第6話 静かな部屋と寂しい見送り
「そうか、大分遠くから来たんだな」
「はい。学校が休みなので、思いきって来てみたんですが……」
三人並んで、ツミキを送るために駅の方へと歩いていく。避難勧告も解除されて騒がしい街並みの中、話していくうちに仲良くなって会話が弾んでく
「確かに、ツミキさんの街ではあまり避難勧告は出ていないし、逃げ遅れるのも致し方ないかも」
「それは……ごめんなさい」
さっきまでの出来事を思い出して謝ると、カエデも大きく首を横に振って謝ると、ミオリがふぅ。とため息ついた
「こちらも理由もなく避難勧告を出している。謝られても困るな……」
「あの子達が原因なのですか?」
「それは……」
恐る恐る聞くツミキの質問を、答えようとするカエデを、ちらりと見るミオリ
「カエデ、あまり話してはダメだぞ」
キツめに注意する言葉に、うつ向くカエデ。急にちょっと重くなった雰囲気に、三人とも無言で歩いていく。駅の近くに着くと、ツミキが数歩、先に歩いてクルリと二人の方に向くとお辞儀をする
「ここまでで大丈夫です。ミオリさん、ありがとうございます」
「では、今日の事は他言無用で……」
無事駅に着いてホッとするミオリ。隣では別れを惜しむカエデが落ち込んでいた
「はい。カエデさんもありがとう」
それに気づいているのか、ニコニコと微笑みと話しかけるツミキ
「……さんは要らない」
照れながら話すと、突然ツミキがカエデの手をつかんだ
「カエデちゃん、ありがとう。私も要らないから。そのままで呼んで」
笑顔で話しかけられて、思わず顔を背けるカエデ。それでも表情は、はにかんで嬉しそう
「ツミキ、せっかくの休み、巻き込んでごめん……」
「ううん、また会おうね」
手を大きく振り笑顔で帰ってくツミキを、同じく笑顔で見送るカエデ。姿が見えなくなっても、見つめたまま動かない
。そんなカエデにミオリがふぅ。とため息ついて、声をかける
「カエデ、帰るぞ」
「……はい」
「ただいま……」
どうにか家に着いたツミキ。時間は夜も遅い頃。家の中は真っ暗で、ツミキの言葉と静けさが余計に響いている
「……って言っても誰もいないか」
独り言を呟きながら電気をつける。静かな部屋にツミキ独り。誰もツミキの返事に答える人はいない家。フラフラとベットに倒れこむと、そのまま眠る体制に入ってく
「あの子、大丈夫かな?」
布団の中、ボーッと今日も出会った女の子を思い出しながら、今度はウトウトと眠くなっていく、寝ぼけつつ独り言をまた呟きながら眠ってく
「あの子の名前聞けば良かったな……」
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