第10話 微笑み月夜

「今日は、指令もないだろうからな……」

 ツミキ達が、夕ご飯を食べている頃。ツミキ達が知らない遠い場所で、また一人、窓辺から空を見ているシキの姿があった

「シキ、どうしたんだの?」

 シンクがシキに気づいて声をかける。振り向くシキは、少し元気がなさそう

「ちょっと、疲れて……」

 声も少し小さく返事をして、隣に来たシンクと一緒に空を見る

「そうね、ここ最近お父様の指令が多かったものね」

 月夜を二人並んで見ていると、小声で歌い始めたシンク。歌声に聞き入っていると、風が強く吹き荒れ、シキの周りで木の葉が舞う。ふとなぜか、ツミキの事を思い出す

「お父様は、なぜあの子達を狙うのでしょうか?」

「それは、お父様が決めていること。私達が知る必要のないことよ」

 クスクスと笑い答えるシンクの話を朧気に聞くシキ。ぼーっと空を見ていると、歌い満足したシンクが立ち上がり、シキから離れていく

「それより、夕御飯にしましょうか。シキ、一緒に来てくれる?」

 先に螺旋階段を歩くシンク。少し遅れて後を追うようにシキも螺旋階段を上っていった




「色々ありがとうございました」

 カエデの部屋に泊まった次の日朝、玄関にカエデやミオリ、ルモカとゼフドも集まってツミキの見送りをしていた

「送らなくていいの?」

「うん。もっと一緒にいたら、もっと寂しくなっちゃうし」

 せっかく仲良くなれてきたのに早く帰るのツミキに、カエデも少し寂しそう

「避難場所は確認したかい?」

「はい。大丈夫です」

 ゼフドに返事をした後、お辞儀をして帰っていたツミキ

「今度こそ大丈夫かな?」

 後ろ姿を見つめ不安そうなカエデ。ツミキが見えなくなってすぐ、一足先にミオリが玄関の中へと入ってく

「それよりカエデ、後程トレーニングの相手を頼む」

 一言そう言うと早足で建物の中へと消えていった。急いで追うカエデ。二人の後ろ姿を見つめながらルモカが、ため息ついた

「とはいえ、すぐあの子と会うことになりそうね」

「ああ……そうだな」

 ゼフドがルモカに返事をしながら、何やら難しそうな表情で、建物の中へと入っていった

「何も知らないまま、出会わなければ幸せだったかもしれないな」

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