者と魔王は敵対して絶対に戦わなければいけない存在だと、そう思っていたからだ。
「それでも、何処かのお偉いさんとか魔族とかが魔王と勇者のリュクスとカリーナを仲間にしようとするだろうけど、僕が守るよ!!」
「よろしく頼むよ」
「ありがとう!!」
僕が守るのだ。そうしないと、お偉いさんとか魔族が2人に殺されてしまうかもしれない。そう、守るのだ。2人からお偉いさん達を。
「よーし。それじゃあ! 今日は更に豪華な食事にするぞ!!」
「楽しみにしてるよ。院長」
「私たち遊んでくるから、頑張ってね院長」
その部屋には気合を入れて拳と拳をぶつけて痛がっている院長と僕が残った。
「院長。僕も手伝いますよ」
「お、おう。ありがとう」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、少し痛いが大丈夫だ」
「そ、そうですか」
僕たちの5歳の誕生日と魔王と勇者に選ばれた2人を祝うパーティが開かれた。
「ほら、いっぱい食べろよ。この俺とフォレスが作った料理だ。不味いわけが無いからな!!」
「ってか、なんで、同じ誕生日のフォレスまで手伝ってるの?」
「あぁ、まぁ、良いじゃないか。な?」
確かに、リュクスの言う通りだ。けれど、院長だけの料理よりも、僕も一緒に作ったほうが見た目が良いのだ。折角の誕生日、見た目が良い方が断然いい。
「……美味い」
「う〜ん!! 美味しい!!」
リュクスは器用にナイフとフォーク、スプーンを使って味わうように食材を噛みしめて食べている。一方カリーナは両手に骨付き肉を掴みかぶりついている。
これはいつもの光景なのでもう慣れている。けど、カリーナの口元についたタレなどは僕が拭っている。
「父親になった気分だ」
「えへへ〜。ありがとう!!」
カリーナはお礼をいうと直ぐに両手の骨付き肉にかぶりついた。
僕たちの誕生日パーティが終わり数日が経過した。
その頃、魔界と人界の両界では慌ただしい日々を過ごしていた。
先代の魔王と勇者は両者相討ちと言う事で決着が付き9年の月日が経過していた。そして、今年で10年目になった日に空から光が降り注いだ。
その光は再び魔王と勇者の戦いが始まる混乱の幕開けであった。
「勇者を!! 勇者を探せ!! 勇者はまだ幼い!! 今から訓練を施せば魔王を倒す事が出来る!! 勇者の右目には勇者の紋章が浮かんでいる!! 早急に探し出すんだ!!」
人界では勇者を探し出し魔王を打ち倒すべく国王直々に指揮をしていた。
「魔王を!! 魔王様を探せ!! 人界を侵略し!! 我らの強さを人界を侵略し証明するのだ!! 魔王様の左目には魔王の紋章が浮かんでいる!! 見つけた者には褒美を出そう!! 早急に見つけ出すのだ!!!」
魔界では魔王様を探し出し人界を侵略するために全ての魔物や魔族で探し出すように指揮をとっている。
いかに早く見つけだすかでこの先の、人界と魔界の未来が変わるのだ。
その頃、当の魔王と勇者はと言うと、
「見てみて!! 剣!! 剣出来たよ!!!」
「見ろ。槍を作ったぞ」
「へーん。私の剣の方が強いもん!!」
「えい」
「ひっ!?」
魔力で剣と槍を作って遊んでいた。リュクスが槍の先で油断しているカリーナの脇腹を突き、カリーナを怒らせ遊んでいる。
「ほらほら、こっちだよ〜」
「待て〜!!」
「2人とも!! 何やってるの!?!?」
「「フォレスだ!! 逃げろ〜!!」」
「こら!! 待て〜!!!」
魔王と勇者の誕生で世間は忙しいのに、当の本人達はそんな事全く知らずにいつも通り遊んで過ごしていた。
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