第17話 たとえ、そうだとしても

「何をするんですか?」

 話し合いをしていた部屋から移動して、トレーニング場へとやって来た。今度は集まった人は少なくカエデとミオリ、ゼフドとルモカとツミキの五人。始めて見る場所に辺りを見回しているツミキをよそに、カエデが何やら始める準備をしている

「まぁ、見てもらえれば分かるか。カエデ君、頼む」

「……はい」

 ゼフドがカエデに合図を送り、それに返事をすると、四人から少し離れて、部屋の真ん中に一人立つ。しばらくすると、どこからか小さく聞こえてくる歌声。ツミキが、歌声のする方を探し始める

「カエデちゃんの、うた……」

 か細く聞こえる歌声と共に、カエデの右手が部屋の柱を殴った。すると、ほんの少し割れていく柱。今度は大きく歌うカエデ。そして、同じく右手で地面をぶん殴ると大きくひび割れていた


「カエデ君、お疲れ。もう大丈夫だ」

 ゼフドの声で歌うのを止めるとふぅ。とため息ついて、ツミキの方へと歩いてく。いつもと違ったカエデの様子に、ふと初めて会った時のことを思い出していた。カエデがちょっと苦笑いでツミキの隣に来ると、ツミキがカエデに抱きついた

「この歌の力で能力の加減が出来るのは、ここではミオリ君とカエデ君の二人だけだった。だが最近、新たに歌の力で我々を狙ってくる人物がいるんだ」

 楽しそうなツミキ達を見つめ、淡々と話すゼフド。話の内容に、一気に真面目な顔になる二人

「あの子……」

 ツミキがポツリ呟いた。思い出していたのは、何度も会い狙ってくる女の子

「そう、シキと言う少女とシンクという女性の二人だな」

「シキちゃん……」

「主にツミキ君を狙っているのは確か。そして、我々の資料に……」

「ツミキ、帰るんだ」

 またゼフドの話しに割り込むミオリ。ゼフドに睨み、再び語気を強めて話を続ける


「もし歌の力があったとして、ツミキに戦闘に入れるわけにはいきません。危険過ぎます。私は許可しません。ツミキは……時々私達に会って買い物したり遊んだりしてくれたら、それで良いのです」

「まあ、力があるかどうかも分からないし、すぐ頼るわけでもない。そう怒るな」

「ですが!」

 ゼフドに対し怒るミオリの声を最後に、静かになるトレーニング場。先程と同じまた不穏な雰囲気に、戸惑うツミキ。恐る恐るゼフドに話しかける

「……あの、どうしてうたが力に変わるんですか?」

 ツミキの質問に、今度はツミキを睨む

「知らずに帰るんだ。明朝、私が自宅へ送る」

「それはダメね。ミオリちゃん一人で帰ってこれるの?」

 ルモカの言葉に顔を赤らめるミオリ。カエデがまた苦笑いをしたのを見たゼフドが、ため息ついたあとツミキに声をかける

「とりあえず、一旦話は終わろうか。ツミキ君、お疲れ。今日はゆっくり休んでくれ」

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